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黒い地球

原初局を揺るがす無記録領域。


その中心に浮かんでいたのは――。


青い地球。


悠真たちは言葉を失った。


あかりが小さな声で言う。


「地球……なの?」


セナは険しい表情で首を横に振った。


「いいえ。」


「正確には、地球の記録から生まれた影です。」



---


記録の影


セナによると、無記録領域は、消えてしまった世界の記憶を吸収していた。


その結果、たくさんの世界の記録が混ざり合い、一つの巨大な「影の世界」が生まれた。


そして、銀河中で最も多く記録されていた世界――。


それが地球だった。


ミナが驚く。


「だから地球の形をしているんですね。」


「はい。」


セナが頷く。


「ですが、あの世界には誰も住んでいません。」



---


影の地球からの通信


突然、通信が入った。


『こちら……地球。』


悠真が画面を見る。


「誰?」


ノイズの向こうから、少年の声が聞こえる。


『僕は……カイ。』


「この世界で、一人だけ残っています。」


あかりが驚く。


「一人だけ?」


『はい。』


『僕の世界では、みんなの記憶が少しずつ消えていきました。』


『名前も。』


『家も。』


『友達との思い出も。』


声が震える。


『でも、僕だけは忘れたくなかった。』



---


カイの宝物


カイは小さな箱を見せた。


中には――。


写真。


手紙。


古いおもちゃ。


家族からもらった小さなプレゼント。


一つ一つに名前が書かれている。


「これを毎日見ています。」


「だから、まだ覚えています。」


悠真は静かに言った。


「それは、すごく大切な宝物だね。」


カイは答える。


「でも、もう限界です。」


「この世界そのものが、消えそうなんです。」



---


姉妹レンタルの力


セナが言う。


「無記録領域を止めるには、消えかけた記録を外へ戻す必要があります。」


悠真が尋ねる。


「どうやって?」


「その世界の記録を、別の世界が受け取るのです。」


ミナが気づく。


「つまり――。」


「誰かが覚えていれば、その世界は完全には消えない。」


セナが頷く。


「その通りです。」



---


銀河中へ


悠真は決断した。


「カイの世界を、みんなに覚えてもらおう。」


ミナが通信網を開く。


まずフェリス。


『カイという少年がいます。』


フェリスの人々が返事をする。


「覚えました。」


次にセレニア。


『黒い地球があります。そこに一人の少年が住んでいます。』


「記録しました。」


地球A。


地球B。


第三地球。


第四地球。


アースリア。


そして、これまで出会ったすべての世界へ。



---


名前を呼ぶ


悠真が通信を開く。


「カイ。」


『……はい。』


「君のことを、僕たちは覚えたよ。」


あかりも言う。


「私も覚えた。」


ソウタも。


「僕も。」


ユイも。


「私も。」


そして銀河中から声が届く。


「カイ。」


「カイ。」


「カイ。」


一つ。


また一つ。


声が増えていく。



---


すると――。


黒い地球の周囲に、小さな光が灯った。


カイが驚く。


「何これ……?」


セナが笑う。


「あなたの世界を覚えている人たちの光です。」



---


黒い地球が青くなる


黒い地球の表面に、少しずつ色が戻っていく。


灰色だった街。


暗かった海。


消えかけていた森。


すべてが少しずつ元の姿を取り戻す。


カイが窓の外を見る。


「海が……青い。」


そして――。


遠くの空に、もう一つの光が見える。


カイは目を見開いた。


「……あれは?」


悠真が画面を見る。


そこには、一つの建物が映っていた。


看板には――。


『姉妹レンタル』


カイが驚く。


「この世界にも……あったんだ。」



---


消えなかった最後の記録


セナが説明する。


「この世界にも、かつて姉妹レンタルが存在していました。」


「ただ、記録が消える中で、最後まで残ったのがその看板だったのです。」


カイがその建物へ向かう。


扉を開ける。


中には――。


一枚の写真。


そこには、二人の少女が写っていた。


写真の裏には、


『また会おう。』


と書かれている。


カイは写真を胸に抱く。


「……僕も、覚えておく。」



---


無記録領域の消滅


銀河中から届いた記憶によって、無記録領域が小さくなっていく。


ゴゴゴゴ……。


黒い空間が、光へ変わっていく。


セナが叫ぶ。


「成功です!」


しかし――。


突然、すべての通信が停止した。


プツン。


静寂。


ミナが画面を見る。


「通信が……全部切れました。」


悠真が驚く。


「どうして?」


原初局の中央画面に、一つの文字が表示される。


『最後の記録が不足しています。』


あかりが首をかしげる。


「最後の記録?」


セナは、ゆっくりと悠真を見る。


「それは――。」


「あなたたち自身の記録です。」


悠真たちは顔を見合わせる。


どうやら、最後に残された問題は――。


自分たちの物語そのものだった。

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