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東方鋼魔伝  作者: 東志郎
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東方鋼魔伝 ストーリー007

目標となる大和一郎(?)と女性軍人を追跡する馬季常とその中隊。倒された李徴り・ちょうと配下の第1小隊の仇を取るべく彼らは追跡の手を緩めない。だがなぜか様々に不可解な事実が浮かび上がる。

ストーリー007


連邦軍資料より 得体の知れないもの


~大和一郎の墓~


 大和一郎を追い詰めるために馬季常ば・きじょう大尉たちは足早に森の中に入った。残りはたったの2名。歴戦の雄でも連戦による疲労困憊は相当のものだろう。彼を除けば女性が一人だけということだ。狙撃手の生き残りだろうか?自分を、部下たちを鼓舞して森の中を進む。やがて激戦のあった場所に到達する。先ほどの趙明の報告通り、第1小隊が隊長、李徴り・ちょう以下、そこに眠っていた。帝国兵も6名倒れていた。部隊関係なく、有志が残ったのだろうか。意外にも全員が銃兵だった。銃兵の援護と死神剣士の近接戦闘でしぶとく戦い抜いたか。相対した李徴は自らのマスケット銃を片手に、満足そうに、誇らしげに眠っていた。


 「片が付いたらしっかり弔ってやる。」

 亡骸にそう語った馬季常はその顔から目を背けて鼻をすすった。更に足早にその場を去り、東の方角を目指す。とすぐさま、森の開けた場所に妙なものを見つけた。それは誰かの真新しい墓のようだった。桜の枝が手向けられている。墓荒らしは気が引けたが、激戦があったこの場所のすぐそばで、つい先ほど埋葬?違和感でしかなかった。すぐ周囲の者に墓を暴かせた。


 そこに眠っていたのはなんと・・・大和一郎だった。


 間違いない。追撃戦のさなか、偶然にも何度かその姿を見ているし、これだけの有名人。人相書きも見たことがある。まさしく彼のはずだ。ということは、李徴は己の本分を果たして死んだのか?先ほどの満足そうな李徴の顔を思い出していた。それは微かな救いではあった。


 馬季常はならず者の生き残り、趙明ちょう・めいを呼びつけた。

「お前の仲間達を倒したという男は、確かに大和一郎だったのだな?」

「はい。間違いないだす。変な作業着を着てましたが。」

作業着?また変なことを言っている気がするが・・・。

「見てみろ。その大和はここに葬られていたぞ。」

そう言って亡骸を指さす。それを見た趙明の目は驚きに満ちていたが、必死に主張する。

「そんなの、おかしいだす。たくさん剣を投げつけられて、兄貴も、皆も!」


--------------------------------------------


~奇妙な事象~


 趙明の様子が、馬季常は気になる。墓を元に戻し、趙熊班の4人が倒れている場所も確認した。その墓から100mほど離れた場所だった。さすがにこの場所に来たときから、趙明は気分が悪そうだった。それはそうだろう。馬季常は軽く趙明の肩をたたき、自らも瞑目した。戻ってきたらしっかり弔ってやる。


 確かに。一方向から剣を投げつけられたらこんな風に同じ方向に倒れるに違いない。ただ、まるで、闘いの痕跡が消されたかのように、敵味方一切の武器がその場に残っていなかった。

「皆が同じ方向に倒れているように見えるが、一切武器が残されていないのは何故だ?」

遺体を確認したり、下草を掻き分けたりしながら、弟、馬幼常ば・ようじょう中尉が、やはり同様の事を考えて呟く。

「そういえば先ほどの第1小隊の眠っていた場所でも、残っている武器の数が異様に少ないように思えたな。」

 馬季常もそう答えながら、周囲を調べる。先程の場所では犠牲者がしっかり握っているような武器は残っていた。だがその一部を除いて、その辺に転がっている剣や銃がなかった。

「どこぞの豪傑のように、1000本目の太刀を集める悲願でも立てていたのだろうかね?」

 馬幼常が冗談を言う。生き残った大和一郎(?)が全部回収して持って行ったのだろうか?でもそうとしか考えられない。そんな大量に。何の目的で。1本、2本ならばわかる。身を守るため、自軍のものであれ、敵軍のものであれ、必要な武器を拾って戦闘を継続することは、戦場では当たり前にあることだ。

しかし・・・


奴らは撤退を目的にしているのではないか?山のような武具を抱えて撤退の邪魔ではないのか。

「けどそうなると大荷物だ。二人で運べる量には思えないし、諦めてその辺りに捨てているかも知れない。」

撤退の状況を想像して馬季常は言う。だが、さらに周辺からも見つかりはしない。


 何か得体の知れないものと対峙しているような気がする。


 先ほど趙明がその大和一郎について言っていた、「作業着」という言葉が妙に引っかかる。

そっくりさん。影武者?そんな古風な。


 そこから東はいくつかの林道が分かれているが、最終的には櫛名田ダム近辺に到達するようだ。もうすぐ日が暮れる。森の中もところどころ深い闇に覆われ始めている。得体の知れない敵だが、ぐずぐずしていられない。このダムまでに目標を捕捉しなければ逃げ切られる公算が高い。頼りないカンテラの火を頼りに細かい地図を見ていたが、目が死んでしまいそうだ。各部隊をルートごとに分けて駆け足で進ませることにした。もう被害を恐れても仕方ない。


 実体(実態)を見れば謎も解けるだろう。


 一部の兵に荷物を管理させ、それ以外の兵士はできる限り軽装にさせて、先行させることにした。

約130名ほど。ダムまでわずか数km。全員、全力で走るぞ!馬季常、馬幼常も走り始める。趙明はもともと足の速い兵士だが、嫌々ついてくる感じがある。この人数で疲弊した2人ごときにとどめを刺せないようでは沽券に関わる。


急げ、目標、大和一郎(?)と女の二人組に何としても追いつくのだ。


挿絵(By みてみん)


失われた武器、墓に埋葬されていた大和一郎。不可解な事実の数々に馬季常は何か得体の知れないものを感じる。それでも彼に様子を見る、退く、などという選択肢はなかった。状況がそうさせていた。次回、ついに馬季常とその中隊はその正体を知ることになる。

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