閉ざされた六つの扉
廊下には六つの扉があった。
二つは空、一つには亡骸、残る三つに生存者がいた。元税吏の女、北方鉱山の坑夫、そして名を語れないほど衰弱した少年だった。
少年を見たノルが膝をつく。
「十五歳にもなっていない。どうして最下層に」
班長は顔を背けた。拘束紐を締められても、命令に従っただけだと繰り返す。
リオルは怒りのまま能力を使いかけ、手を止めた。契約原本も血印も確認していない。ここで力を振るえば、班長の罪と地下牢全体の罪を切り分けられなくなる。
元税吏のエマが、少年の首に下がる木札を読んだ。
「借財契約の連帯担保。父親が鉱山から逃げたため、子を収監したとあります」
「子どもを担保にする契約は無効です」
ノルが即座に答えた。王国法を知る者なら誰でも分かる違反だった。
リオルは木札へ触れる。文字は浮かんだが、契約の作成者名が削られている。権利を戻す相手も、署名も足りない。今は壊せない。
オルドが亡骸の衣服を裂き、担架代わりの布を作った。坑夫は立てない少年を背負う。エマは壁の数字を紙片へ写し始めた。
ただ逃げるだけの集まりが、いつの間にか役割を持って動いていた。
上階から鐘とは違う金属音が響く。交代時刻より早い。班長が戻らないことに気づかれたのだ。
リオルは六つの扉をすべて開け、鍵束を床へ置いた。
この場所へ戻される者が、二度と閉じ込められないように。
空の牢にも毛布と食器があった。最近まで誰かがいた痕跡だった。エマは食器の底に刻まれた三つの名前を写し、亡骸の者と合わせて名簿の最初の四人とした。
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