古書店2
86話 古書店2
「人にぶつかってワビもなしか?」
「あ、すみません」
「あー痛いてぇ。指折れたんじゃねーか」
と、危ないおっさんは手を見せた。
折れたどころか、小指がない。
「治療費出しな」
と、ボクの落とした本を踏みつぶした。
「本読みながら歩くのは危険なんだよぉ。出るとこ出てもいいぜ」
と、本を踏んづけた男の足が上がり男は地面に尻もちをついた。
「ヤローナニしゃがる」
「ボクはナニも」
地面の本が開き、とじ目から、人の手が飛び出した。
そしてとじ目から、ヒトが。
「ええっ!」
あの古本屋のエプロン姿にバンダナの子だ。
「あんた、本を足げにしたわね」
「なんだ、てめぇは」
立ち上がった男が彼女に掴みかかろうとしたらハタキで男の顔を何度も突いた。
「やめろガキッ!」
手でハタキを払う。
と、彼女は男の股間に膝蹴りを入れた。
「本を大切にね」
と、股間を蹴られて腰を曲げた男の後頭部にかかと落としを。
足を上げたその時、白いのが見えた。
ぱ、パンツ。
エプロンの下はミニスカだ。
男は顔面を歩道につけ倒れた。
「今のうちに」
彼女は本を拾うと、ボクの手をとり走った。
路地に入った彼女は。
「見なかったコトにして」
と、ボクに本を渡して本を開き、出てきたように、とじ目に飛び込んで消えた。
なんだったんだ今の?
ボクは、古書店に行かず駅へ走った。
会社に戻り本を唐沢さんに本をあげた時に、古本屋からのコトを話した。
足跡の付いた表紙を閉じてちらっと見て。
「ふーん」と真面目な顔で金沢さん。
「面白い体験したね高田君。見て、この本の著者名。文車妖妃って」
唐沢さんが言うには、その物の怪絵図には載ってない妖怪と。
「この本は、その文車妖妃って妖怪が書いたんですか」
「多分……だから載ってないのね。見て」
唐沢さんはスマホで検索して、鳥山石燕の文車妖妃の絵を見せてくれた。
角は無いが鬼の様な顔のおばさんの絵だ。
「その古書店の人はこんなおばさんじゃなかった?」
唐沢さんは文車妖妃が自分の本を売っていたんじゃないかと。
あそこの店主らしい人は、こんな鬼顔とは思えない美魔女だった。
でも、石燕の絵は、本物を見て描いたわけじゃなし、もしかして。
あの妹らしいカワイイ子も妖怪なら、池袋のコトも納得出来る。
その後休日に唐沢さんとその書店に行ってみた。
なかったりしたらやっぱりと、なっただろうが、あった。店名も同じだ。
でも、中に和とじ本とかは、置いてなかったが、それ以外は一緒の店内。
しかし奥のレジにはお婆さんが座ってた。
「いつの話だい。ウチの店は私が一人だよ」
日にちを言うと、その日は休店だったと言われた。まさしく怪異だ。
「やっぱり……ホント、一条さんの誕生日の百物語からいろいろあるね」
おかしな事が続くのを楽しんでる。
唐沢さんは。
しかしもっとボクが良かったのは、その日ボクは唐沢さんチに泊まった。
ひさびさに、彼女とベッドを共にした。
つづく




