↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
姉妹レンタル  作者: なんなん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
156/417

一番大切な記憶

忘却の海の底。


きずなの船は、巨大な海底都市の門の前で止まった。


門番は、静かにヒカリを見つめている。


「ここから先へ進むには――。」


「自分が忘れた『一番大切な記憶』を思い出せ。」


ヒカリは目を閉じた。


「僕が忘れた……一番大切な記憶?」


---


■ 何も思い出せない


ヒカリは必死に考える。


ソラと遊んだこと。


二人で見た星空。


家で食べた夕食。


一緒に笑ったこと。


けれど、門番は首を横に振る。


「それではない。」


「もっと前だ。」


ヒカリは困った顔になる。


「もっと前……?」


---


■ 最初の日


突然、ヒカリの前に光が現れた。


そこに映ったのは――。


まだ幼いヒカリ。


そして、赤ちゃんのソラ。


二人が初めて出会った日の記憶だった。


幼いヒカリは、赤ちゃんのソラを見ている。


母親が笑って言う。


「今日から、お兄ちゃんだよ。」


幼いヒカリは少し戸惑いながら、ソラの手を握った。


そして――。


「僕が守る。」


そう言った。


---


■ ヒカリが忘れていた約束


ヒカリが目を見開く。


「……そうだ。」


「僕、ソラに約束したんだ。」


悠真が尋ねる。


「何て?」


ヒカリは胸に手を当てる。


「ずっと一緒にいるって。」


「どんな世界になっても。」


「どんな場所に行っても。」


「絶対に忘れないって。」


---


■ 門が開く


その瞬間。


海底都市全体が光に包まれた。


巨大な門がゆっくり開く。


門番が微笑む。


「思い出したな。」


「それが、お前の一番大切な記憶だ。」


ヒカリは頷く。


「うん。」


「ソラとの約束。」


---


■ 海底都市


門の向こうには、巨大な街が広がっていた。


しかし、人の姿はない。


建物も道路もある。


街灯もついている。


けれど――。


誰もいない。


ノノが小声で言う。


「ここにも誰か住んでたのかな。」


ゼロスが答える。


「おそらく。」


「ここは、忘れられた世界の記憶が保存されている場所です。」


---


■ 記憶の図書館


都市の中央には、大きな建物があった。


看板には――。


『記憶図書館』


と書かれている。


中に入ると、壁一面に本が並んでいる。


一冊一冊が、誰かの人生。


誰かの思い出。


誰かの大切な時間。


ヒカリが一冊の本を見つける。


表紙には――。


『ソラ』


---


■ ソラの本


ヒカリが本を開く。


ページには、ソラの記憶が映し出される。


ソラが初めて歩いた日。


初めて笑った日。


ヒカリと遊んだ日。


そして――。


世界が消え始めた日。


ヒカリはページをめくる手を止めた。


「ここから……ソラがいなくなったんだ。」


---


■ 最後のページ


最後のページには、ソラが一人で立っている。


周囲の景色が少しずつ消えている。


ソラは泣いていない。


ただ、誰かを待っている。


そしてページの端に、短い言葉が残されていた。


『お兄ちゃんが来るまで待つ。』


ヒカリの目が潤む。


「ソラ……。」


---


■ 地下への階段


突然、図書館の床が開いた。


地下へ続く階段が現れる。


悠真が言う。


「ソラは、この下だ。」


ヒカリは頷く。


「行こう。」


仲間たちも続く。


階段を下りるほど、周囲の音がなくなっていく。


やがて――。


大きな扉にたどり着いた。


---


■ 忘却者の城


扉の向こうには巨大な空間。


中央に、一人の少女が立っている。


長い髪。


白い服。


そして――。


ヒカリと同じ瞳。


ヒカリは息をのむ。


「……ソラ?」


少女が振り向く。


「お兄ちゃん。」


ヒカリは走り出す。


「ソラ!」


二人は再会した。


---


■ しかし……


ソラは嬉しそうに笑ったあと――。


静かに言った。


「お兄ちゃん。」


「私、ここから出られないの。」


ヒカリが驚く。


「どうして?」


ソラは自分の後ろを指差す。


そこには巨大な黒い時計があった。


時計の針は――。


『忘却』


を指している。


---


