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十二年地下牢に捨てられた俺は《誓約簒奪》に目覚めた――王国を支えた裏切り者たちへ、死より長い贖罪を  作者: 竜太郎


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三角形の染み

盗まれた写しと同じ誤記が、翌日の地下施設閉鎖命令に現れた。

 共同井戸へ隠した版だけ、給餌費の合計を一銅貨少なくしてある。王都掲示板に貼られた命令書も、同じ数字を根拠に予算不正を説明していた。

 漏れた経路はガレスの詰所でも青瓶薬房でもない。共同井戸の隠し場所を見た者に限られる。

 ノルは疑いを向けられる前に、自分の行動を紙へ書いた。エマもオルドも同じように時刻を提出する。互いを責める声は出なかった。

 リオルは閉鎖命令の原紙を灯りへ透かした。数字のほか、王印の横に薄い三角形の染みがある。

「幼い国王の母君が使った符丁です」

 ガレスが記憶をたどった。先王妃は、強制された書類へ小さな三角を残したという。

 少年王は敵ではない。命令の署名者でありながら、内容を知らされていない可能性が高い。

 リオルは王の名を復讐対象から明確に外した。十四歳の子どもを、摂政の盾として罪人に数えることはしない。

 一方、共同井戸を使う者の中に、毎朝水汲みへ来る地下牢の清掃人がいた。帳簿の隠し場所を偶然見たのなら、本人も監視されているかもしれない。

 捕らえるより先に、守って話を聞く必要があった。

(次話へ)

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