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GGTR;私の死体の中に、他人の明日が息づいている  作者: 阿川佳代志
奇妙な出来事の始まり、偉大な科学者の始まり
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1;3... - !再びの衝突!

東京イノベーションタワーは、未来を詰め込んだ巨大なガラスの蜂の巣のように、お台場の空へと聳え立っていた。冬の陽射しを受けてきらめく青いミラーガラスと鋼鉄の五十階。ファサードの巨大スクリーンは、為替レート、天気予報、それに飼い主の感情を認識する機能つきロボット掃除機のCMを流しつづけている。エントランスには人が溢れていた。カンファレンスへ急ぐ者、一階に軒を連ねるテクノロジーブランドの旗艦店のショーウィンドウをただ眺める者。


記憶は入り口で立ち止まり、顎を上げた。


「五十階だ」彼はかすかな軽蔑をこめて言った。「そしてその半分は、プレゼンをより良くする方法についてのプレゼンを作る人間で埋まっているに違いない」


「自分の地下室より建物が高いからって、妬んでるでしょ」洋子が言う。


「俺の地下室はより深い。深さは高さより重要だ。これはメタファーだ」


「何のメタファー?」


「知らん。だが壮大に響いただろ」


二人が中へ足を踏み入れると、洋子はたちまち息を呑んだ。


一階のホールはSF映画の展示会場さながらだった。透明なエレベーターが青く照らし出されながら壁面を上下に滑っていく。あちこちに最新機器のスタンドが並んでいた。掌サイズのドローン、拡張現実ゴーグル、四十ヶ国語で会話できるコンパニオンロボット。左手には巨大なエレクトロニクスショップ、右手には睡眠用カプセルを備えたコワーキングスペース。そして中央には、ホログラフィックの巨大な地球儀が床の上でゆっくりと回転していた。


「すごい」洋子は一瞬すべてを忘れて息を漏らした。「未来みたい」


「未来の広告みたい、だな」記憶は訂正した。「本物の未来はもっと違う。光沢は少なく、配線は多い。そして、はんだの匂いがする」


しかし洋子はもう聞いていなかった。彼女は店舗のひとつのショーウィンドウに何かを見つけ、子供がアイスクリームを見つけたときだけが発揮できる速度で、そちらへ駆け出していた。


「記憶くん! 見て!」


そこはコレクタブルトイの売り場だった。ただし、普通ではない。技術の粋を集めたものだ。ミニチュアのロボットアニマルたちが、スポットライトに照らされて棚に並んでいる。尻尾を振るロボキャット。手の接近に反応するロボドッグ。鼻孔に小型の煙霧装置を仕込んだロボドラゴン。けれど洋子が見つめているのは別のものだった。


一番上の棚、独立したガラスケースの中に、コレクターズアイテムのハイテクテディベアが鎮座していた。シルバー、ブロンズ、プラチナ、それぞれ異なる機能を持つシリーズ。歌うもの、おとぎ話を語るもの、天井に星空を投影するもの。しかし中央、ビロードのクッションの上に眠っていたのは、それだ。


金色のクマ。


その毛並みは、静止しているときでさえ輝いて見えた。本物の金糸刺繍を模したナノパイル。極小サファイアダイオードでできた両目が柔らかく発光している。プレートにはこう記されていた。〈Golden Memory Bear. 限定シリーズ。百体のみ製造。機能:音声メッセージの記憶および再生。搭載AIは所有者の声に適応し、簡単な会話が可能です〉。


値段は書かれていない。天文学的であることを意味していた。


「ああ」洋子は鼻をガラスにくっつけながらため息をついた。「ああ、記憶くん。見て、これ。もう……完璧だ」


記憶は隣に立ち、腕を組んだ。クマを見る。洋子を見る。もう一度クマを見る。


「野心を抱いた、ただのテディベアに見えるが」


「AIが声に適応するんだよ!」洋子は視線を外さずに反論した。「言ったことを全部、覚えてくれるんだ。わかる? 自分の秘密をぜんぶ吹き込めるんだよ。永遠にね」


「永遠っていうのは、最初のファームウェアのバグまでだ」


「ほんと、手がつけられない」洋子はようやくガラスから顔を離し、ため息をついた。「こんなの、何もかも捧げてもいいよ。うん、ほとんど何もかも」


記憶は彼女を見つめた。施設育ちで、両親が離婚し、昨日は共通の友人を泣かせるまで追い詰めた風変わりな天才の友人を持ちながら、それでもまだ奇跡を信じている十七歳の女子高生。彼女だけは、彼を狂人呼ばわりしなかった。彼女だけが「ヨシ! ヨシ!」と言い、餅を持ってきて、彼の荒唐無稽な独白を書き取り、「なぜそんなことを」ではなく「次は何を」と尋ねた。


突然、胸の奥が温かくなるのを感じた。普段は皮肉とエナジードリンクの缶で黙らせている、何か。


「なあ」彼は言った。声はいつもより少しだけ芝居がかっていなかった。「いつか俺が世界を変えるものを作る。たくさん金を稼ぐ。そしたらお前の欲しいものを何でも買ってやる。この金色のクマでも、こんなクマ十体でも。金色のクマの軍隊でもいい、お前に合唱を歌わせてやる」


