名前のない世界
つづきの世界・姉妹レンタル本部。
受付に置かれた一枚の依頼書。
『まだ名前のない世界を探してください。』
依頼人は、小さな男の子。
「僕の住んでいた世界なんです。」
悠真は依頼書をもう一度見る。
「世界の名前がないって、どういうこと?」
男の子は答えた。
「みんなが名前を忘れてしまったんです。」
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■ 男の子の名前
ノノが尋ねる。
「君の名前は?」
男の子は困った顔をする。
「……僕も分からない。」
するとヒカリが笑った。
「じゃあ、まず名前を探そう。」
男の子は頷く。
「ありがとう。」
ソラが言う。
「名前がないなら、仮の名前をつけてもいいんじゃない?」
みんなで考える。
男の子は少し考えて――。
「じゃあ……『アオ』がいい。」
「空の色が好きだから。」
ノノが笑う。
「よろしくね、アオ!」
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■ 名前のない地図
アオが持っていた古い地図を広げる。
そこには、いくつもの世界が描かれている。
第0世界。
第−1世界。
ミナト。
第−7世界。
つづきの世界。
しかし――。
一ヶ所だけ、白く塗りつぶされている。
アオが指差す。
「ここ。」
「僕の世界は、この先にあります。」
ゼロスが地図を見る。
「この場所……。」
「世界と世界の境界が集中しています。」
悠真が尋ねる。
「つまり?」
「普通の方法では、たどり着けません。」
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■ 新しい航路
悠真はきずなの船を確認する。
これまで何度も世界を越えてきた船だ。
しかし今回は――。
地図に航路がない。
ノノが船首を見る。
「道がないなら、作ればいいよ!」
アシタが笑う。
「ノノらしいね。」
悠真も頷く。
「じゃあ、行こう。」
きずなの船が出発する。
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■ 世界と世界の隙間
船は世界の境界を越える。
すると――。
前方に無数の光が現れた。
右にも。
左にも。
上にも。
下にも。
まるで星空のようだ。
しかし、それらは星ではない。
すべて別々の世界への入口だった。
アオが驚く。
「こんなにたくさん……。」
ゼロスが言う。
「ここは『世界間回廊』です。」
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■ 一つだけ違う扉
無数の扉の中に――。
一つだけ、真っ白な扉があった。
アオが指差す。
「きっと、あれです!」
悠真が船を進める。
すると扉が近づいてくる。
しかし――。
扉には何も書かれていない。
番号もない。
名前もない。
ただ、中央に小さな穴がある。
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■ 鍵が必要
ノノが調べる。
「鍵穴かな?」
ヒカリが言う。
「でも鍵がない。」
そのとき――。
アオがポケットから何かを取り出した。
小さな銀色の鍵。
「これ……。」
「ずっと持ってた。」
悠真が驚く。
「どうして今まで使わなかったの?」
アオは首をかしげる。
「使う場所を忘れてた。」
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■ 白い扉
鍵を差し込む。
カチャ。
扉が開く。
その向こうから――。
暖かい風が吹いてきた。
そして、懐かしい音。
鳥の鳴き声。
川のせせらぎ。
木々が揺れる音。
アオの目が大きくなる。
「この音……知ってる。」
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■ 帰ってきた
船が扉を抜ける。
そこには――。
青い空。
緑の草原。
大きな森。
そして遠くに、小さな町が見えた。
アオは甲板から叫ぶ。
「帰ってきた!」
けれど――。
町には誰もいない。
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■ 誰もいない町
みんなで町に入る。
家はある。
店もある。
学校もある。
広場もある。
でも、人だけがいない。
ノノが不安そうに言う。
「みんな、どこに行ったの?」
アオは答えられない。
「分からない……。」
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■ 消えた住民
広場の中央に、大きな時計があった。
その時計の針は止まっている。
文字盤には――。
『午前0時』
と表示されていた。
悠真が時計に触れる。
すると町全体に声が響いた。
「名前を思い出してください。」
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■ 町の記録
時計の下から、一冊の本が現れる。
表紙には――。
『この町の住民名簿』
と書かれている。
悠真がページをめくる。
最初のページ。
二人。
次のページ。
十人。
さらに次。
百人。
しかし、すべての名前が――。
消えている。
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■ アオの家
アオが一軒の家の前で立ち止まる。
「ここ……。」
扉を開ける。
中には写真が一枚だけ残っていた。
写真には――。
アオ。
そして、二人の大人。
アオが震える。
「お父さん……。」
「お母さん……。」
