第-∞世界への航海
忘却の海を抜けた、きずなの船。
甲板にはヒカリとソラが並んで立っていた。
二人が揃っている。
それだけで、船の空気はいつもより明るかった。
ノノが望遠鏡を覗く。
「ねえ、あそこ!」
遥か前方に――。
何もない宇宙の中で、一つだけ巨大な光が浮かんでいる。
しかし、その光は星ではなかった。
巨大な扉だった。
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■ 最初の扉
ゼロスが年代記を開く。
ページは真っ白。
「第−∞世界について、記録はありません。」
アシタが尋ねる。
「じゃあ、何も分からない?」
「一つだけ分かります。」
ゼロスは扉を見る。
「この扉は、これまで見てきたどの世界への扉とも違う。」
悠真が聞く。
「どう違うの?」
ゼロスは答えた。
「この扉には、世界を表す番号がない。」
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■ 扉の言葉
きずなの船が扉に近づく。
すると巨大な扉に文字が浮かんだ。
『ここから先、世界は存在しません。』
ノノが驚く。
「えっ?」
その下に、さらに文字が現れる。
『ここから先、世界が生まれる前です。』
悠真は静かに扉を見る。
「じゃあ、ここが本当の始まりなんだ。」
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■ 船が消える
扉をくぐった瞬間――。
きずなの船が消えた。
「えっ!?」
ノノが驚く。
甲板も。
帆も。
船室も。
何もかも消えてしまった。
気づけば悠真たちは、何もない空間に立っていた。
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■ 上も下もない
そこには空がない。
地面もない。
星もない。
時間さえ流れているのか分からない。
ソラがヒカリの手を握る。
「ここが……第−∞世界?」
ゼロスが答える。
「正確には――。」
「まだ『世界』と呼べる状態ではありません。」
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■ 最初の音
突然。
遠くから――。
コトン。
小さな音がした。
全員が振り向く。
また、
コトン。
何かが落ちる音。
そして三度目。
コトン。
音がした場所に、小さな光が生まれた。
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■ 一つの光
光はゆっくり形を変える。
丸い光。
小さな光。
そして――。
一人の少女の姿になった。
少女は周囲を見回す。
「……ここ、どこ?」
悠真が近づく。
「僕たちも分からない。」
少女は首をかしげる。
「あなたたちは誰?」
ノノが答える。
「私たちは旅人!」
少女は笑う。
「旅人?」
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■ 少女の名前
少女には名前がなかった。
ヒカリが尋ねる。
「名前は?」
少女は首を横に振る。
「ない。」
ソラが言う。
「じゃあ、好きな名前をつければいいよ。」
少女は少し考える。
そして――。
「ユメ。」
「夢がいい。」
悠真が微笑む。
「いい名前だね。」
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■ ユメの力
ユメが手を伸ばす。
すると――。
何もない空間に、一つの小さな花が現れた。
ノノが驚く。
「花!」
ユメは笑う。
「こういうもの、見たことないけど。」
「なんとなく、あったらいいなって思ったの。」
悠真は気づいた。
「『こうなったらいいな』って思うと、形になるんだ。」
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■ 世界の材料
ユメが空を見上げる。
「じゃあ、空も作れる?」
「やってみよう。」
ユメが目を閉じる。
すると――。
青い空が生まれた。
雲が生まれた。
風が生まれた。
そして、遠くに大地が現れた。
ゼロスが驚く。
「これは……。」
「世界の材料そのものです。」
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■ 最初の世界
悠真たちはユメと一緒に、最初の世界を作っていく。
海。
山。
森。
川。
星。
月。
太陽。
一つずつ、世界が形になっていく。
そして最後に――。
ユメが人々を想像した。
たくさんの人が生まれる。
世界に声が響く。
「こんにちは!」
「ここはどこ?」
「きれいな世界だね!」
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■ しかし、一つ足りない
ユメが困った顔をする。
「何か足りない。」
悠真が尋ねる。
「何が?」
ユメは答えられない。
「分からない。」
そのとき――。
ヒカリが言った。
「たぶん、『つながり』だよ。」
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■ 世界をつなぐもの
ヒカリは、これまでの旅を話した。
家族。
友達。
仲間。
違う世界で出会った人たち。
別れた人たち。
再会した人たち。
ソラも話す。
「誰かを思い出すこと。」
ノノが続ける。
「名前を呼ぶこと!」
悠真が最後に言った。
「一緒に笑うこと。」
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■ 最初の笑顔
ユメは三人の言葉を聞いて――。
笑った。
その瞬間。
世界中に光が広がった。
人々が笑う。
花が咲く。
海が輝く。
星が生まれる。
そして――。
一つの巨大な時計が空に現れた。
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■ あの時計
悠真は驚く。
「この時計……。」
見覚えがある。
第0世界。
第−1世界。
忘却の海。
何度も登場した、あの時計と同じ形だった。
ゼロスが震える。
「分かりました。」
「この時計が、すべての世界の時間を動かしていたんです。」
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■ 最初の名前
時計の文字盤に、文字が浮かぶ。
『第1世界』
そして次々に――。
『第2世界』
『第3世界』
無数の世界の名前が現れていく。
その中には――。
『第0世界』
『第−1世界』
『第−2世界』
そして――。
『第−7世界』
これまで旅してきた世界が、次々と生まれていく。
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■ 本当の始まり
悠真は理解した。
「僕たちが今まで旅してきた世界は――。」
「ここから生まれたんだ。」
ユメが頷く。
「うん。」
しかし、時計にはもう一つだけ空白があった。
数字の代わりに――。
『?』
と表示されている。
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■ 最後の世界
アシタが時計を見る。
「これは……未来?」
ゼロスが首を横に振る。
「違います。」
「この時計が作る世界の中で――。」
「唯一、まだ生まれていない世界です。」
悠真が尋ねる。
「どんな世界?」
ゼロスは答えた。
「それは、今ここにいる誰かが選んだ未来によって決まります。」
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■ ユメの願い
ユメが悠真たちを見る。
「じゃあ、みんなで決めよう。」
「どんな世界がいい?」
ノノが笑う。
「みんなが遊べる世界!」
ソラが言う。
「家族が離れ離れにならない世界。」
ヒカリが続ける。
「忘れられる人がいない世界。」
アシタは考える。
「未来を自分で選べる世界。」
そして悠真は――。
「違う世界の人たちが、いつでも会える世界。」
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■ 新しい世界の誕生
五つの願いが重なった。
時計が動く。
カチ。
そして――。
最後の空白に文字が浮かぶ。
『つながりの世界』
無数の世界を結ぶ、新しい世界が誕生した。
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■ しかし……
その瞬間。
ユメの表情が変わった。
「……あれ?」
悠真が振り向く。
「どうしたの?」
ユメは空を指差す。
新しく生まれた世界のさらに上。
そこに――。
もう一つの扉が浮かんでいた。
その扉には数字ではなく、一つの文字。
『終』
ゼロスが息をのむ。
「世界の始まりの先に……。」
アシタが続ける。
「『終わり』がある。」
扉の向こうから、静かな声が響く。
「始まりを見つけたね。」
「では――。」
扉がゆっくり開く。
「物語が終わる場所へ、来なさい。」
悠真は仲間たちを見る。
そして、いつものように笑った。
「……まだ終わらせるつもりはないよ。」
きずなの船が、再び姿を現す。
新しい航路――。
『終の世界』
へ向かって、船は進み始めた。




