原世界
きずなの船と、カナタの黒い船。
二隻の船の間に開いた巨大な光の裂け目。
その向こうにあるのは――。
すべての世界が生まれる前の場所。
原世界。
悠真は裂け目を見つめる。
「カナタ。」
通信機から声が返ってくる。
「ようやくここまで来たね。」
---
■ 原世界へ
カナタの船が先に裂け目へ入っていく。
きずなの船も続く。
すると――。
世界が消えた。
音もない。
光もない。
時間もない。
ただ、どこまでも広がる暗闇。
ノノが不安そうに言う。
「何も見えない……。」
アシタが答える。
「ここには、まだ時間が存在していないんだ。」
---
■ 最初の一粒
暗闇の中央に、小さな光が浮かんだ。
その光はゆっくり大きくなる。
すると――。
一つの星が生まれた。
ノノが目を輝かせる。
「星!」
続いて二つ。
三つ。
数え切れないほどの光が生まれていく。
そして星々の間に、世界が生まれ始める。
---
■ 世界の始まり
ゼロスは銀河年代記を開く。
すると、今まで真っ白だったページに文字が浮かんだ。
『原世界』
その下には――。
『すべての世界の始まり』
ゼロスが呟く。
「ついに、年代記の最初のページを見つけました。」
---
■ カナタの船
前方に黒い船が見える。
カナタが船を止める。
「ここだ。」
悠真が聞く。
「何があるの?」
カナタは答えない。
ただ、前方を指差した。
そこには――。
巨大な球体が浮かんでいた。
---
■ 「原核」
巨大な球体の中には、無数の光が渦巻いている。
カナタが言う。
「あれが原核。」
「すべての世界を生み出す源だ。」
悠真が驚く。
「じゃあ、あれを使えば世界を自由に作れる?」
「そう。」
カナタは頷く。
「だから僕は、世界を一つにしようとした。」
---
■ カナタの目的
悠真が尋ねる。
「どうして世界を一つにしたい?」
カナタはしばらく黙っていた。
そして――。
「僕は、世界が分かれているせいで大切な人を失った。」
ヒカリが反応する。
「……ソラみたいに?」
カナタは驚く。
「君は知っているのか。」
ヒカリは頷く。
「僕も、妹を失ったから。」
---
■ 同じ願い
カナタは悠真を見る。
「だから、世界を一つにすればいいと思った。」
「世界が一つなら――。」
「誰も別れなくて済む。」
悠真は静かに答える。
「気持ちは分かる。」
「でも、世界を一つにしたら、今度は別のものを失う。」
カナタが聞く。
「何を?」
悠真は言った。
「それぞれの世界が持っている、大切なもの。」
---
■ 世界には違いがある
ノノが話す。
「ミナトにはミナトの海がある。」
ソラが続ける。
「アオゾラ世界には、アオゾラ世界の思い出がある。」
ヒカリも言う。
「第−7世界にも、忘れられた人たちの歴史があった。」
「全部同じにしたら、それぞれの思い出まで同じになっちゃう。」
カナタは黙り込む。
---
■ 原核が反応する
そのとき――。
原核が強く輝いた。
ドクン。
まるで心臓のような音。
次の瞬間、原核から大量の光が飛び出した。
世界が次々に生まれていく。
しかし――。
一つだけ、黒い光が混ざっていた。
ゼロスが叫ぶ。
「危険です!」
---
■ 黒い光
黒い光は、原核の周囲を覆っていく。
カナタが驚く。
「そんなはずはない。」
悠真が尋ねる。
「何が起きてる?」
カナタは答える。
「原核には、本来こんなものは存在しない。」
黒い光がさらに広がる。
「世界を生み出す力」と「世界を消す力」がぶつかり始めていた。
---
■ 本当の敵
黒い光の中から声がする。
「やっと二人そろった。」
悠真とカナタが同時に振り向く。
そこに現れたのは――。
一人の人物。
姿は、悠真にもカナタにも似ている。
しかし、その姿は半分が光。
半分が闇。
アシタが震える。
「まさか……。」
---
■ 「始原」
人物は名乗った。
「私は始原。」
「世界が生まれる前から存在している。」
「私は、世界の始まりと終わりを管理する者。」
悠真が聞く。
「だったら、なぜ世界を消そうとする?」
始原は答える。
「世界は増えすぎた。」
---
■ 世界の数
始原が手を上げる。
すると、空間いっぱいに無数の世界が表示される。
何百万。
何千万。
さらにその先。
ノノが驚く。
「こんなに世界があるの……?」
始原は言う。
「世界が増え続ければ、いつか互いの境界が崩れる。」
「だから、整理しなければならない。」
---
■ カナタの計画
カナタが叫ぶ。
「だから僕に世界を一つにさせようとしたのか!」
始原は頷く。
「そう。」
「君が世界を一つにまとめれば、私は簡単に管理できる。」
