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観測者

ハジメの空を覆う、見えない巨大な存在。


その二つの目だけが、夜空に浮かんでいる。


「私は観測者。」


「この世界の成長を停止させる。」


ソラが不安そうにルカを見る。


「ハジメを止めちゃうの?」


悠真が空を見上げる。


「待って。」


「どうして止める必要があるの?」



---


成長の基準


観測者は答えた。


「世界には成長限界があります。」


「生命が増えすぎれば、資源が不足する。」


「文明が発達しすぎれば、争いが生まれる。」


「だから、一定以上の成長は禁止されています。」


ミナが反論する。


「しかし、ハジメはまだ生態系が形成されたばかりです。」


「成長を停止すれば、自然な発展ができません。」


観測者は答える。


「規則です。」



---


ハジメの声


その時、大地が震えた。


ゴゴゴ……。


そしてハジメ自身が話し始める。


『私は……成長したい。』


観測者が沈黙する。


『もっと海を作りたい。』


『森も作りたい。』


『ソラやナギやルカと、もっとたくさんの友達と暮らしたい。』


ソラが目を輝かせる。


「ハジメ……。」



---


自分で決める


悠真が言った。


「聞こえた?」


観測者は答えない。


悠真は続ける。


「ハジメは、自分で成長したいって言ってる。」


「世界のことを、世界自身が決めてもいいんじゃない?」


観測者が返す。


「世界に意思を持たせることは、規則にありません。」


悠真は驚く。


「でも、もう意思を持ってる。」



---


ルカの飛行


突然、ルカが空へ飛び上がった。


バサッ!


ソラが叫ぶ。


「ルカ!」


ルカは観測者の周囲を飛び回る。


観測者は動かない。


しかし、ルカは怖がらずに飛び続ける。


そして、巨大な目の前で止まった。


「キュル!」


観測者が尋ねる。


「何をしている?」


ルカは答えるように、もう一度鳴いた。


「キュルル!」



---


言葉のない答え


ミナが微笑む。


「ルカは、飛ぶことを選んだんです。」


観測者が聞く。


「それが何だ?」


「誰かに『ここまで』と決められたわけではありません。」


「自分で飛んで、失敗して、また飛んだ。」


悠真が続ける。


「それが成長なんだよ。」


観測者は黙り込んだ。



---


観測者の記憶


突然、観測者の周囲に映像が浮かぶ。


そこには、かつての世界が映っていた。


まだ小さな惑星。


そこに暮らす生命。


しかし、成長の途中で大きな争いが起こり――。


世界は崩壊した。


あかりが静かに言う。


「もしかして……。」


観測者は答えた。


「私が最初に観測した世界です。」


「成長を止めなかった結果、消滅しました。」



---


怖かっただけ


悠真が言う。


「だから、全部の世界を同じように止めていたの?」


「……はい。」


「もう失いたくなかったんだね。」


観測者は答えなかった。


でも、その目から小さな光が落ちた。


まるで涙のようだった。



---


新しいルール


ミナが提案する。


「成長を止めるのではなく、成長を観測しながら支える仕組みに変更できませんか?」


観測者が尋ねる。


「支える?」


「環境が危険になったら警告する。」


「資源が不足したら知らせる。」


「でも、最終的な選択は世界自身に任せる。」


悠真も頷く。


「それなら、ハジメも自分で考えられる。」



---


観測者の決断


長い沈黙のあと――。


「……分かりました。」


「この世界には、特別な観測規則を適用します。」


ハジメの空に光が広がる。


『成長の自由を許可。』


『ただし、危険が生じた場合は警告する。』


ソラが喜ぶ。


「やった!」


ナギも跳び上がる。


「ハジメ、もっと大きくなれる!」


ルカは空を飛び回った。



---


観測者の名前


悠真が尋ねる。


「ところで、君には名前があるの?」


観測者は少し考えた。


「ありません。」


ソラが言う。


「じゃあ、名前をつけようよ!」


観測者が驚く。


「私に?」


「うん。」


みんなで考える。


そして悠真が言った。


「ミカゲはどう?」


「世界を見守る影、って感じ。」


観測者はその名前を繰り返した。


「ミカゲ……。」


そして初めて、柔らかな声で言った。


「気に入りました。」



---


ハジメの未来


ミカゲが去ると、夜空に星が戻ってきた。


ハジメは静かに輝いている。


ソラが海を見る。


「次は森を作ろう!」


ナギが言う。


「山も!」


ルカが空から鳴く。


「キュルル!」


悠真が笑う。


「まだまだやることがいっぱいだね。」



---


しかし、その時。


新・姉妹レンタル本部へ、ミカゲから一通の通信が届いた。


『観測中に、未知の信号を確認しました。』


ミナが画面を見る。


「未知の信号?」


『はい。』


『ハジメのさらに外側――世界の境界の向こうからです。』


悠真が尋ねる。


「何て言ってる?」


ミカゲは答えた。


『「次の世界が目を覚ました」と。』


全員が顔を見合わせる。


そして遠い宇宙で――。


まだ誰にも知られていなかった巨大な惑星が、ゆっくりと目を開いた。


その惑星には、三つの太陽があった。

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