僕たちの記録
原初局の中央画面に表示された、
『最後の記録が不足しています。』
という文字。
悠真は驚いた。
「僕たち自身の記録って……どういうこと?」
セナが答える。
「無記録領域は、世界の記憶だけを消しているわけではありません。」
「その世界と関わった人の記録も、少しずつ消していきます。」
ミナが画面を見る。
「つまり、私たちが旅した記録も?」
「はい。」
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消えていく写真
その瞬間。
きずなの船に保存されていた写真が、一枚消えた。
あかりが叫ぶ。
「えっ?」
さらに一枚。
また一枚。
フェリスで撮った写真。
セレニアで撮った写真。
アースリアで撮った写真。
みんなの笑顔が、少しずつ消えていく。
悠真が慌てて端末を確認する。
「バックアップは?」
ミナが首を振る。
「ありません。」
「このままだと、私たちの旅そのものが消えてしまいます。」
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一番大切な記録
セナが言った。
「でも、まだ方法はあります。」
「記録を別の場所に残すのです。」
悠真が尋ねる。
「どこに?」
セナは、原初局の中央にある巨大な装置を指した。
「銀河記憶庫。」
「そこに、あなたたちが自分の言葉で旅を記録してください。」
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一人ずつ書く
悠真たちは記憶庫の前に立った。
最初に悠真。
「僕が最初に覚えているのは――。」
そこで少し考える。
「誰かと出会って、一緒に何かをするのが楽しかったこと。」
文章が光になって記録される。
次にあかり。
「私は、知らない世界へ行くたびに、新しい友達ができたこと。」
ミナ。
「私は、違う世界にも似た思いを持つ人がいると知ったこと。」
ソウタ。
「僕は、二つの地球が姉妹になった瞬間を忘れません。」
ユイ。
「私は、違う世界の人と笑い合えたこと。」
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カイの記録
最後に通信画面へ、カイが映る。
「僕も書いていい?」
悠真が笑う。
「もちろん。」
カイは自分の記録を書く。
『僕の世界には、たくさんの人がいました。』
『みんな、それぞれ違いました。』
『でも、一緒に過ごした時間は本物でした。』
そして最後に、
『僕は、みんなを忘れません。』
と記録した。
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記憶の光
銀河記憶庫が大きく輝く。
シュオォォォン……!
これまでの旅が、無数の光となって保存されていく。
フェリスの夕日。
セレニアの星空。
二つの月。
第三地球の街。
第四地球の広場。
アースリアの丘。
そして――。
最初のオリジン。
悠真が呟く。
「全部、残った。」
セナが頷く。
「はい。」
「あなたたちの物語は、もう消えません。」
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しかし……
突然、警報が鳴った。
ピピピピッ!
ミナが画面を見る。
「無記録領域が……完全に消滅していません。」
悠真が驚く。
「まだ残ってるの?」
画面の隅。
そこには、小さな黒い点があった。
その黒い点から、かすかな声が聞こえる。
「記憶を残すだけでは……足りない。」
あかりが緊張する。
「また、あの声……。」
声は続いた。
「世界が忘れられるのは、記録がないからではない。」
「誰も、その世界へ行かなくなるからだ。」
悠真が尋ねる。
「どういう意味?」
返事はない。
代わりに黒い点が、巨大な門へ変わった。
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最後の世界
門の向こうには、星が一つもない。
ただ真っ白な空間。
セナが驚く。
「まさか……。」
悠真が聞く。
「知ってる場所なの?」
「はい。」
「でも、ここは記録に存在していません。」
ミナが分析する。
「座標もありません。」
あかりが言う。
「じゃあ、ここはどこ?」
セナは静かに答えた。
「まだ誰も物語を書いていない世界です。」
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新しい旅
悠真は門を見つめた。
これまでの旅は、すでに存在する世界をつないできた。
しかし今度は違う。
何もない。
名前もない。
記録もない。
歴史もない。
そこへ――。
最初の物語を届ける。
悠真が笑った。
「だったら、行ってみよう。」
あかりが頷く。
「うん。」
ミナも準備を始める。
「航路を作ります。」
セナが微笑む。
「あなたたちなら、きっと大丈夫です。」
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きずなの船が、白い門へ進む。
ゴォォォ……。
後ろには、銀河中の無数の世界。
前には、まだ何もない世界。
悠真は窓の外を見て言った。
「今度は、何が待ってるんだろう。」
あかりが笑う。
「きっと、また誰かが待ってるよ。」
船が門をくぐる。
その瞬間――。
真っ白だった空間に、小さな星が一つ生まれた。
そして、その星から声が聞こえる。
「……こんにちは。」
悠真たちは驚いて顔を見合わせた。




