灰色の夜明け
地上へ出たリオルたちを迎えたのは、朝焼けではなく煤を含んだ霧だった。
地下牢の荷捨て場は王都南端の染色工房街にあり、早番の職人たちが排水路へ湯を流している。誰も、汚れた一団へ長く視線を留めなかった。王都では貧しさも傷も、見慣れた景色の一部だった。
ガレスが用意した荷車へ少年と衰弱者を乗せる。班長は縄を解かず、染料樽の陰へ座らせた。
「城門はもう閉じられています。脱走者の人相書きも昼までには回るでしょう」
ノルの声に、リオルは首を振った。十二年前の自分と今の姿は違う。問題は顔ではなく、同行者の数と地下牢の制服だった。
オルドが看守服を裏返し、煤を擦りつける。エマは帳簿の写しを三か所へ分け直した。逃げる者の集団ではなく、病人を運ぶ染色工房の職人に見せるためだ。
霧の向こうで、王都の鐘が十二回鳴る。十三回目はなかった。
リオルは七色の糸を袖へ隠し、石畳を踏んだ。十二年ぶりの王都は高い塔を増やしていたが、排水溝の臭いは変わっていない。
最初に必要なのは武器でも復讐相手の居場所でもない。少年の治療と、安全に記録を広げられる場所だった。
ガレスが指した先に、青い薬瓶を吊るした小さな店が見えた。
「ここなら、フィナ様を知る者がいます」
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