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十二年地下牢に捨てられた俺は《誓約簒奪》に目覚めた――王国を支えた裏切り者たちへ、死より長い贖罪を  作者: 竜太郎


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三部の帳簿

地下牢から持ち出した帳簿の写しは、夜のうちにさらに三部へ増やされた。

 オルドは薬房の物置から古い手押し印刷機を見つけ、歪んだ活字を一字ずつ組む。早く刷れば誤字が出るため、エマが原本を読み、ノルが数字を照合した。

 一部は青瓶薬房、一部はガレスの衛兵詰所、最後の一部は貧民街の共同井戸の石蓋へ隠す。

「なぜ公表しない」

 拘束された班長が初めて自分から口を開いた。

「これだけあれば、誓約院を告発できるだろう」

 リオルは写しの端を示した。帳簿には支出印があるだけで、最終受取人の署名がない。今出せば誓約院は下級役人一人の横領として処理し、原本を合法的に廃棄する。

 必要なのは怒りを集めることではない。切り離せない証拠の鎖を作ることだ。

 班長は視線を落とした。自分が助かるために上役の名を売りたいのだろう。それでも証言が事実なら使える。

「地下の命令は誰から届いた」

「名は知らない。白い蝋の封書を、毎月同じ荷運び人が持ってきた」

 男の特徴を聞くと、左手の小指がないという。

 エマが薬房の盗難記録を開いた。消えた薬を受け取った者の欄にも、左小指の欠損を示す印が残っていた。

 次に追うべき人間が、ようやく輪郭を持った。

(次話へ)

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