始まりの前の少女
きずなの船は、世界間回廊のさらに奥へ進んでいた。
トキが操縦席で地図を見る。
「この先です。」
トワが静かに答える。
「ここから先は、時間がありません。」
カナタが時計を見る。
「また時間がないのか?」
トワは首を横に振った。
「前の世界とは違います。」
「ここには――。」
「時間という概念そのものが存在しません。」
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■ 第−∞−1世界
転移ゲートを抜ける。
しかし――。
何も起こらない。
景色も変わらない。
音もしない。
船の計器も表示されない。
ノノが不安そうに言う。
「本当に別の世界に来たの?」
ゼロスが答える。
「はい。」
「ただし、この世界には『場所』という概念すらありません。」
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■ 白い空間
船の外に出る。
そこは真っ白だった。
上も下もない。
遠くも近くもない。
ただ、どこまでも白い。
悠真が一歩進む。
すると――。
足元に小さな花が咲いた。
ノノが驚く。
「花が生まれた!」
もう一歩。
今度は草原。
さらに一歩。
小さな川。
悠真が気づく。
「この世界は……。」
「僕たちが想像したものが、形になるんだ。」
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■ 少女
そのとき。
白い空間の向こうから、一人の少女が歩いてきた。
年齢はノノたちと同じくらいに見える。
白い服。
銀色の髪。
そして、胸元には小さな星。
少女は悠真たちを見る。
「こんにちは。」
ノノが尋ねる。
「あなたが、ずっとここにいたの?」
少女は頷く。
「うん。」
「私はハジメ。」
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■ 世界より先に生まれた
悠真が驚く。
「ハジメ?」
ハジメは笑う。
「世界が生まれるより前から、ここにいた。」
カナタが尋ねる。
「じゃあ、君は何者なんだ?」
ハジメは少し考える。
「分からない。」
「でも――。」
「世界が生まれるところは、ずっと見ていた。」
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■ 最初の世界
ハジメが手を伸ばす。
白い空間に光が浮かぶ。
小さな光。
それが広がる。
星が生まれる。
宇宙が生まれる。
そして――。
最初の世界が生まれた。
悠真たちは息をのむ。
ゼロスが呟く。
「これが……世界の始まり。」
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■ 原世界より前
カナタが言う。
「でも原世界より前なんだよね?」
ハジメは頷く。
「そう。」
「原世界が生まれる前には、何もなかった。」
「でも、何もない場所から最初の可能性が生まれた。」
悠真が尋ねる。
「その可能性って?」
ハジメは笑う。
「『こうなったらいいな』という願い。」
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■ 願いから生まれた世界
ハジメによると――。
最初の世界は、誰かの願いから生まれた。
「こんな場所があったらいい。」
「こんな人に会いたい。」
「こんな未来になったらいい。」
そうした願いが集まって――。
世界になった。
ノノが言う。
「じゃあ、世界って夢みたいなもの?」
ハジメは頷く。
「うん。」
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■ ハジメの願い
悠真が尋ねる。
「ハジメには願いはないの?」
少女は黙った。
そして小さな声で答える。
「ある。」
「でも――。」
「私が願ったら、世界が一つ増えてしまう。」
カナタが驚く。
「それが嫌なの?」
ハジメは頷く。
「世界が増えるたびに、私は一人になるから。」
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■ 一人ぼっち
ハジメはずっと、この世界に一人だった。
世界が生まれる。
その世界に住む人々が増える。
そして世界は遠くへ離れていく。
ハジメはずっと見送ってきた。
ノノが悲しそうに言う。
「寂しかったんだね。」
ハジメは頷く。
「うん。」
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■ だから世界を止めた
トワが気づく。
「もしかして……。」
ハジメは答える。
「私が時間のない世界を作った。」
「世界が増えても、時間が進まなければ、別れなくて済むと思った。」
悠真が驚く。
