第3話 猫耳メイドの拠点作り
ん?更新が早いって?休みって暇じゃん?暇ならなんかしたいな~…チャッピー君今暇?そっか~じゃあ一緒に頑張ろうね☆
翌日。
旧校舎の空き部屋。
そこは、長い間使われていなかった場所だった。
古い机。
傷んだ棚。
少し埃の積もった床。
普通なら、ただの物置。
しかし――
「ここを、すずの拠点にしますっ!」
鈴野真弥は、胸を張って宣言した。
「拠点……?」
野原心春は首を傾げる。
「はい!」
真弥は楽しそうに部屋を見回した。
「生活空間!」
「図書スペース!」
「そして――」
少し間を置く。
「研究場所です!」
「最後だけ急に個人的になったね……」
心春は苦笑する。
「でも、本当にここで生活するんだよね。」
「はい。」
真弥は頷いた。
その笑顔は明るい。
けれど、心春には少しだけ分かった。
この少年は――
いや、この人は。
今までずっと、大きな場所にいたのだ。
大公。
賢者。
帝国の知を支える存在。
そんな肩書きの中で。
だからこそ。
「……やっと、自分だけの場所ができるね。」
心春が小さく呟いた。
「はい?」
「なんでもない。」
真弥は空になった本棚を見つめた。
「……本棚。」
「うん。」
「まずはここを情報庫にしましょう。」
「情報庫?」
「はい!」
真弥は楽しそうに指を折る。
「日本の歴史。」
「学校制度。」
「法律。」
「文化。」
「言語。」
「科学技術。」
「全部集めます!」
心春は苦笑した。
「図書室全部持ってくる気?」
「いえ。」
真弥は真面目な顔で答える。
「足りません。」
「え?」
「図書室だけでは足りません。」
「全国の図書館も巡ります!」
「規模が大きいよ!?」
真弥はメモ帳を取り出す。
『現代日本情報収集計画』
「第一段階、学校図書館。」
「第二段階、市立図書館。」
「第三段階、大学図書館。」
「第四段階――」
「ちょっと待ってっ!」
――
次に整えたのは、生活スペースだった。
小さなキッチン。
小型冷蔵庫。
電子レンジ。
コンロ。
流し台。
食器棚。
真弥は目を輝かせる。
「……!」
「どうしたの?」
「これは……!」
真弥は電子レンジをじっと見る。
「火を使わずに温度を制御している……?」
「え?」
「家庭用の小型熱操作装置……」
「魔法じゃないよ?」
「……」
真弥は静かに驚いた。
「この世界、人間の技術だけでここまで……。」
「すごいです。」
心春は笑う。
「普通に使ってるけどね。」
「普通……。」
真弥はその言葉を小さく繰り返した。
――
次に、研究スペース。
大型黒板。
本棚。
実験机。
真弥が一番生き生きする場所だった。
「ここには現代日本の研究資料を。」
「こちらには魔法理論を。」
「そしてこちらには――」
心春が覗き込む。
「何?」
「未知の情報を書く場所です!」
「……真弥くんらしいね。」
――
そして。
「これは?」
心春が案内した部屋の隅。
そこには、大きなクッション。
柔らかな毛布。
猫型の小物。
真弥は首を傾げた。
「……?」
「えっと……。」
心春は少し照れながら言う。
「猫スペース。」
「猫スペース?」
「うん。」
「真弥くん、猫耳あるから。」
「……」
「その……落ち着ける場所があった方がいいかなって。」
真弥は黙った。
いつものように冗談を言うでもなく。
いつものように笑うでもなく。
ただ、その場所を見る。
「……心春さん。」
「なに?」
「どうして、これを?」
心春は少し考えて答える。
「だって。」
「真弥くんって、ずっとすごい人だったんでしょ?」
「大公とか。」
「半神とか。」
「賢者とか。」
「でも。」
心春は真弥を見る。
「今ここにいる真弥くんは……休める場所が必要かなって。」
真弥は少しだけ柔らかい笑顔になる。
真弥は猫スペースのクッションに座る。
「……」
「……」
「これは。」
「かなり良いですね。」
心春は笑った。
「気に入ったんだ。」
「はい。」
真弥は少しだけ幸せそうに目を細める。
「ここは……大切にします。」
こうして。
異世界の大公様の新しい拠点に。
小さな猫スペースが完成した。
――
「明日からは学校ですっ‼」
「さて…どんな発見があるでしょう‼」
心春は少しだけ苦笑した。
「……変なことだけはしないでね?」
「努力しますっ!」
真弥は満面の笑みで親指を立てる。
その返事に、心春は少しだけ嫌な予感がした。
――翌日、その予感は、入学初日のホームルームで現実になる。




