表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
十二年地下牢に捨てられた俺は《誓約簒奪》に目覚めた――王国を支えた裏切り者たちへ、死より長い贖罪を  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/60

欠けた護送徽章

水路は膝の高さまで冷水が流れていた。

 フィナの糸印は十歩ごとに残り、分岐では必ず青が出口側を示している。病んだ身体で何度ここを歩いたのか。リオルは考えず、先頭で足場を探した。

 やがて格子の向こうに灯りが見えた。剣を持つ大柄な男が一人、待っている。

 ノルが身構えるより先に、男は剣を床へ置いた。

「リオル・セヴランだな」

 名はガレス・ノイン。王都衛兵の外套を着ているが、胸の護送徽章は右上が欠けていた。

「十二年前、あなたと妹君をここへ運んだ」

 リオルの手が無意識に拳を作る。ガレスは逃げず、首元から欠けた金属片を取り出した。徽章の裏には、通常ない血印が刻まれている。

「護送命令の証人印だ。命令書には五人目の証人がいた。だが原本では、そいつの名だけ消された」

 フィナは四年前、薬を運ぶ少女を通じてガレスへ糸を渡した。それ以来、彼は処分日が決まるまで水路を見張っていたという。

「なぜ八年前に出さなかった」

 掠れた声で問うと、ガレスは頭を下げた。

「怖かった。家族を言い訳にした。妹君を助ける機会も失った」

 謝罪で年月は戻らない。だが嘘をつかず、自分の弱さを罪として口にしたことだけは分かった。

 リオルは徽章を受け取らなかった。

「持っていろ。公の場で、お前が出せ」

 ガレスは顔を上げ、初めてまっすぐ頷いた。

 背後の格子には新しい油が差されていた。四年間、使われるかも分からない出口を、彼は黙って手入れしていた。謝罪の価値は言葉ではなく、その時間で測るしかない。

(次話へ)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