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薬房を離れる日
監視役が三人から七人へ増えた。
向かいの屋根、共同井戸、南市場へ続く角。青瓶薬房へ出入りした患者まで、帰路を尾行されている。
ここに留まれば、ミアの患者が尋問される。薬房を守るためには、拠点として使うことをやめなければならない。
リオルはその夜、全員へ移動を告げた。
ニコと衰弱者はミアの患者として別の施療所へ。オルドは印刷機のある工房へ。エマはクララの織物店へ身を寄せる。ノルは地下牢へ戻らず、ガレスの遠縁を名乗って衛兵宿舎近くへ移る。
集まっている方が安全に見えるが、一度包囲されれば証拠も証人も同時に失う。
班長だけはリオルとガレスが連れていく。記憶固定剤の受領印について聞くまでは、敵にも王国にも渡せない。
ミアは薬房を閉めなかった。
「ここは患者のための場所です。明日も開けます」
リオルたちが消えたあとも、青い瓶は軒先に残る。それが敵に対する最も静かな拒絶だった。
床下の寝台を片づけると、フィナが八年前に残した小さな薬匙が見つかった。ミアは捨てずに保管していた。
リオルは受け取らず、薬房へ置いた。
思い出の品まで持ち去れば、ここで生きた妹の時間を自分だけのものにしてしまう気がした。
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