時の王
世界間回廊。
きずなの船は、止まり始めた無数の世界を横目に進んでいた。
さっきまで動いていた世界の時計が、次々と停止していく。
カチ……。
カチ……。
そして――。
ピタッ。
トキは世界間時計を見つめる。
「また一つ、止まった……。」
悠真が尋ねる。
「止まった世界では、何が起きるの?」
「時間が止まるだけじゃありません。」
トキは答えた。
「その世界の未来まで、消えてしまいます。」
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■ 巨大な時計
前方に巨大な時計が浮かんでいた。
普通の時計ではない。
惑星ほどの大きさがあり、無数の歯車が回っている。
その中心には、黒い王冠のようなものが浮かんでいた。
カナタが呟く。
「あれが……時の王の城?」
ゼロスが年代記を開く。
「記録がありません。」
「つまり、これまで存在が確認されていなかった存在です。」
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■ 時の城
きずなの船が巨大時計へ近づく。
すると――。
突然、船が止まった。
ノノが慌てる。
「また止まった!」
トキが立ち上がる。
「違う。」
「この船だけじゃない。」
周囲を見る。
光も。
星も。
世界間回廊そのものが――。
止まっている。
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■ 止まった時間
悠真が手を動かそうとする。
動かない。
ノノも動かない。
カナタも――。
全員が止まってしまった。
しかし、トキだけは動いていた。
トキは一人、静かな船内を歩く。
「みんな……。」
返事はない。
そのとき、背後から声がした。
「時間を動かせる者は、時間に選ばれた者だけ。」
トキが振り返る。
そこには――。
黒い衣装をまとった人物が立っていた。
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■ 時の王
人物は長い杖を持っている。
その先には小さな時計。
「あなたが……時の王?」
トキが尋ねる。
人物は頷く。
「そう。」
「私は時を管理する者。」
トキは尋ねる。
「どうして世界の時間を止めるの?」
時の王は答えた。
「時間は、人々を苦しめる。」
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■ 時間の苦しみ
時の王は語る。
「時間が進めば、楽しい時間も終わる。」
「人は成長する。」
「別れも訪れる。」
「失敗も起きる。」
「ならば――。」
時の王は杖を上げる。
「時間など、止めてしまえばいい。」
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■ トキの反論
トキは首を横に振る。
「でも、時間が止まった世界を見た。」
「みんな、最初は喜んでいた。」
「だけど――。」
「新しい朝も来なかった。」
「新しい出会いもなかった。」
「何も始まらなかった。」
時の王は黙る。
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■ 悠真が動く
そのとき――。
カチ。
悠真の指がわずかに動いた。
トキが驚く。
「悠真?」
悠真は必死に声を出す。
「……時間って……。」
「止めるためにあるんじゃない。」
「進むためにある。」
時の王が悠真を見る。
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■ 仲間たちも
続いて――。
ノノの指が動いた。
「私も……動ける……!」
ヒカリも。
ソラも。
カナタも。
一人ずつ時間の停止から抜け出していく。
トキが驚く。
「どうして?」
ゼロスが答える。
「きっと、みんなが時間を受け入れているからです。」
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■ 時の王の怒り
時の王が杖を振る。
ゴォン!
巨大な時計が動き出す。
世界間回廊の時間が急激に加速する。
一秒が一日。
一日が一年。
世界が猛烈な速度で変化していく。
ノノが叫ぶ。
「速すぎるよ!」
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■ 時間を止める力
トキが砂時計を取り出す。
もう空っぽのはずだった。
しかし――。
中に一粒だけ、光る砂が残っていた。
トキが驚く。
「まだ残ってた……。」
悠真が言う。
「それは何?」
トキは答える。
「私が初めて『未来を選びたい』と思ったときの時間。」
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■ 一粒の時間
トキは砂時計を逆さまにする。
一粒の砂が落ちる。
サラ……。
すると、暴走していた時間がゆっくりになる。
時の王が驚く。
「そんな小さな時間で、私の力を止めただと?」
トキは答える。
「時間は長さじゃない。」
「大切なのは――。」
「その時間に何をするか。」
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■ 時の王の過去
時の王の姿が一瞬、変化する。
そこには幼い少年がいた。
少年は誰かを待っている。
ずっと。
ずっと。
しかし、その人は戻ってこない。
カナタが気づく。
「あなたも……。」
時の王は顔を伏せる。
「私は昔、大切な人を失った。」
「だから、時間が憎かった。」
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■ 悠真の言葉
悠真は時の王に近づく。
「その人との時間まで、なくしてしまうの?」
時の王が顔を上げる。
「……何?」
「時間を止めたら、その人との思い出も進まない。」
「悲しい記憶も、楽しい記憶も、そこで止まる。」
悠真は言った。
「思い出は、時間が進んでも消えないよ。」
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■ 時の王の迷い
時の王は黙り込む。
そして――。
杖を下ろした。
「私は……。」
「ずっと怖かった。」
トキが笑う。
「怖くてもいい。」
「それでも、時間は進める。」
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■ 王冠が壊れる
時の王の頭上に浮かんでいた黒い王冠が――。
ひび割れる。
パキッ。
そして光になって消えた。
同時に、止まっていた世界の時計が動き始める。
カチ。
カチ。
カチ。
無数の世界で、時間が戻っていく。
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■ 時の王の新しい役目
時の王は悠真たちを見る。
「私はもう、時間を止めない。」
「これからは――。」
「時間を守る。」
トキが笑う。
「じゃあ、私たちと同じだね。」
時の王も、ほんの少し笑った。
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■ 名前
時の王は王冠を失った。
だからもう「王」ではない。
悠真が尋ねる。
「これから、なんて呼べばいい?」
人物は少し考え――。
「トワ。」
「それが私の本当の名前。」
トキとトワ。
二人の名前が並ぶ。
ノノが笑う。
「似てるね!」
トキも笑った。
「本当だ。」
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■ 新しい仲間
トワは、世界間回廊の地図を開く。
「まだ時間異常が残っている世界があります。」
悠真が聞く。
「案内できる?」
「もちろん。」
カナタが笑う。
「また仲間が増えたね。」
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■ 次の異常
しかし、地図を見たトワの表情が変わる。
「……これは。」
悠真が尋ねる。
「どうしたの?」
トワが指差した場所。
そこには――。
『時間の存在しない領域』
と表示されている。
トキが驚く。
「時間が止まっているんじゃない。」
「最初から、時間そのものが存在しない……。」
ゼロスが年代記を見る。
すると、ページに一行だけ文字が浮かぶ。
『始まりの前に、何かがいる。』
カナタが呟く。
「原世界よりも前……?」
悠真は新しい航路を見る。
その先には、地図にすら存在しない空白。
そして空白の中央に――。
小さな文字。
『第−∞−1世界』
ノノが目を輝かせる。
「今度はマイナスの先だ!」
悠真は頷く。
「行こう。」
きずなの船は、時間さえ存在しない未知の領域へ向けて進み始めた。
その世界で待っているのは――。
世界が生まれる前から存在していた、謎の少女だった。