洋子は彼に向き直った。青い瞳が大きく見開かれ、それからあの、暖かくて少し照れたような笑みに細められる。


「ほんと? 本気で言ってる?」


「俺はマッドサイエンティストだ。変な約束をするときは、いつだって本気だ」


「ヨシ! ヨシ!」彼女は跳びはねて手を叩いた。「じゃあ約束だよ! 証人はいるからね、あのショーウィンドウ。それからあのカメラ。それからロボキャット」


「ロボキャットは認められない。目がガラス玉だ、明らかに信用できない証人だ」


「ヨシ! ヨシ!」


「ヨシ、ヨシ」記憶は微笑んだ。本当の笑みだ。天才の嘲笑でも、皮肉な顔でもない。普通の、人間らしい笑顔で、そのせいで彼の顔は突然十歳は若く見えた。


二人は通路をさらに進んだ。エレベーターが人々を上へと運び、アナウンスが何らかのプレゼンテーションの開始を告げ、二階のカフェから焼きたてのペストリーの匂いが漂ってくる。


「さて」洋子は記憶に追いつき、歩調を合わせた。身長差があるため、それには努力が必要だった。「作戦があるの」


「君にはいつも作戦がある。たいてい甘いもの絡みだ」


「今回のはパーティー。三人だけの。研究室で」


記憶は足をもつれさせた。


「何?」


「パーティー!」彼女は嬉しそうにうなずいた。「記憶くん、私、静羽。土曜日。私がお菓子と飲み物と音楽を持ってく。地下室を飾りつけて。楽しく、友達みたいに。そうすれば記憶くんも彼女と仲直りできるよ」


「洋子……」


「それと、研究室はパーティーをする場所じゃないなんて言わないで。記憶くん、あそこに住んでるじゃない。住んでるなら、あそこは記憶くんの家だよ。家ならパーティーをしていいんだよ」


「研究室は実験をする場所だ。危険だ。剥き出しの配線がある。あちこち爆発したり感電したりするもので溢れてる」


「記憶くんと同じだ」洋子はやり返した。「記憶くんだって爆発するし、感電もするよ。でも私は友達でいるじゃない」


「それは全然違う……」


「全然違わない!」彼女は足を速めて彼を追い越した。「土曜日。七時。もう決めたから。来なかったら怒るからね。私が怒ったら、誰がエナジードリンクを買って、誰が天才の考え事を書き取るの?」


記憶は反論しようとしたが、できなかった。なぜならまさにその瞬間、口論に夢中になっていた彼は、角を曲がってきた人影に気づかなかったからだ。


衝突は激しかった。


彼が肩をぶつけたのは、長く鮮やかなピンクの髪の女性だった。彼女はよろめき、腕に抱えていた書類が白い鳥のように床へ舞い散り、彼女自身も、厚底の高いブーツでバランスを失い、鈍い音を立てて床に倒れ込んだ。


「くそっ!」記憶もかろうじて踏みとどまった。「すまない! 私は……」


女性が顔を上げた。鮮烈なピンクの瞳、長いストレートの髪、首には黒いチョーカー、髪には黒とピンクの大きな花の飾り。アシンメトリーのトップスにミニスカート、ハイブーツ。現実と喧嘩しようと決めたファッション誌から抜け出してきたイラストそのものだった。


そして彼女は、激怒していた。


「目が見えないの!?」彼女の声は予想以上に大きく響いた。通路にいた数人が振り返る。「ここはあなたたちの祝賀会の打ち合わせをする場所じゃないの! 建物を間違えたなら、出て行って! ここはカンファレンス会場よ。学生と女子高生の遊園地じゃないの!」


記憶は硬直した。恐怖ではない。驚愕だ。こんな風に話しかけられたのは、もうずいぶん長いことなかった。洋子はいつも穏やかで、夢月は無口で、綾音は酔っていて気さくで、蓮は嘲笑好きだが悪意はなかった。しかしこの見知らぬ女は、たった一瞬で、飲み物が冷やせるほどの冷たさを言葉に詰め込んでみせた。


彼は背筋を伸ばし、残った尊厳をかき集めようとした。


「申し訳ない、私はこれでも尊敬されるマッドサイエンティストで……」


「あんたが誰かなんて、どうでもいいの」彼女は最後まで聞かずに遮った。「要は、足を引っ張らず、邪魔をしないこと。わかった?」


彼女は自分で立ち上がった。彼の手助けは受けず、そもそも彼はそれを申し出る暇もなかった。素早く鋭い動作で床から書類を拾い集める。皺になっていないか確かめる素振りさえない。おそらく、中身のほうが形より重要だったのだろう。


そしてそのまま通路を進んでいった。


黒い厚底ブーツが歩調を刻む。ピンクの髪がリズムに合わせて揺れる。振り返る視線は一度もない。今しがた言葉で打ちのめした相手への関心は、一片もなかった。


記憶は立ち尽くし、その背中を見送った。


洋子がそっと近づき、隣に並んだ。


「記憶くん」彼女はささやいた。「今の人、誰?」


「わからん」彼は同じくささやきで返した。「だが、どうやら俺が月曜の朝を嫌うより激しく俺を嫌っている人間に、たった今遭遇したようだ」


「嫌ってたわけじゃないよ。ただ……」洋子は口ごもった。「……見えなかったんだよ」


「そっちのほうがタチが悪い」


「うん。そっちのほうがタチが悪いね」


二人は数秒、沈黙のまま立ち尽くした。それから洋子が彼の着物の袖を引っ張った。


「行こう。私たち、発表があるんだよ。それに、今の人も同じ場所に行くんだと思う。ほぼ確信してる」

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