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三角形の染み
盗まれた写しと同じ誤記が、翌日の地下施設閉鎖命令に現れた。
共同井戸へ隠した版だけ、給餌費の合計を一銅貨少なくしてある。王都掲示板に貼られた命令書も、同じ数字を根拠に予算不正を説明していた。
漏れた経路はガレスの詰所でも青瓶薬房でもない。共同井戸の隠し場所を見た者に限られる。
ノルは疑いを向けられる前に、自分の行動を紙へ書いた。エマもオルドも同じように時刻を提出する。互いを責める声は出なかった。
リオルは閉鎖命令の原紙を灯りへ透かした。数字のほか、王印の横に薄い三角形の染みがある。
「幼い国王の母君が使った符丁です」
ガレスが記憶をたどった。先王妃は、強制された書類へ小さな三角を残したという。
少年王は敵ではない。命令の署名者でありながら、内容を知らされていない可能性が高い。
リオルは王の名を復讐対象から明確に外した。十四歳の子どもを、摂政の盾として罪人に数えることはしない。
一方、共同井戸を使う者の中に、毎朝水汲みへ来る地下牢の清掃人がいた。帳簿の隠し場所を偶然見たのなら、本人も監視されているかもしれない。
捕らえるより先に、守って話を聞く必要があった。
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