■ ソラが守っていたもの


ソラは言った。


「この時計が動いたら、忘却の海にある全部の記憶が消える。」


「だから、私がここに残って止めてたの。」


悠真が驚く。


「ずっと一人で?」


ソラは頷く。


「うん。」


「でも、もう疲れちゃった。」


ヒカリがソラを見る。


「じゃあ、今度は僕たちが一緒に止める。」


---


■ 忘却者、再び


その瞬間。


黒い時計の奥から声が響いた。


「そう簡単にはいかない。」


巨大な影が現れる。


前話で現れた――。


忘却者。


忘却者は言う。


「記憶を守るなら、代わりに何かを忘れなければならない。」


悠真が尋ねる。


「何を?」


忘却者は答える。


「この旅で得た、一番大切なものを。」


---


■ 迫られる選択


時計が動き始める。


カチ……。


カチ……。


ノノが叫ぶ。


「そんなの選べない!」


リナも頷く。


「誰か一人の思い出を犠牲にするなんてできない。」


ヒカリが時計を見る。


そして――。


「だったら。」


「僕たちは、誰も忘れない。」


---


■ みんなの声


悠真が仲間たちを見る。


「僕たちが一人ずつ、思い出を話そう。」


ノノが笑う。


「私は、みんなで初めて冒険した日!」


リナは言う。


「私は、世界を越えて友達が増えたこと。」


アシタは言う。


「僕は、未来をもう一度信じられたこと。」


ハジメも続ける。


「私は、初めて『ここにいていい』と思えたこと。」


イチも笑う。


「僕は、初めて世界の外へ出たこと。」


---


■ ヒカリの記憶


最後にヒカリが言う。


「僕は――。」


ソラを見る。


「ソラと初めて会った日。」


「そして、今日。」


「もう一度会えたこと。」


ソラが笑う。


「私も。」


---


■ 時計が止まる


仲間たちの思い出が光になっていく。


一つ。


また一つ。


そして無数の光が、黒い時計を包み込む。


カチ……。


時計が止まった。


忘却者が驚く。


「そんな……。」


悠真は言った。


「大切な思い出は、一人で守るものじゃない。」


「みんなで覚えていれば――。」


「誰にも消せない。」


---


■ 忘却者の正体


黒い影が少しずつ崩れていく。


その中から――。


小さな光が現れた。


それは、寂しそうな少年の姿だった。


「僕も……。」


「誰かに覚えていてほしかった。」


ヒカリが近づく。


「じゃあ、名前を教えて。」


少年は首を振る。


「名前がない。」


ノノが笑う。


「じゃあ、一緒に考えよう!」


少年は驚いた。


---


■ 新しい名前


少年はしばらく考えた。


そして――。


「……カコ。」


「過去を忘れないように。」


悠真は頷く。


「いい名前だね。」


カコは初めて笑った。


その瞬間――。


忘却の海に、朝日のような光が差し込んだ。


---


■ 海が変わる


真っ白だった海が、少しずつ青くなっていく。


忘れられていた世界の記憶が、元の場所へ戻っていく。


海底都市にも光が戻る。


そしてソラの体にも、温かな光が宿った。


ヒカリが驚く。


「ソラ?」


ソラは笑った。


「もう、ここにいなくても大丈夫みたい。」


---


■ 帰ろう


ヒカリは手を差し出す。


「帰ろう、ソラ。」


ソラはその手を握る。


「うん。」


二人で歩き出す。


きずなの船へ戻る途中――。


海底都市のあちこちから、たくさんの声が聞こえてきた。


「ありがとう。」


「忘れないでくれて、ありがとう。」


悠真たちは振り返る。


誰もいないはずの街に、たくさんの光が浮かんでいた。


---


そして――


きずなの船が海面へ向かう。


ソラとヒカリは並んで甲板に立つ。


ノノが笑う。


「兄妹がそろったね!」


ソラも笑う。


「うん。」


悠真は前方を見る。


忘却の海の向こうに――。


新しい航路が浮かび上がっている。


しかし、その航路の名前を見た瞬間、ゼロスの表情が変わった。


そこに書かれていたのは――。


『第−∞世界』


アシタが呟く。


「……ついに、一番古い世界へつながった。」


悠真は船の舵を握る。


「行こう。」


「この旅の、本当の始まりを見に。」


きずなの船は――。


まだ誰も足を踏み入れたことのない、最初の闇へ向かって進み始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。