表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空想物語の中の冷血な騎士様は、ザマァされる私の夫なんですが、なぜか設定崩壊しています  作者: ミカン♬


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/21

19 最終章/オルシア

 決意を胸に、神殿へ向かう。


 護衛は帰した。


 無謀かもしれない。



 ──物語では、まだ先のはずだった。


 だって、編んだマフラーさえ、まだディーンに渡していないんだから。


 展開が早すぎる。

 シナリオはどんどん変わっていく。


 長年、何度も何度も思い描いてきた物語なのに。

 たった一か月余りで終わろうとしているなんて……。


 本来なら春先。

 私はディーンと離婚するために神殿を訪れて──ラファエルと対決するはずだった。


 最後までディーンは私を信じてくれなかった。

 彼は私の敵。味方は水龍様だけ。


 けれど今は違う。


 ──この現実。


 きっとラファエルは、何も知らない。

 レティーに水龍を召喚する力がないこと。

 未来を知る私が、圧倒的に有利だってことも。


 見えて来る。

 ──湖畔の神殿の前に立つ、二人の悪党。


 私が何も知らず、のこのこ祈りに来たと思っているのね。


 ポーカーフェイスなら得意よ?


 聖職者を装った罰、きっちり受けてもらうわ。

 ──こちらの勝利は確定している。


 ここから最終章が始まる。



 神殿前に着くと、ラファエルがにこやかに手を差し出してきた。


「シビル・オルシア、久しぶりですね」


「はい、またお会いできて光栄です」


 すまし顔で、握手する。

 その横で、レティーが冷めた目を向けてきた。


「今日は先に、湖で祈りを捧げたいと思います。先日の鎮火のお礼を、水龍様にお伝えしたいのです」


 私が言うと、すぐにレティーが口を挟む。


「あら。それなら私が、既にお伝えしたから必要ないわよ?」


「貴方のお礼など伝わりません。シビルは私なのですから」


「私が召喚したのよ! 能無しシビルのクセに!」


 相変わらず沸点が低い。


 ラファエルが「まあまあ」と割って入る。


「それなら、オルシア殿、まずは湖に向かいましょう」


 ──ここまで計画通り。



 湖は、嘘みたいに静かだった。


 私は水際に立ち、祈るふりをしながら心の中で呼びかける。


(水龍様、ラファエルを倒す為の力をお貸しください)


 背後でラファエルが動く気配。


 大丈夫。ディーンがついてる。


「カァアアア──!!」


 鋭い鳴き声。


 続いてラファエルの悲鳴。


「うわぁああ、やめろ!」


 振り向くと、多数のカラスがラファエルに襲いかかっていた。

 彼は必死に杖を振り回している。


 そのとき。


「止めなさい! オルシアを殺すわよ!」


 ひやりとした感触。

 ナイフが、私の喉元に突きつけられていた。


 カラスたちは一斉に空へと舞い上がる。


 ……レティー。


 ここまで凶悪じゃなかったはずなのに。


 ラファエルだって、騎士をカラスに変えるなんて悪知恵、なかった。


 ディーンが正義に傾いた分──

 あちらの悪意が、増幅している。


 きっと、未来のバランスがそうやって調整されているんだ。



「オルシア、もう消えていいわ!」

「待て! オルシアにはまだ役目があるのだ」


 二人の声が重なる。


 その隙に私は唱えた。


「レティーの銀のナイフを収納! レティーのドレスも収納!」


 一瞬でナイフが消え、

 レティーは下着姿になっていた。


「いやぁあああ!」

 悲鳴を上げて、その場に崩れ落ちる。


 続けて、

「ラファエルの手にある【神龍の檻の指輪】を収納!」

 これは危険だもの、早く収納しなきゃ。


 ──空想の中で、何度も見て来た戦闘シーン。

 私は<収納術>なんて使わない。カラスもいなかった。


 ラファエルの正体を知らなかった私は、ただ驚くだけだった。

 そんな私に危機が迫って、水龍様に助けられる。


 でも今は、私だって戦う!



 「収納だと?」


 ラファエルが目を見開いた瞬間、無数のカラスたちが一斉に襲いかかる。


「水龍様──今です!」


 早く!



 水龍様?


 ……あれ?


 出てこない?


(ねえ、出番ですってばーー!)



 杖を振り回すラファエル──彼のダメージはほぼゼロだ。


 これはマズイ!


「ラファエルの司祭服を収納! 下着も収納!」


 次の瞬間、ラファエルは完全に素っ裸になった。


 その全身に、カラスたちのくちばしが容赦なく突き立てられる。


「や、やめろ! この!」


 ……さすがにこれは、見ていられない。


 でも、水龍様はまだ現れない。


 なんでよ、今でしょう!

 水魔法で、早く片付けてください!


 すると突然――

 ボンッ、と衝撃波が弾けた。


 傷だらけのラファエルの体から放たれたそれで、カラスたちが一斉に地面へ叩き落とされる。


「ディーン!」


 思わず叫ぶ。


 ラファエルが、こちらへゆっくり歩いてくる。


「指輪を返せ! そうか……お前だったのか。レティーには騙されたな」


 確信した目で私を睨む。

 そしてレティーに杖を向けて、短く呪文を唱えた。


「いや、やめ……」言い終わる前に、レティーはカラスの姿に。



 未来予知に、あの杖は無かった。


 「ラファエルの手にある杖を収納!」


 叫ぶけど――消えない。

 【神龍の檻の指輪】みたいに特別な、固有名を持ってるの?


「指輪を返すんだ。そして水龍を呼べ! そうすれば命だけは助けてやる」


 私に杖を向けるラファエル。


(水龍様、どうして現れてくれないの?)


 その時。


 ラファエルに向かって、一羽のカラスが果敢に飛び込んだ。


 体当たり!


「しつこい!」

 杖で叩き落とされる。


 それでもまた飛び上がる。


 殴られても、何度も、何度も。


 ――ディーン? やめて、無茶しないで!


 再び衝撃派が放たれ、力尽きて倒れたカラス。

 だが、ラファエルは容赦なく杖を振り下ろす。


「もう止めて!」


 私は震える手で【神龍の檻の指輪】を取り出し、ラファエルに向けた。


 ──あの悪党を封印してやる!


 

読んでいただいて、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