悠真が気づく。
「カナタを利用していたんだ。」
---
■ カナタの後悔
カナタは拳を握る。
「僕は……。」
「みんなを助けるつもりだった。」
「でも、利用されていた。」
悠真が肩に手を置く。
「今からでも遅くない。」
カナタが悠真を見る。
---
■ 二人の悠真
始原が笑う。
「面白い。」
「同じ顔を持つ二人が、違う答えを選ぶ。」
悠真が言う。
「同じ顔だからって、同じ未来になるわけじゃない。」
カナタも続ける。
「僕はもう、一人で世界を背負わない。」
---
■ 仲間たちの力
ノノが前に出る。
「私たちもいる!」
ヒカリも言う。
「世界を守るのは、一人じゃなくていい。」
ソラが続ける。
「世界は違っても、つながることはできる。」
アオも通信機から声を送る。
「アオゾラ世界も協力する!」
ミナトからも声が届く。
「こちらも準備できています!」
---
■ 全世界からの応答
次々と通信が入る。
第0世界。
第−1世界。
ミナト。
第−7世界。
アオゾラ世界。
そして、これまで旅してきたすべての世界。
「私たちもいる!」
「一緒にやろう!」
「世界を守ろう!」
悠真は笑う。
「聞こえる?」
カナタが頷く。
「……うん。」
---
■ 世界をつなぐ力
悠真が世界間時計を取り出す。
カナタも自分の時計を取り出す。
二つの時計が共鳴する。
カチ。
カチ。
無数の世界をつなぐ光の道が、原核へ集まっていく。
始原が驚く。
「その力は――。」
ゼロスが叫ぶ。
「世界を一つにするのではない!」
「世界をつなぎながら、それぞれの形を守る力です!」
---
■ 原核の変化
原核の表面に、無数の扉が現れる。
一つ一つが、別々の世界につながっている。
始原が叫ぶ。
「そんなことは不可能だ!」
悠真は答える。
「不可能かどうかは、やってみないと分からない。」
ノノが笑う。
「いつもそうだったよ!」
---
■ 始原との決着
始原が黒い光を放つ。
悠真たちは力を合わせる。
しかし――。
始原は強い。
光が次々と押し返される。
カナタが叫ぶ。
「このままじゃ負ける!」
悠真は世界間時計を見る。
そして気づく。
「カナタ。」
「何?」
「始原を倒す必要はない。」
---
■ 本当の答え
悠真は時計を原核へ向ける。
「始原が世界を管理するなら――。」
「管理する必要がない世界を作ればいい。」
カナタが理解する。
「みんなが自分の世界を守りながら、他の世界とも協力できる仕組み……。」
悠真は頷く。
「そう。」
「世界を管理するんじゃない。」
「世界同士が支え合うんだ。」
---
■ 始原の変化
始原の黒い光が弱くなる。
「……支え合う?」
悠真は頷く。
「うん。」
「一人で全部を決めなくてもいい。」
「世界だって同じだよ。」
始原は長い間、黙っていた。
そして――。
初めて笑った。
---
■ 新しい役割
始原の闇が光へ変わる。
「分かった。」
「では私は――。」
「世界を管理する者ではなく。」
原核の中へ戻っていく。
「世界を見守る者になろう。」
黒い光が消える。
原核は、穏やかな光になった。
---
■ 新しい世界の仕組み
その瞬間。
すべての世界に一本ずつ光の道が生まれた。
世界間を自由に行き来できる。
でも、それぞれの世界は独立したまま。
ミナトはミナト。
アオゾラ世界はアオゾラ世界。
第0世界は第0世界。
違いを残したまま、つながっている。
---
■ カナタの決断
カナタは悠真を見る。
「僕も、一緒に旅をしていいかな。」
悠真は笑う。
「もちろん。」
ノノが叫ぶ。
「仲間が増えた!」
カナタも笑う。
「ありがとう。」
---
■ 原世界からの帰還
きずなの船とカナタの船は、ゆっくり原世界を離れる。
ヒカリとソラは並んで空を見る。
「これで、もう世界が離れてしまうことはないね。」
「うん。」
悠真も笑う。
しかし――。
ゼロスが年代記を閉じようとしたとき。
最後のページに、新しい文字が浮かんだ。
『原世界・第一章――完』
そして、その下には――。
『次なる世界:第∞世界』
悠真が目を丸くする。
「第∞世界?」
カナタが笑う。
「どうやら――。」
「まだ旅は終わらないみたいだ。」
きずなの船が、新しい航路へ進んでいく。
その先には――。
数字では表せないほど遠い世界。
第∞世界。
そこには、今まで見たことのない文明と、巨大な宇宙都市が待っていた。
そして宇宙都市の中央には――。
巨大な看板。
『姉妹レンタル・∞支部』
ノノが叫ぶ。
「支店があるーーーっ!」
悠真たちは顔を見合わせる。
新しい世界で、新しい依頼が始まろうとしていた。




