地下水路の地図
正面階段は鉄格子で封鎖され、上から三人分の足音が降りてきていた。
ノルは看守用の剣を握ったが、狭い階段で戦えば衰弱した囚人が巻き込まれる。リオルはエマの写した壁の数字を見た。日付にしては規則的すぎる。三、七、二、五。区切りごとに同じ数字が戻ってくる。
「活字箱の位置だ」とオルドが囁く。「フィナという娘は、地図を文字の並びに変えたんだ」
印刷工の符丁として数字を読むと、文章が現れた。
水、東、三十歩、下。
廊下の東端には便器から続く排水溝しかない。坑夫が石枠を叩き、音の違う一枚を見つけた。皆で持ち上げると、人ひとりが通れる縦穴が現れる。
湿った空気が吹き上がり、古い苔の匂いがした。
リオルは少年と生存者を先に降ろした。オルド、エマ、坑夫が続く。ノルは班長を下ろすべきか迷ったが、リオルは頷いた。
「こいつを連れていくんですか」
ようやく戻りかけた声で、リオルは一言だけ答えた。
「証人だ」
罪人だから殺すのではない。生かして、自分が何をしたのか語らせる。その原則を最初の一人から崩せば、最後まで都合のよい殺しへ変わってしまう。
全員が縦穴へ入った直後、鉄格子が開く音がした。
リオルは石枠を戻し、暗い水路へ降りる。壁には、七色の糸を束ねた小さな印が結ばれていた。
フィナはここまで来ていた。
糸束の下には爪で削った短い線が二本ある。戻れなかったという印ではない。先へ進めるという印だ。妹は自分の脱出路ではなく、後に残る者の道を作っていた。
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