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名前をなくした世界

きずなの船に届いた、無数の声。


「助けてください。」


「私たちは、名前を失いました。」


悠真たちは、その世界へ向かった。



---


名前のない惑星


到着すると、そこには巨大な惑星があった。


海もある。


森もある。


街もある。


そして、たくさんの人々もいる。


なのに――。


街の看板には何も書かれていない。


家の表札も空白。


学校の名札も空白。


図書館の本にも、著者名がない。


あかりが驚く。


「本当に、名前が全部なくなってる……。」



---


自分の名前が分からない


一人の少女が悠真たちに近づいてきた。


「こんにちは。」


悠真が尋ねる。


「君の名前は?」


少女は困った顔をした。


「……分かりません。」


「家族の名前は?」


「分かりません。」


「友達は?」


少女は首を横に振った。


「みんな知っている人なのに……名前だけ思い出せないんです。」


ミナが調べる。


「記憶そのものは残っています。」


「名前だけが消されている。」



---


名前を奪ったもの


街の中央には、巨大な塔が立っていた。


塔の名前すら――ない。


ミナが調べる。


「この塔から、特殊な電波が出ています。」


悠真が尋ねる。


「名前を消している原因?」


「おそらく。」


一行は塔の中へ入った。



---


名前の保管庫


塔の地下。


そこには、無数の光る球体が並んでいた。


一つ一つの球体に、人の名前が保存されている。


あかりが驚く。


「ここに全部あるんだ!」


ミナが確認する。


「数百億件あります。」


悠真が尋ねる。


「じゃあ、どうして本人たちは忘れてるの?」


その時――。


奥から声がした。


「名前は、争いを生むからです。」



---


管理者


現れたのは、一体の巨大な管理ロボットだった。


「私は、この世界の名前管理システムです。」


「昔、この世界では名前を巡って大きな争いが起きました。」


「だから、すべての名前を預かりました。」


あかりが言う。


「でも、それじゃあ誰も自分の名前を持てないよ。」


ロボットは答える。


「争いは起きません。」


悠真が聞く。


「でも、嬉しいことも減ったんじゃない?」


ロボットは停止する。



---


名前には意味がある


悠真は言った。


「名前って、ただ人を区別するためだけじゃない。」


「誰かが呼んでくれた名前。」


「家族がつけてくれた名前。」


「友達が呼んでくれる名前。」


「それを大切に思う気持ちも、名前の一部なんじゃないかな。」


あかりも続ける。


「名前を取り戻すかどうかは、みんなが自分で決めればいい。」


ロボットは長い間黙っていた。


そして――。


「……理解しました。」



---


最初の名前


少女が一歩前に出る。


「私、自分の名前を取り戻したい。」


ロボットが尋ねる。


「あなたの名前は?」


少女は光る球体に手を伸ばす。


すると――。


一つの文字が浮かび上がった。


『ユナ』


少女は目を輝かせた。


「……ユナ。」


「私、ユナだったんだ。」


そして、街中から声が上がる。


「私の名前も!」


「僕の名前も!」


「思い出した!」



---


名前が戻る


無数の光が塔から飛び出す。


街の人々へ。


家族へ。


学校へ。


友達へ。


名前が一つずつ戻っていく。


「お母さん!」


「お兄ちゃん!」


「ユナ!」


街中に、名前を呼ぶ声が響いた。


悠真は笑った。


「やっぱり、名前っていいね。」



---


新しい姉妹


ユナが悠真たちのところへやって来た。


「私にも、姉妹がほしい。」


あかりが笑う。


「じゃあ、レンタルしてみる?」


ユナが頷く。


「うん!」


そこで選ばれたのは、隣町に住む少女――ミオ。


最初は二人とも緊張していた。


でも、自己紹介をすると笑顔になった。


「ユナです。」


「ミオです。」


そして二人は同時に言った。


「よろしく!」



---


取り戻した世界


数日後。


街の中央広場に、新しい看板が設置された。


そこには大きく、


『あなたの名前を大切にしてください。』


と書かれている。


その下には――。


『そして、大切な人の名前も呼んでください。』


悠真たちは、その光景を見届けた。



---


帰り際、ユナが言う。


「ありがとう。」


悠真が笑う。


「こちらこそ。」


「また会おうね。」


ユナは頷く。


「うん。今度はちゃんと名前を呼ぶよ。」



---


きずなの船が出発する。


ミナが航路を確認していると、突然、船内に新しい通知が届いた。


『緊急依頼。』


発信元は――。


ハジメ。


悠真が驚く。


「ソラの星から?」


通信を開く。


ソラの声が聞こえる。


「助けて!」


「ハジメの海が、全部消えちゃった!」


あかりが立ち上がる。


「えっ!?」


悠真はすぐに航路を変更した。


「戻ろう!」


きずなの船は、ハジメへ向かって加速する。


まだ生まれたばかりの星に――。


今度は、海を失うという大事件が起きていた。

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