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十二年地下牢に捨てられた俺は《誓約簒奪》に目覚めた――王国を支えた裏切り者たちへ、死より長い贖罪を  作者: 竜太郎


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青瓶薬房

店の扉には《青瓶薬房・夜明け前も診療》と手書きの札が下がっていた。

 ガレスが三度、間を置いて二度叩く。内側の閂が外れ、短い黒髪の女が顔を出した。薬師の白衣は袖をまくり、指先に乾いた薬草の色が染みている。

「急患は何人――」

 女の視線がリオルで止まった。

「リオル、様?」

 ミア・テルゼ。かつて地下牢へ薬包を運んでいた少女は、二十四歳になっていた。リオルが覚えているのは、重い薬箱を両腕で抱え、看守へ怯えながらもフィナへ水を多めに渡した姿だ。

 再会の言葉を交わす前に、ミアは少年の呼吸を確かめた。

「奥へ。話は治療しながら聞きます」

 店の床下には、貧民街の患者を泊める六床の小部屋があった。坑夫とエマもそこで診察を受ける。ミアは誰が囚人で誰が看守かを問わず、まず湯と薄い薬粥を配った。

 班長だけは入口近くへ座らせ、ガレスが見張る。

 少年の木札を見た瞬間、ミアの顔が固まった。

「この契約番号、うちから盗まれた薬の搬送票と同じです」

 地下牢の給餌費、北方鉱山、そして薬房から消えた荷。別々に見えた数字が一本の線へ近づく。

 リオルは白い蝋の包みを卓上へ置いた。

 ミアはそれを見ず、先に少年の冷えた手を温めた。

「証拠は逃げません。人は、今助けないと消えます」

 その順番を、リオルは忘れないよう胸へ刻んだ。

(次話へ)

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