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赤羽

87話 赤羽


 昼間っから酒飲んでるおっさんが居てカモにならないかと来てみた赤羽。

 平日だと、やはり明るいうちは無職のおっさんとか、隠居で酒呑むしかやることがない老人ばかり。カモになりそうなヤツはいない。

 しかも女子高生の格好は浮きまくりだ。


 たまに歩道に座り込む影の薄いヤツを見かける。

 一升びんかかえた、なんだかわからないヤツた。

 酔っぱらって逝っちまった死霊だろうか。

 座り込んで酒を飲んでる赤い顔のダルマ妖怪も居た。


 夕方に変なおっさんに声をかけられた。

 そいつは七三分けのヘアースタイルに黒縁メガネで丸顔だか、痩せていて背は低い。 


 ヘアースタイルからサラリーマンかと思えば服装はブルゾンにジーンズ。

 おっさんなのは確かだが童顔なので、もしかしたら老人かも。

 そいつは目尻のシワが多いキモい笑顔で。


「どっから来たの?」


「どこでもいいじゃん」


 なんで、そんなことを聞くんだ?!


「オレ、団地から来た。段違い平行棒」


 団地? そういえば赤羽団地とか、聞いたことがあるけど。たしか、駅からは遠いと。平行棒? 意味わかんない。


「なんで来たの?」


「それもあたしの勝手でしょ」


「オレは足で来たんだ」


 はぁ~。かなりつまらない冗談だ。


「アソバない?」

「お金有る? あんただと五枚くらい欲しいなぁ」


 こんなのカモにはならないのでふっかけてやった。


「アソ場ってトコは、ないんだよ。お台場ならあるけどクククッ」


 なに、こいつキレそう。会話にならない。


「ごまいかぁ、おしいなぁオレの主食は古古米なんだ」


 やば、ホントにキレそう。と、逃げようと思った時。そいつはジーンズの裏ポケットからサイフを出して。


「あんた本物のJKなら、五枚出す。ダス、ガス爆発」


「本物よ」


 じゃないけど。


「ハイ、五枚。どんまい」


 って、葉っぱ五枚出されても。


「あんた、キツネか、タヌキ?」


「そういうおまえはムジナか? でも、オレ中森むじ菜のファンだから。いいけど」


「あんたが良くてもこっちはおことわりよ!」


 ああ、つい大声出しちゃた。駅前通りで注目をあびてしまった。

 周りの人が見ている。


「注目のマタ。なんちゃって」


 と、そいつはテントを張った下腹部を指差した。

 それって注目のマトの。


 ホント、逃げよう。


「金ならある」


 と、ちゃんと一万円札を出して突き出した。

 でもあたしは、その札をむしり取り、その場から逃亡した。


「お笑いだニャ」

「ケイさん、それで取った札は?」


「それであんたらにおごってるの」


 サイフから札を出すと。アレ、昨日はちゃんとお札だったのに。

「ヨーマの休日」の映画鑑賞券。


「何よコレ」


「ヨーマ? ローマなら知ってるニャ」

「コレ妖怪の妖に魔物の魔で『妖魔の休日』ですかね。ハハハ」


 と、カメラ小僧が笑う。


「あいつオヤジギャグ好きのタヌキかキツネよ、きっと」


「と、いうことは、ここの払いは」


「もち、割り勘ね」


 後に知り合いの妖怪に聞いた。

 赤羽のそいつは、くだらない冗談で人をからかう「赤羽ジジィ」という妖怪だそうだ。


 あたしオヤジギャグ苦手なのよね。


            つづく

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