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■ 消えた記憶
アオは写真を見つめる。
しかし――。
両親の名前が思い出せない。
「顔は覚えてる。」
「一緒に暮らしてたことも覚えてる。」
「でも、名前だけが……。」
ヒカリが静かに言う。
「この世界では、名前から消えていくんだ。」
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■ 町の秘密
その夜。
町の時計が突然動き始める。
カチ……。
カチ……。
町の建物から、白い光が浮かび上がる。
そして空へ集まっていく。
アシタが叫ぶ。
「記憶が吸い上げられてる!」
悠真が時計を見る。
「誰がやってるんだ?」
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■ 時計塔の地下
時計の針を追って、地下へ向かう。
そこには巨大な機械があった。
中央には――。
無数の名前が保存されている。
そして機械の前に、一人の女性が立っていた。
白い服。
長い髪。
静かな表情。
女性は悠真たちを見る。
「どうして戻ってきたの?」
アオが叫ぶ。
「僕の家族を返して!」
女性は首を横に振る。
「返せません。」
「もう、みんなは『名前のない人』になったから。」
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■ 女性の正体
悠真が尋ねる。
「君は誰?」
女性は答えた。
「私は――。」
少し間を置いて。
「この世界の最後の管理者。」
ゼロスが驚く。
「管理者……?」
女性は頷く。
「この世界は、存在を維持するために――。」
「住民の名前を少しずつ保存装置へ送っているの。」
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■ 世界を守る代償
女性は説明する。
「この世界には力がありません。」
「世界を維持するには、記憶が必要だった。」
「だから、人々の名前を使った。」
アオが叫ぶ。
「そんなの間違ってる!」
女性は静かに答える。
「分かっています。」
「でも、他に方法がなかった。」
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■ 悠真の答え
悠真は機械を見る。
「だったら、別の方法を探そう。」
女性が驚く。
「そんな方法……。」
「あるよ。」
悠真は仲間を見る。
世界をつなぐ力。
思い出を守る力。
そして――。
一緒に未来を作る力。
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■ 世界をつなぐ
悠真は時計に手を置く。
「この世界を、つづきの世界とつなぐ。」
ゼロスが理解する。
「他の世界からエネルギーを分けてもらう……。」
「それなら、この世界だけで記憶を消費する必要がなくなる!」
女性は目を見開く。
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■ つながった世界
ノノが笑う。
「困ったときは、みんなで助ければいいんだよ!」
ヒカリも頷く。
「一人で守る必要なんてない。」
ソラがアオの肩に手を置く。
「家族の名前も、みんなで覚えていればいい。」
アオは涙を浮かべながら頷いた。
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■ 両親の名前
アオは写真を見る。
まだ思い出せない。
けれど――。
写真の裏側に文字があった。
『アオへ。』
その下には――。
両親の名前。
アオは声に出して読む。
「……思い出した。」
「お父さん。」
「お母さん。」
その瞬間、町中の時計が一斉に動き出した。
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■ 名前が戻る
消えていた名前が、一つずつ戻っていく。
町の住民名簿。
家の表札。
学校の名簿。
写真。
記憶。
そして――。
町に人々の姿が戻ってきた。
「ここは……?」
「私たちは……?」
アオは叫ぶ。
「みんな、おかえり!」
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■ 世界の名前
最後に、町の中央にある巨大な石碑が光った。
そこに初めて――。
世界の名前が浮かび上がる。
『アオゾラ世界』
アオが笑う。
「僕の好きな空の名前だ。」
悠真が頷く。
「ぴったりだね。」
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■ 新しい世界とのつながり
アオゾラ世界は、つづきの世界と正式につながった。
世界間回廊にも、新しい扉が現れる。
そこには――。
『アオゾラ世界』
という名前が刻まれている。
もう、名前のない世界ではない。
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■ しかし最後に
管理者の女性が悠真を呼び止める。
「あなたたちに、伝えなければならないことがあります。」
悠真が振り返る。
「何?」
女性は、古い記録を差し出した。
そこには――。
『この世界が名前を失った原因』
と書かれている。
そして、その下には――。
『誰かが世界の名前を盗んだ』
という一文。
ノノが驚く。
「盗んだ?」
女性は頷く。
「そして、その人物は――。」
女性が次のページを開く。
そこに描かれていた人物を見て、悠真たちは凍りついた。
その顔は――。
悠真と瓜二つだった。




