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十二年地下牢に捨てられた俺は《誓約簒奪》に目覚めた――王国を支えた裏切り者たちへ、死より長い贖罪を  作者: 竜太郎


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声のない取引

喉から出たのは、息の擦れる音だけだった。

 看守はそれを衰弱と受け取ったらしい。採血棒を引き、扉の錠へ鍵を差し込む。

「押さえろ。中で採る」

 二人が入ってくるなら、外へ出る機会も生まれる。だが足枷が外れたと知られれば、警報を鳴らされる。

 リオルは開いた鉄輪を足首へ重ね、毛布を膝まで引き上げた。扉が内側へ開く。先に入った若い看守は剣を抜き、年嵩の男が契約紙を持って近づいた。

 紙面に新しい文字が浮く。

《執行人は対象の生存を確認した場合、誓約院へ報告する義務を負う》

 彼らが恐れているのは囚人ではなく、報告義務だった。リオルは床の小石を拾い、若い看守の足元へ「報告」と書いた。続けて、年嵩の男を指す。

 若い看守の顔色が変わる。

「班長。生存報告は、まだ出していないんですか」

「黙れ。こいつは今日死ぬ」

「しかし誓約違反になります」

 二人の視線が外れた瞬間、リオルは年嵩の男の手首を掴んだ。契約紙へ触れた血印が熱を持つ。

《虚偽の死亡処理を確認。執行権を停止します》

 男の腰から鍵束が落ちた。

 反動でリオルの視界も白く染まる。妹の顔を思い出そうとして、髪の長さだけが抜け落ちていることに気づいた。

 能力は鎖だけを壊すのではない。使うたび、自分の中から何かを担保として奪う。

 それでも彼は鍵束を拾い、若い看守へ差し出した。

 殺す気はない。選べ、と目で告げた。

 若い看守の剣先が二人の間を行き来する。命令へ従えば楽だ。だが今選ばなければ、彼も偽りの契約へ自分の名を書き足すことになる。

(次話へ)

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