第2話 異世界の猫耳メイド、現代日本で保護される
書く手が止まらずつい午前中に二個も…えっ?2個?普段は超更新遅いと思います。
夜の旧校舎。
誰も使わない理科室。
そこには、黒板に謎の文字が書かれていた。
「……」
野原心春は、改めてその光景を見る。
魔法陣。
異世界から来た少年…?。
そして――
「……」
銀髪の猫耳、メイド服。
どう見ても女の子にしか見えない男の娘。
「……夢じゃないんだよね?」
「はいっ!」
鈴野真弥は元気よく返事をした。
「夢ではありません!」
「すずは正真正銘、この世界に召喚された異世界人ですっ!」
「……」
心春は頭を抱える。
「情報量が多すぎる……」
「よく言われます!」
真弥は胸を張った。
「ちなみに、まだ追加情報がありますよ?」
「まだあるの!?」
「はい!」
真弥は指を一本立てる。
「すずは半人半神です!」
「大公家当主です!」
「帝国大学の創設者です!」
「皇帝直属です!」
「そして――」
少し間を置く。
「猫耳です!」
「最後だけ普通に受け入れられない情報なんだけど!?」
真弥は満足そうに頷いた。
「完璧な自己紹介ですっ!」
「全然完璧じゃないよっ……」
その時だった。
――ガラッ。
古い扉が開く。
「……あなたたち。」
二人が振り返る。
そこには、一人の女性が立っていた
眼鏡をかけた、落ち着いた雰囲気の女性。
「夜の旧校舎で何をしているの?」
心春の顔が青ざめる。
「し、司書さん……」
「野原さん?」
「これは、その……」
心春は言葉に詰まる。
異世界から召喚しました。
そんな説明をして信じてもらえるだろうか。
しかし――
「召喚されました!」
真弥が元気よく手を上げた。
「え?」
「異世界から来ました!」
「……」
沈黙。
数秒後。
司書は真弥を見る。
「あなたは……」
「はい!」
「何者なの?」
真弥は待ってましたと言わんばかりに笑った。
「帝国の情報庫とはこの私!」
「鈴野真弥参上っ!」
「猫耳メイドの男の娘!」
「ちなみに大公家ですっ☆」
「……」
司書は静かに眼鏡を直した。
「野原さん。」
「はい。」
「今日は疲れてみたいね?」
「違います!?」
心春は慌てて否定する。
「本当にいるんです!」
「異世界から来たんです!」
「魔法陣もあります!」
司書は魔法陣を見る。
黒板を見る。
真弥を見る。
そして――
「……」
「とりあえず。」
「保護しましょう。」
「判断が早い!?」
数十分後。
旧校舎の一室。
簡単な事情確認が行われていた。
「名前」
「鈴野真弥です!」
「年齢」
「秘密です!」
「秘密?」
「半人半神なので少し複雑です!」
「……」
司書はメモを書く。
「年齢不詳」
「違います!?」
真弥が慌てる。
「もっとこう、神秘的な感じでお願いします!」
「では、年齢不明」
「それも違います!」
心春は思わず笑ってしまう。
「ふふ……」
真弥が振り向く。
「心春さん?」
「あ、ごめん。」
「いや……」
心春は少し嬉しそうに言った。
「真弥くん、楽しそうだなって。」
「……」
真弥は一瞬止まった。
「……そう見えますか?」
「うん。」
「だって、ずっと笑ってるから。」
真弥は少し考える。
そして小さく笑った。
「そうですね。」
「たぶん……」
「今は楽しいです。」
しかし
問題は残っいた。
「それで。」
司書が言う。
「真弥くん。」
「はい?」
「住む場所は?」
「ありません!」
「即答しないで!?」
「お金は?」
「ありません!」
「家族は?」
「……」
真弥の笑顔が、一瞬だけ止まった。
ほんの少しだけ。
寂しそうだった。
「……今は、いません。」
部屋に静かな空気が流れる。
その空気を変えるように、真弥は懐から一枚のカードを取り出した。
「ですが!」
「身分証ならあります!」
心春が覗き込む。
「カード……?」
しかし、それは現代の免許証や学生証とは全く違っていた。
白銀色の金属。
細かな魔法文字。
中央には鈴野家の紋章。
そして――
《帝国大公位》
《帝国大学創設者》
《国家研究者認定》
《皇帝直属情報管理権限》
心春は目を丸くする。
「……え?」
司書も固まる。
「……」
「これは……」
真弥は首を傾げる。
「リオスでは普通の身分証ですよ?」
「普通じゃないと思う……」
心春が小さく呟く。
司書は慎重に見る。
「これは、本物なの?」
「はい!」
真弥は笑う。
「帝国最高級の身分証です!」
「……」
「でも、この世界では使えないのですね。」
その言葉だけ、少し寂しそうだった。
一人なのだ。
「……なら。」
司書が口を開く。
「しばらく学校で面倒を見るわ。」
「え?」
「旧校舎の空き部屋を使いなさい。」
「本当に?」
真弥が目を丸くする。
「ただし条件があります。」
「はい!」
「普通に生活すること。」
「……普通。」
真弥がその言葉を繰り返す。
「大公でもなく。」
「半神でもなく。」
「賢者でもなく。」
司書は頷く。
「ただの学生として。」
「……」
真弥は少しだけ目を細めた。
「はい。」
「頑張ります。」
翌朝。
真弥は初めて制服を着た。
鏡を見る。
銀色の髪。
猫耳。
見慣れない服。
「……」
少し首を傾げる。
「なんだか……変な感じ。」
真弥は鏡の中の自分を見る。
大公でもない。
半神でもない。
帝国の知を支える存在でもなく…
ただの――
「高校生、ですか。」
小さく笑う。
「……悪くないですね。」
その時
コンコン。
扉が鳴った。
「真弥くん?」
心春の声。
「準備できた?」
「はい!」
真弥はいつもの笑顔を浮かべる。
「帝国最高の知識を持つ天才が!」
「現代日本の学校へ!」
「いざ、登校ですっ!」
「……」
心春は少し呆れた顔をする。
「朝から元気だね……。」
「当然です!」
真弥は胸を張る。
「未知との遭遇ほど楽しいものはありませんから!」
そして。
異世界の大公様の、初めての学校生活が始まった。




