2;3... - !ヨシパーティー!!
朝は目覚まし時計で始まったわけではなかった。地下室の小窓から差し込む一筋の陽光でもなかった。洋子の声ですらなかった。
朝は、誰かがしつこく研究室のドアを叩く音で始まった。そのノックは地下室全体に響き渡り、まるで一人の人間ではなく、最低でも救助隊の分隊が来客として押しかけてきたかのようだった。
記憶はペンギンのブランケットに絡まりながらソファから転げ落ちた。目をしばたたく。モニターの時計は午前十時を指していた。彼にとってはまだ真夜中だ。
「開いてる!」彼は叫んだ。片手で簪を手探りし、もう片方の手で、一晩で形のない緑の繭と化した浴衣の衿を引っ張りながら。
ドアが勢いよく開いた。玄関先に立っていたのは洋子で、無数の袋を提げた姿は、さながら玩具を吊るしたクリスマスツリーのようだった。片手には食料品の入った紙袋が二つ、もう片方の手には例のイルミネーション、それにターコイズブルーのリボンで結ばれた、もうひとつの箱。
「ヨシ! ヨシ! おはよう、眠れる天才!」彼女は歌うように言った。「ちょっとだけ持ってきたよ。うん、ちょっと多めかも。でもパーティーにはたくさん要るでしょ!」
記憶は目をこすり、紙袋の山を見渡した。
「日本全軍に食料を補給する計画か、それともこの地区だけで済ます気か?」
「全部完璧にするのが私の計画なの」洋子は誇らしげに中へ進み入ると、テーブルの上に中身を広げ始めた。「それじゃ、ポテチ三種類。お餅四種類、抹茶味もあるよ、記憶くんこれ好きでしょ。クッキー。チョコレート。コーラ——瓶のやつ、記憶くん好みの。私の分もね。それから、これは静羽のためのジュース。コーラは甘すぎるから飲まないんだって。それから……」
「待て」記憶は手を上げた。「これを全部、街中から運んできたのか? 一人で?」
「そうだよ。何が変?」
「お前、この袋より軽いだろ」
「鍛えてるからね」洋子はウインクした。「私の働いてるカフェ、食器の箱を運ばなきゃいけないんだ。これくらい平気。さあ、片づけよう」
記憶は研究室を見回した。床に這う配線。テーブルの一センチの隙間もなく広がる図面。窓辺に置き忘れられたはんだごて。中央に黙した偶像のように立つ装置。
「やろう」彼は熱意の欠片もなく同意した。
それからの三十分、彼らは片づけに費やした。洋子は将軍のように指揮した。「この配線、片づけて! その書類は重ねて! それはそもそも何? 動いてるの?!」記憶は従い、ぶつぶつ言いながらも、従った。少しずつ研究室は変貌していった。配線は丸められて箱にしまわれた。図面はきれいに重ねられた。危険な装置は厚手の布で覆われた。洋子が持ってきたイルミネーションは柔らかで温かな光で、それをソファの上に吊るすと、地下室は突然、狂人の隠れ家ではなく、居心地のいい巣穴のように見え始めた。
「はい、できた」洋子は一歩下がり、結果を眺めて満足した。「まるで別の場所みたい。これなら人を呼んでも、感電する心配がないね」
「感電するのは装置を触る奴だけだ」記憶は指摘した。
「配線を片づけるって約束したのは誰?」
「片づけた」
「全部じゃない」
「一番危ないやつは片づけた。残りは、ちょっと危ないだけだ。雰囲気のために」
洋子は目を丸くしたが、微笑んだ。彼女はひとつの袋から自分のプレゼントを取り出した。あのターコイズブルーのリボンの箱だ。すでに軽食の皿が美しく並べられたテーブルの端に、それを置いた。
「それは何だ?」記憶は尋ねた。
「静羽へのサプライズ。彼女が来たら開けるの」
「彼女にまでプレゼントを持ってきたのか?」
「当然でしょ。パーティーにはいつもプレゼントを持ってくるものだよ。これは法律です」
「そんな法律、知らなかった」
「記憶くんは普通の生活のこと、ぜんぜん知らないんだから。だから私が教えてあげてるんじゃない」
ドアが静かにノックされた。あまりに静かで、聞き逃してしまいそうなほどに。しかし洋子は聞き逃さなかった。彼女はいつも、友達に関わることは決して聞き逃さなかった。彼女はドアに飛んでいき、勢いよく開けた。
玄関先に立っていたのは、夢月静羽。
