御茶ノ水
88話 御茶ノ水
「ここが御茶ノ水ですか。3時間くらい電車乗ってたよね」
「そんなに乗ってたか? あんたと、くだらない話ししてたらあっという間に千葉で。乗り換えて、バカ話してたら錦糸町で降りずに東京まで、いっちゃたから長く感じたんじゃないのか。それに東京駅で弁当買ってたし」
「だって美味しそうだったんで。あたし朝、食べてなかったから」
「どうでもいいけど。叔父さん居ないなぁ。待ちあわせ時間5分過ぎたくらいで帰らないよな」
「まだ、来てないとか」
「あの叔父ならありえる」
「でもぉせっかく東京に来たのになんで御茶ノ水なんです? ココ、なんか面白いトコ有ります?」
「叔父が、ココに住んでるからだ。ココの事は、あたしに聞くなよ。あたしも、初めて来たんだから。スマホで調べてみろよ」
「悪い悪い。寝坊してしまった。待った?」
「あっ、やっぱり遅れてたんだ。うちらも今来たとこ」
相棒のアミが、東京に行きたいと言ってたので時間と金が出来たので館山からやって来た。
東京在住の叔父、愛宕山無地男に東京ガイドを頼んだんだ。
「あの人がムジオさんですか?」
「ああ。あたしら東京に来るの初めてで、何処をどう行ったら、わからないより地元の人間が居た方がイイだろ」
「でも、むさいオジさんですね。どうせならムキムキのマッチョオジさんの方が」
アミは、親父が漁師でガッチリ体型のマッチョだった。
父コンのアミは好みのタイプもマッチョに。
ちなみに親父は三年前に海で亡くなった。
まあ東京ガイドならムキムキもガリガリも関係ないよアミ。
「ちょっと見ないうちにマリ、おまえも美人になったなぁ」
と、叔父が近寄り耳元で言った。
「ムジナの血筋とは、思えないよ」
「叔父さんもムジナなんですかぁ」
「おい、話したのか?」
「ああ、べつにかくす事でもないし」
「かくす事だろ」
と、また耳元で。
「叔父さんも、でっかいキンタマ付いてるの?」
「も、ってなんだ。あたしは女だって見せたろう」
「でっかいキンタマ?」
「こいつ、天然で。ムジナをタヌキだと思ってるんだ」
「そういう事か。なんで僕のキンタマが、大きいって知ってるのかと」
ホントにデカいんだ叔父は。
「おじさんのは棒もデカいんだ見るかい?」
「見たい」
「やめろ変態! 駅前で話すコトか!!」
叔父は近いトコからと神田の古本屋街に連れて来た。
が、あたしら古本とかに興味ないんだけど。
ガイドを間違えたか、やっぱ。
「スゴいなおじさん、この通り本屋さんだらけだ。館山では見ない風景だ」
とか、アミは楽しんでる。
こいつ本、読めるのか。ワゴンセールの百均を見つけては見ている。
地元の本屋がなくなり、今じゃコンビニでしか本が買えない。から、珍しいのか?
「ほら、マリさぁん。コレ、あたし子供の頃持ってた」
と、店の中に入った。
どうやら買ったようだ。
「ナニ買ったんだ?」
「にっぽん妖怪図鑑! コレ子供の頃に父ちゃが誕生日に買ってくれたんだ。今は無いから買っちゃたよ」
「妖怪図鑑か。アミ、妖怪好きなの?」
「べつに」
そうなんだ。まあタヌキとムジナの区別もつかないんだからなぁ。
そういえば、叔父は。
3軒先の本屋から出てきた。袋を持っている。なんか買ったんだ。
アミと行って見ると店先に「十八歳未満入店厳禁」という張り紙が。
「東京の本屋にはこんな店もあるのか……」
中の本は想像がつく。もちろん叔父が買った本も。
「ここは、子供が入れないのかぁ〜。なんでです?」
「子供が見てはいけない本が売ってるからだ」
「子供が見ちゃいかない本って?」
あ、コラッ。アミは店の中に。
「大丈夫なのかあの子?」
「まあアミは、ああ見えてハタチだ。問題ないよ」
店の自動ドアが開き、店員に連れられたアミが。
「あのぉお母さんとお父さん? ウチは成人本の専門店なので」
「お母さんって誰?!」
叔父が、美味しいカレーの店があると。
「ホント美味しかったね」
「おごりだと特に美味しい」
「最近無職になってな、カレーくらいしか食わせてやれなくてゴメンな」
「あの、あんたたち人じゃないよね」
店の前で声をかけてきたのはバンダナを頭にかぶったデニムのミニスカの少女。
「あたしはタヌキじゃないよ」
アミが。
少女は鼻をくんくんして。
「どっから来たの」
「館山」
「千葉県?」
「だよ」
「おじさんも」
「僕は、東京だ、姪っ子を東京ガイドしてる」
「珍しいなぁココより楽しいトコ沢山あるだろう。東京来たのなら。ねえお嬢ちゃん。ディズニーランドとか行きたいよね」
「あそこは千葉だよ、あんた知らないの」
「え、あそこ千葉なの……。お母さん、しっかりしてるねぇこの子」
「誰が、お母さんだ!」
つづく




