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三部の帳簿
地下牢から持ち出した帳簿の写しは、夜のうちにさらに三部へ増やされた。
オルドは薬房の物置から古い手押し印刷機を見つけ、歪んだ活字を一字ずつ組む。早く刷れば誤字が出るため、エマが原本を読み、ノルが数字を照合した。
一部は青瓶薬房、一部はガレスの衛兵詰所、最後の一部は貧民街の共同井戸の石蓋へ隠す。
「なぜ公表しない」
拘束された班長が初めて自分から口を開いた。
「これだけあれば、誓約院を告発できるだろう」
リオルは写しの端を示した。帳簿には支出印があるだけで、最終受取人の署名がない。今出せば誓約院は下級役人一人の横領として処理し、原本を合法的に廃棄する。
必要なのは怒りを集めることではない。切り離せない証拠の鎖を作ることだ。
班長は視線を落とした。自分が助かるために上役の名を売りたいのだろう。それでも証言が事実なら使える。
「地下の命令は誰から届いた」
「名は知らない。白い蝋の封書を、毎月同じ荷運び人が持ってきた」
男の特徴を聞くと、左手の小指がないという。
エマが薬房の盗難記録を開いた。消えた薬を受け取った者の欄にも、左小指の欠損を示す印が残っていた。
次に追うべき人間が、ようやく輪郭を持った。
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