乱れたダークヘアは二つの無造作な三つ編みに。長い前髪が目に掛かっている。白いシャツの上にグレーのセーター、長い黒のカーディガン、明るいチェックのパンツ。そして変わらぬペンダント——長い鎖のついた懐中時計。今や、あの罅割れのことを知っている記憶は、どうしてもそれを見ずにはいられなかった。罅割れはそこにあった——髪の毛のように細く、ローマ数字の「IV」から放射状に広がっている。
「静羽!」洋子はぱっと両手を打った。「入って! ちょうど片づけが終わったところ。ていうか、記憶くんが終わらせて、私が指揮したの」
静羽は中へ足を踏み入れた。明るい、灰色がかった銀色の瞳が研究室を見渡す。イルミネーション、軽食の皿、きれいなブランケットを掛けたソファ。彼女は何も言わなかったが、口元がかすかに動いた。記憶はもうそれを見分けられるようになっていた。それが彼女の微笑み方だ。
彼女はスマートフォンを取り出し、打ち込んだ。
『きれい。いつもの散らかり放題じゃない』
「どうも」記憶はわざとらしく傷ついた顔をした。「散らかり放題じゃなくて、創造的な散らかり、だ」
『創造的な散らかり放題』と静羽は訂正し、カーディガンを注意深く直しながらソファの端に座った。
パーティーが始まった。
洋子はコーラを注ぎ、餅を並べ、休みなくしゃべり続けた。学校の話をした。厳しい数学の先生が授業中に居眠りしてしまい、クラス全員が起こす勇気がなくて三十分も静寂が続いた話。自分が働いているカフェの話。毎週火曜日に来て、いつも同じものを注文するのに、決してお互いに口をきかず、ただスマホだけを見つめている変なカップルの話。
「でね、私、思うんだ。喧嘩してるのかな? それとも逆に、これがあの人たちの儀式なのかなって。一緒に座って、でも話さない。それがあの人たちにとっては心地いいのかも」
「あるいは、単に結婚して十年なんだろ」記憶は抹茶の餅をかじりながら推測した。
「皮肉屋」
「現実主義者だ」
「皮肉な現実主義者。最低の組み合わせだね」洋子は彼にポテチの欠片を投げつけた。
静羽はソファに座って、彼らを観察していた。笑いはしなかったが、その瞳の中に、記憶が今まで気づかなかったものが浮かんでいた。温かさだ。言葉を求めない、この風変わりな二人のあいだに、自分がここにいることへの静かな喜び。
一時間後、コーラが三分の一ほど空き、ポテチが半分ほどになったところで、洋子が突然立ち上がった。
「たいへん、すぐにおばあちゃんに電話しなきゃ! 三時までにするって約束したの。ここに座ってて、すぐ戻るから!」
そして、誰かが反対する間もなく、彼女はドアの外へ滑り出ていった。
記憶はこのトリックを知っていた。祖母はもちろん実在するが、電話は口実だった。洋子はわざと彼らを二人きりにしたのだ。なぜなら、彼が謝らなければならないと知っていたから。
研究室に静寂が訪れた。
静羽はソファに座り、ジュースの入ったコップを両手で握りしめている。記憶はテーブルのそばに立ち、手のやり場に困っていた。沈黙が、古いゴムのように引き伸ばされる。どこかで冷蔵庫が静かにうなっている。
「あのさ」彼はついに口を開いた。
静羽が視線を上げる。
「謝らなきゃいけない」記憶は言葉を選びながら、ゆっくりと話した。「あの実験のことで。ちゃんと前もって言わなかったこと。君を泣くほど怖がらせたこと。それから、時計のこと」
彼は彼女のペンダントに目をやった。
「なぜあんなことになったのか、俺にもわからない。装置はあんなことを……するはずじゃなかった。でも、してしまった。そして君の時計に罅が入った。本当に、すまないと思ってる」
静羽は長いこと彼を見つめていた。それから視線を時計に落とした。罅割れを指でなぞる。
そして突然——静かに、ほとんど聞き取れないほどに——言った。
「平気」
記憶は固まった。
彼女は声に出して言ったのだ。スマホでも、画面の上でもなく。彼女の唇が動いた。彼女の声が——ページをめくるようなかすかな音が——研究室に響いた。
「平気だよ」彼女は付け加え、その一言一言が、彼女にとって努力のいることだった。
ドアが勢いよく開いた。