「じゃあ、最近の時間異常は――。」
「私の力が原因。」
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■ ハジメの願い
ハジメは悠真を見る。
「私は、世界を止めたいんじゃない。」
「本当は――。」
少女の目に涙が浮かぶ。
「誰かと一緒にいたかった。」
悠真は静かに答える。
「だったら、世界を止めなくてもいい。」
ハジメが顔を上げる。
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■ 新しい願い
ノノがハジメの隣に立つ。
「私たちと一緒に来ればいいよ。」
ハジメが驚く。
「……いいの?」
「もちろん!」
ノノが笑う。
「仲間なら、世界が違っても会えるよ。」
ヒカリも頷く。
「別れたら、また会えばいい。」
ソラが続ける。
「世界が違うことは、離れていることとは違うから。」
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■ ハジメが笑う
ハジメは初めて、心から笑った。
「……そっか。」
「世界がたくさんあるなら――。」
「たくさんの人に会えるんだ。」
悠真が頷く。
「うん。」
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■ 新しい世界
ハジメが胸元の星に触れる。
すると、白い空間に巨大な光が生まれた。
しかし今回は――。
世界は一つだけ生まれなかった。
無数の小さな世界が生まれた。
そして、それぞれの世界を光の道がつないでいく。
トキが驚く。
「世界間回廊そのものを作った……?」
トワも驚く。
「これほどの力を持っていたとは。」
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■ ハジメの役目
ハジメは言った。
「私はこれから、世界を作るだけじゃなく――。」
「世界と世界をつなぐ。」
カナタが笑う。
「それなら、僕たちの旅にもぴったりだ。」
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■ しかし……
突然。
白い空間に黒い亀裂が走った。
ピシッ。
悠真が振り返る。
「何だ?」
ハジメの顔から笑顔が消える。
「……知らない。」
亀裂はどんどん広がる。
そして、その奥から――。
何かがこちらを見ている。
巨大な目。
ノノが後ずさる。
「何あれ……。」
ゼロスが年代記を開く。
しかし――。
ページが真っ黒になる。
「記録できません。」
カナタが叫ぶ。
「原世界より前の存在だからか?」
トワが答える。
「違う。」
「もっと古い。」
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■ 「無」
ハジメが震える声で言った。
「……あれは『無』。」
「世界が生まれる前からある。」
「願いも。」
「時間も。」
「世界も。」
「すべてを消してしまうもの。」
悠真が身構える。
「じゃあ、あれが本当の敵?」
ハジメは頷く。
「世界を作る私と、世界を消す『無』。」
「ずっと昔から、この二つは存在していた。」
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■ 無が動き出す
黒い亀裂から、巨大な手が伸びる。
白い空間が少しずつ消えていく。
ハジメが叫ぶ。
「このままだと、すべての世界が消える!」
悠真は仲間を見る。
ノノ。
カナタ。
ヒカリ。
ソラ。
トキ。
トワ。
そして――。
ハジメ。
悠真は世界間時計を握る。
「なら、今度は僕たちが世界を守る。」
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■ ハジメの決意
ハジメは頷く。
「私も戦う。」
「ずっと一人だったけど――。」
ノノが笑う。
「もう一人じゃないよ。」
ハジメは笑った。
「うん。」
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■ 始まりの戦い
悠真たちの前に無数の光が集まる。
それは――。
これまで旅してきた世界の光。
ミナト。
アオゾラ世界。
第0世界。
第−7世界。
原世界。
そして、まだ見ぬ無数の世界。
すべてが一つの光につながっていく。
悠真が叫ぶ。
「みんなの世界を、みんなで守ろう!」
光が白い空間を満たす。
しかし――。
黒い『無』も巨大化していく。
その中心に、一つの文字が浮かんだ。
『終』
ハジメが呟く。
「……あれが、すべての終わり。」
悠真は前を向いた。
「だったら――。」
「終わりの先に、新しい始まりを作ればいい。」
きずなの船が光の中へ飛び込む。
世界の始まりよりも古い場所で――。
ついに、最大の戦いが始まった。




