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十二年地下牢に捨てられた俺は《誓約簒奪》に目覚めた――王国を支えた裏切り者たちへ、死より長い贖罪を  作者: 竜太郎


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32/72

奪わずに写す

大型馬車は日没まで街道を進み、関所前の宿へ入った。

 原簿を奪えば、翌朝には紛失が知られる。敵はニコの契約だけを別の場所へ移し、残る子どもたちの名も消すだろう。

 リオルとロッカは、荷役人が食堂へ入るまで待った。

 荷台の底板を外す鍵はない。だがロッカは九本の指で細い金具を操り、錠を壊さず開けた。

 中には児童担保原簿と、白蝋で封じた契約束が二十七冊あった。

 リオルはニコの頁を探し、署名と血印を確認する。父親の死亡日は借財契約より二か月前。死亡者が後から契約へ署名したことになっていた。

 能力を使う条件は揃った。だがここで権利を戻せば、原簿の魔力痕から侵入が露見する。

 オルドから借りた薄紙を頁へ重ね、炭で文字と血印の形を写す。ロッカは他の子ども二十六人分も写すべきだと言った。

「一人だけ消えれば、残りが埋め合わせに使われる」

 二人は夜半まで、全頁を写した。

 奪ったものはない。錠も封蝋も元どおりに戻す。だが敵だけが持っていた名前と数字は、もう二人の記憶と紙の上にも存在する。

 馬車は何も失わないまま、独占していた秘密を失った。

(次話へ)

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