「わあい!」洋子が飛び込んできた。明らかに、祖母には電話などしていない。「わあい! 喋った! 私だけじゃなくて、記憶くんにも喋った! わあい! わあい! わあい!」
彼女は静羽に飛びつき、抱きしめ、危うくジュースのコップをひっくり返しそうになった。
「もう、いいよ……」静羽はささやき、その目に再び涙が浮かんだ——しかし今回は恐怖の涙ではなく、まったく別の何かだった。
記憶は立ったまま、彼女たちを見つめていた。友達を抱きしめる洋子。彼の前で、初めての言葉を発した静羽。そしてこの瞬間、彼は、とても長いこと感じたことのない何かを感じていた。もしかしたら——今まで一度も。
自分が必要とされているということ。この二人の少女——ターコイズブルーのメッシュを入れた風変わりな女子高生と、罅割れた時計を持つ無口な画家——が、自分の家族になったのだということを。血の繋がりではなく、もっとずっと大切な何かで。
「静羽」洋子がようやく友達を抱擁から解放したとき、彼は静かに言った。「その時計は、そもそも何なんだ? どこで手に入れたんだ?」
静羽は動きを止めた。彼女は視線をペンダントに落とした。罅割れたガラスを指でなぞる。
「この時計は」彼女はかろうじて聞こえる声で言った。「兄がくれたの」
「兄?」記憶は聞き返した。「君に兄がいるのか?」
「三年前に失踪したんだ」洋子が静かに締めくくった。彼女は明らかに、すでにこの話を知っていた。
「失踪?」記憶はテーブルの端に腰掛けた。「どうやって?」
静羽は時計を見つめていた。彼女の肩がかすかに震えている。
「兄は、ハイキングに行ってたの」彼女の声は、窓の外の風のように静かだった。「山へ。グループで。夜、森の中でテントを張って泊まったの。それで朝には……」
彼女は黙り込んだ。唾を飲み込む。
「朝には、兄はもういなかった。ただ消えたの。痕跡も、持ち物もなく。ただこの時計だけが、テントの中に残されてた。まるで、わざと置いていったみたいに」
彼女は続けようとしたが、声が途切れた。彼女は両手で顔を覆った。
「夢月さん?」洋子が彼女の肩に触れた。
静羽は声では答えなかった。代わりに、スマートフォンを取り出し、震える指で打ち込んだ。
『ごめんなさい。お話しするのに疲れちゃった。一日にしては言葉が多すぎたみたい』
記憶はメッセージを読んだ。それから静羽を見た。覆われた彼女の顔を、震える肩を、罅割れのある時計を。そして、柔らかく微笑んだ。
「ふっ」彼は静かに言った。「それでも、この何ヶ月分よりもたくさん喋ったよ。もう充分、記録ものだ」
洋子は静羽の隣のソファに腰を下ろし、彼女の手を取った。
「急いだりしないよ」彼女は言った。「好きなだけ黙ってていいんだよ。どっちにしても、私たちは静羽のことが大好きだもの」
静羽は声でもテキストでも答えなかった。しかし彼女の指が、慎重に、ほとんど気づかれないほどに、返事として洋子の手を握り返した。
記憶はテーブルの方へ向き直り、軽食の皿を直すふりをした。本当はただ、今この瞬間の自分の顔を、彼女たちに見せたくなかっただけだ。
「森で失踪した兄。実験中に罅割れた時計。声には出さないけれど、見せているよりも多くを覚えている少女」
彼は感じていた。この話は、単なる過去の悲しい事実ではない。それは他のすべてと繋がっている。虚偽記憶と。時間のサイクルと。彼ら全員に迫りつつある、あの何かと。
しかし今日は——少なくとも、今は——彼は新たな質問をしなかった。
今日はパーティーだったのだ。
「洋子、抹茶の餅を全部食ったのか?」彼は大声で尋ねた。
「これで最後だったの?!」洋子は目をまんまるにした。「ごめん!」
「夜に取っておいたのに!」
「みんなの分だと思ったんだもん!」
「みんなの分だ、でも俺はあともう一個くらい食いたかったんだ!」
「新しいの買ってくる!」
「いつだ? 明日は日曜だ、店は閉まってる!」
「なら月曜に!」
静羽が顔を上げた。その唇に——今日一日で初めて——かすかな、ほとんど見えないほどの微笑みが浮かんでいた。
そして彼女はスマートフォンに打ち込んだ。
『ふたりとも手がつけられないね。ヨシ』
「ヨシ」記憶と洋子は声をそろえ、それから同時に吹き出した。




