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十二年地下牢に捨てられた俺は《誓約簒奪》に目覚めた――王国を支えた裏切り者たちへ、死より長い贖罪を  作者: 竜太郎


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見えない包囲

その夜、薬房の周囲から巡回兵が消えた。

 安全になったのではない。表通りの靴音がなくなった代わりに、裏路地の窓が三つ閉じたままになり、向かいの屋根に新しい煙突掃除人が座っている。

「監視へ切り替えましたね」

 ノルが小窓の隙間から確認した。

 敵は薬房へ踏み込まない。患者を巻き込めば騒ぎになり、死者扱いのリオルが見つかる危険もある。中から誰が出るかを見て、証拠の行き先だけを潰すつもりだ。

 ミアは普段どおり往診の籠を用意した。帳簿は入れず、本物の薬だけを詰める。

「監視されても患者は待てません」

 止めれば薬房の信用と日常が壊れる。敵が望む混乱を、自分たちで作る必要はない。

 リオルは床下の六人を二組に分けた。動けない者は残し、オルドとエマは診療助手に変装する。班長は外へ出さない。

 陽動ではなく、全て本物の仕事として動く。薬を届け、患者を診て、その途中で死者名簿の姓と家族を尋ねる。

 復讐のためだけに王都を止めれば、無関係な民が代価を払う。

 包囲の中でもパン屋は火を入れ、井戸番は水を汲み、薬師は往診へ出る。その流れへ紛れることが、今のリオルたちの盾だった。

(次話へ)

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