第4話 転校生は猫耳メイドの男の娘!?
ノリとテンションは高いほうがいいよね
朝日が旧校舎の窓から差し込み、部屋を優しく照らしていた。
「……おお。」
鈴野真弥は制服姿の自分を鏡で見つめる。
銀色の長い髪。
小さな猫耳。
そして、この世界の学生服。
「これが現代日本の制服……。」
袖を軽く引っ張り、くるりと一回転する。
「動きやすいですね!」
その時。
コンコン。
「真弥くん、準備できた?」
扉の向こうから心春の声が聞こえた。
「はいっ!」
真弥は笑顔で扉を開ける。
「帝国最高の知識、本日より学生になりますっ!」
「そこは普通に『おはよう』でいいんだけど……。」
心春は苦笑した。
「制服、似合ってるね。」
「ありがとうございます!」
「……でも。」
「どうしました?」
「男子制服なのに、女の子にしか見えない。」
「よく言われますっ!」
二人で校舎へ向かう。
朝の校庭では、生徒たちが登校していた。
「学生がこんなにも……。」
真弥は辺りを見回し、目を輝かせる。
「すごいです!」
「全員、学びに来ているのですね!」
「うん、そうだけど……。」
「なんて素晴らしい環境なのでしょう!」
真弥は早速メモ帳を取り出した。
『現代日本の教育制度。
朝八時前後に多数の学生が自主的に登校。
集団教育を採用。』
「もうメモしてる……。」
心春は小さく笑う。
その頃――。
二年二組の教室では、朝からざわめきが広がっていた。
「ねぇ、今日転校生が来るらしいよ。」
「マジ?」
「男? 女?」
「知らない。でも佐倉先生が『ちょっと驚くかもしれないわ』って。」
「何それ、気になる!」
そこへ担任の佐倉先生が教室へ入ってきた。
「みなさん、席に着いてください。」
ざわついていた教室が静かになる。
佐倉先生は出席簿を閉じると、教室を見回した。
「今日は転校生を紹介します。」
教室が再びざわめいた。
「入ってください。」
ガラッ。
教室の扉がゆっくり開く。
最初に見えたのは、さらりと揺れる銀色の髪。
続いて、小さな猫耳。
そして、制服をきちんと着こなした、とても整った顔立ちの少女――にしか見えない人物。
教室中の視線が、一斉に集まる。
「か、かわいい……。」
誰かが思わず呟く。
「モデルみたい……。」
「転校生、女の子だよね?」
ひそひそと声が広がる。
真弥は教壇の前へ進み、にこりと笑った。
「初めましてっ!」
元気よく一礼する。
「鈴野真弥です!」
ここまでは普通だった。
しかし。
「異世界リオスより参りました!」
教室が静まり返る。
「ちなみに、すずは半人半神の大公家当主ですっ!」
「帝国大学の創設者でもあります!」
「そして――」
胸を張る。
「猫耳メイドの男の娘ですっ!」
…………。
教室が完全に止まる。
数秒後。
「ちょっと待てぇぇぇぇぇ!!」
「情報量が多すぎる!!」
「異世界って何!?」
「大公って何!?」
「最後の肩書きが一番意味分かんない!」
教室中が大混乱になった。
何人かの頭がぷすぷすいっていた。
おおかた、情報量に耐え切れずオーバーヒートしたのだろう。
そんな中、一人の男子生徒が…いや勇者がおそるおそる手を挙げる。
「先生……質問です。」
「なんですか。」
「男子ですか?」
佐倉先生は一拍置いて答えた。
「男子です。」
「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」」」
教室中に絶叫が響いた。
「いや、どう見ても女子じゃん!」
「制服だけ男子だ!」
「なんでそんなに可愛いんだよ!」
「それは先生にも言わしてほしい」
「教師として事実を受け入れます。」
「…え?」
「先生も認めたくありません。」
「名簿には男子とあり本人もこう言っています。」
「ですが……なぜ男子生徒が私より可愛いのかは、未だに理解できません。」
少し間を置く。
「認めたくありません。」
「なんで転校生が先生よりかわいいのか。」
「なぜ男なのか。」
「なぜ猫耳が自然についているのか。」
「なぜ異世界から来た大公なのか。」
「先生にも分かりません。」
「先生ぇぇぇ!?」
教室には、もう一人の勇者がいた。
「猫耳って本物!?」
別の男子生徒が手を挙げる。
質問が一斉に飛び交う。
二人目の勇者だった。
真弥は満面の笑みで猫耳をぴくりと動かした。
「もちろん本物ですよっ!」
「動いたぁぁぁぁ!!」
再び教室は大騒ぎになった。
「というか大公って……本当に?」
「はい!」
真弥は笑顔で頷く。
「鈴野家はリオス帝国における大公家です!」
「大公って、王様とか皇族の近くにいる人?」
「そうですね!」
真弥は少し考える。
「帝国では、皇帝陛下を支える最高位級の貴族になります!」
「……」
教室が静かになる。
「え、じゃあ……偉い人なの?」
「はい!」
真弥は元気よく答えた。
「政治、教育、研究、魔法技術など、多くの分野に関わっています!」
「……」
クラスメイトたちは顔を見合わせる。
最初は冗談だと思っていた。
しかし。
彼の言葉には、不思議な重みがあった。
ただ偉そうにしているわけではない。
自慢しているわけでもない。
まるで――
「普通のことだったみたいに話す……」
誰かが呟いた。
真弥は首を傾げる。
「普通ですよ?」
「いや普通じゃない!!」
教室中から声が飛ぶ。
「大公が転校してくるって何!?」
「しかも本人が普通に学校行こうとしてる!?」
「異世界の貴族ってもっとこう……護衛とかいないの!?」
「あ。」
真弥は少し考える。
「以前はいました。」
「いたんだ!?」
「ですが、今はいません。」
「……」
一瞬だけ。
真弥の笑顔が止まる。
しかし、すぐにいつもの笑顔に戻った。
「なので、現在は一人で生活しています!」
その言葉に、教室の空気が少し変わる。
さっきまで「すごい人」として見ていた。
でも。
今目の前にいるのは。
ただの――
「……転校生、なんだよな。」
誰かが小さく言った。
真弥は笑う。
「はい!」
「今日からよろしくお願いします!」




