止まった街の時計
第0世界。
きずなの船が静かに街へ降りた。
目の前には、大きな時計塔。
しかし、街中の時計がすべて――午前0時で止まっている。
タクミが不思議そうに周囲を見る。
「ここ、本当に誰もいないの?」
悠真は頷く。
「人の気配がないね。」
ノノが時計塔を見上げる。
「でも、さっき誰かの声がしたよ。」
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時計塔からの声
すると、時計塔の大時計が突然動いた。
カチ……。
針が一分だけ進む。
午前0時1分。
街の明かりが一つ点いた。
そして、遠くの家から――。
「ただいま。」
誰かの声が聞こえた。
タクミが驚く。
「人がいる!」
悠真たちは声のした家へ向かった。
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透明な住人
家の中には誰もいなかった。
けれど、テーブルの上には温かい飲み物。
椅子も一脚だけ、ゆっくり動いている。
ノノが目を丸くする。
「見えない人がいるの?」
ゼロスが年代記を開く。
「違う。」
「この世界の住人は――。」
「時間の中に閉じ込められている。」
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第0世界の秘密
店長の女性が説明する。
「第0世界では、昔、大きな時計が作られました。」
「その時計は、世界中の時間を管理していました。」
「ところがある日――。」
時計が壊れた。
その瞬間、世界中の時間が止まった。
人々は消えたわけではない。
時間の一部分に閉じ込められたのだ。
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タクミの笑顔
店長はタクミを見る。
「この世界を動かすには、『最初の笑顔』が必要でした。」
タクミが驚く。
「僕の?」
「はい。」
「あなたが第1世界で笑ったことで、時計が一分だけ動いたのです。」
タクミは時計を見る。
「じゃあ、もっと笑えば――。」
「世界全体が動くかもしれません。」
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しかし簡単ではない
悠真が尋ねる。
「じゃあ、タクミがずっと笑えばいいの?」
店長は首を振る。
「それでは意味がありません。」
「誰かに笑わせてもらった笑顔ではなく――。」
「自分で選んだ笑顔でなければならないのです。」
タクミは考え込んだ。
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時計塔へ
一行は時計塔へ向かう。
塔の内部には、巨大な歯車が並んでいた。
その中心に――。
小さな空洞がある。
そこへタクミが近づくと、空洞が光り始めた。
「選んでください。」
声が響く。
「過去へ戻るか。」
「未来へ進むか。」
「それとも――。」
「今を選ぶか。」
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タクミの答え
タクミは少し考えた。
過去に戻れば、寂しかった時間をやり直せる。
未来へ進めば、もっと楽しい時間が待っているかもしれない。
でも――。
タクミは笑った。
「僕は――。」
「今がいい。」
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時計が動く
その瞬間。
巨大な歯車が動き始めた。
ガチャン!
ゴゴゴゴ……。
時計の針が進む。
午前0時1分。
午前0時2分。
午前0時3分。
そして――。
街中に光が戻っていく。
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帰ってくる人々
道路に人が現れる。
公園に子どもたちが現れる。
店が開く。
電車が走り出す。
街が少しずつ動き始める。
ノノが嬉しそうに叫ぶ。
「戻ってきた!」
タクミも笑う。
「よかった……。」
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第0世界の朝
そして――。
長い長い夜が終わった。
東の空から太陽が昇る。
第0世界に、初めての朝が訪れた。
人々は時計塔を見上げる。
「朝だ!」
「時間が動いてる!」
街中に歓声が広がった。
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ありがとう
タクミのところへ、一人の小さな女の子が走ってくる。
「お兄ちゃん、ありがとう!」
タクミは驚く。
「僕?」
「うん!」
女の子は笑う。
タクミも笑い返す。
すると――。
時計塔の鐘が鳴った。
ゴーン……。
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第0世界の新しい名前
店長が悠真たちに尋ねる。
「この世界にも、新しい名前をつけませんか?」
悠真はタクミを見る。
タクミは少し考えて――。
「『はじまり』がいい。」
ハジメが笑う。
「私と同じ感じだね。」
タクミも笑う。
「うん。」
こうして第0世界は――。
『はじまりの街』
と呼ばれるようになった。
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姉妹レンタル第0世界支部
街の中心には、新しい姉妹レンタルの支店ができた。
看板には――。
『姉妹レンタル・第0世界支部』
ノノが受付に座る。
「これでまた一つ、支店が増えたね!」
リナが笑う。
「ずいぶん大きなチェーンになったね。」
悠真も笑った。
「最初は一軒だけだったのに。」
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その夜
すべてが終わったと思った頃。
時計塔の地下から――。
カチ……。
誰も触れていない時計が動いた。
しかし、他の時計とは逆方向。
針が――。
午前0時へ戻っていく。
そして地下室の壁に文字が浮かんだ。
『第−1世界、再接続開始。』
ゼロスが青ざめる。
「……第−1世界?」
悠真が振り返る。
「まだ続きがあるの?」
ゼロスは静かに頷いた。
「第0世界より前。」
「すべての『始まり』より前に存在した世界だ。」
その瞬間、地下深くから――。
誰かの声が聞こえた。
「今度こそ、私の番だ。」
時計が逆回転を始める。




