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忘却者

世界橋がまばゆく輝いた。


ハジメ。


トリア。


第零世界。


始原の領域。


そして無限世界。


それぞれの世界が、一本の光でつながっていく。


悠真はその光景を見ながら言った。


「これだけつながっていれば、簡単には消されないよ。」


しかし、ミカゲは静かに答えた。


『油断はできません。』



---


黒い霧


突然、世界橋の向こうから黒い霧が流れ込んできた。


モヤ……。


霧が触れた場所から、文字が消えていく。


建物の名前。


道路の名前。


人々の記録。


そして――。


「ルカ!」


ソラが叫ぶ。


ルカの名前が、空中から消えかけている。


「キュ……?」


ソラは慌ててルカを抱きしめた。


「ルカはルカだよ!」


すると、ルカの名前が元に戻った。


ミナが驚く。


「名前を覚えている人がいる限り、記憶が維持されるようです。」



---


忘れないこと


悠真は気づいた。


「じゃあ、忘れなければいい。」


あかりが頷く。


「みんなで覚えていれば、世界は消えない。」


カナタは銀河年代記を開く。


「なら、全世界の記憶を一つにつなぎます。」



---


世界記憶ネットワーク


各世界から記録が集められた。


ハジメの海。


トリアの三つの太陽。


第零世界の色。


ソトの人々。


始原の民の歴史。


無限世界のミライ。


そして――。


姉妹レンタルで出会った、数え切れない人々の思い出。


それらが一つの巨大な光になっていく。



---


忘却者、現る


その時。


黒い霧の中央から、一人の人物が現れた。


黒い服。


白い仮面。


手には真っ黒な本。


その人物は静かに言った。


「無駄です。」


悠真が尋ねる。


「君が忘却者?」


「そう呼ばれています。」


「どうして世界を消すの?」


忘却者は答えた。


「世界は増えすぎました。」


「争いも、悲しみも、失敗も増えた。」


「ならば、すべて忘れてしまえばいい。」



---


「忘れることは悪いこと?」


忘却者は続ける。


「忘れれば苦しみも消える。」


「失敗も消える。」


「悲しい記憶も消える。」


「それなら、世界は平和になります。」


悠真は首を振った。


「でも、それじゃあ――。」


「楽しかったことも消える。」


「出会った人のことも消える。」


「頑張ったことも消える。」


「全部なくなる。」



---


ミライの答え


ミライが前へ出た。


「私は、まだ生まれたばかり。」


「だから、たくさん失敗すると思う。」


「でも――。」


ミライは笑った。


「失敗したら、次は違う方法を選べばいい。」


忘却者は黙った。



---


姉妹たちの言葉


アカネが叫ぶ。


「私はスイといっぱいケンカした!」


スイも続ける。


「でも、そのおかげでお互いのことが分かった。」


ソラも言う。


「ルカと初めて会った日のこと、忘れたくない!」


セラは三つの太陽を見上げる。


「違うものが一緒にあるから、トリアなんです。」


次々と声が響く。


「忘れたくない!」



---


黒い本


忘却者の持っていた黒い本が震え始める。


ブルブル……。


ページに書かれていた文字が消えていく。


忘却者が驚く。


「なぜ……?」


悠真が答える。


「君が消そうとしているものを――。」


「みんなが覚えているからだよ。」



---


仮面の下


黒い仮面にひびが入る。


ピシッ。


そして、仮面が落ちた。


そこにいたのは――。


まだ幼い少年だった。


あかりが驚く。


「あなた……。」


少年は俯く。


「僕も……忘れられたくなかった。」


「昔、僕の世界は消えた。」


「誰も僕のことを覚えていなかった。」


「だから、全部の世界を消せば――。」


「誰も『忘れられる』ことがなくなると思った。」



---


忘れられたくない


悠真は少年の前へ歩いていく。


「じゃあ、君の名前は?」


少年は答えられない。


「……分からない。」


悠真は笑った。


「じゃあ、今ここで決めよう。」


少年が顔を上げる。


ミライが言った。


「あなたが自分で決めていいよ。」


少年は少し考えた。


「……レン。」


「僕の名前は、レン。」



---


最初の記憶


その瞬間。


レンの足元に、小さな光が生まれた。


「これ……。」


ミナが分析する。


「新しい記憶です。」


レンが驚く。


「僕にも……記憶が作れる?」


悠真が頷く。


「もちろん。」


「今日のことを覚えておけばいい。」


レンは初めて笑った。



---


忘却者の終わり


黒い霧が消えていく。


世界橋も元の輝きを取り戻す。


そして、黒い本は白い本へと変わった。


表紙には――。


『世界記憶録』


という文字が浮かんだ。


カナタがそれを受け取る。


「これなら、世界中の記憶を保存できます。」


レンも仲間に加わった。



---


新しい受付係


数日後。


無限世界の姉妹レンタル受付所。


そこには、新しい受付係がいた。


レンである。


レンは少し緊張しながら、お客さんを迎える。


「ようこそ。」


「今日は、どんな依頼ですか?」


最初のお客さんは、小さな二人組だった。


「姉妹になりたいんです。」


レンは笑った。


「では、一緒に過ごしてみましょう。」



---


世界は続く


悠真たちはその様子を遠くから見ていた。


あかりが言う。


「レン、すっかり受付係だね。」


悠真が笑う。


「うん。」


ミライも嬉しそうに笑う。


ルカは空を飛ぶ。


そして世界橋には、今日もたくさんの人が行き交っている。


世界は増えた。


仲間も増えた。


そして――。


誰かと出会った記憶が、また新しい世界を生み出していく。



---


その夜。


銀河図書館の最深部。


誰も入ったことのない部屋で、古い装置が突然起動した。


ピ……。


画面に一つの文字が表示される。


『管理者、帰還。』


カナタが振り返る。


「……管理者?」


さらに画面に続きが表示された。


『世界ネットワークの完成を確認。』


『次の段階へ移行します。』


そして――。


銀河全体に巨大な時計が現れた。

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