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余命宣告を乗り越えた幼馴染の愛が重い  作者: ミソネタ・ドザえもん
第十三章

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69.予想外

「うふふ。うふふふふ」


 奏は楽しそうに笑い出した。

 彼女に対して真摯な態度を示したことが、功を奏したみたいだ。


「それじゃあ、何をしてもらおっかな。何をしてもらおっかな」


 奏は電車のシートに座りながら、足をパタパタと前後させていた。

 その拍子に、彼女のワンピースのスカートがヒラヒラと舞った。

 少しだけ視線に困った。


「……か、奏。なんでもするけど、それはまた後にしよう」

「えー? 今すぐ、この場で、あっくんになんでもしてもらいたい」

「……そろそろ高垣さんとの待ち合わせ場所の最寄り駅だから」

「……」

「……」

「…………」

「…………」

「……綾香ちゃん。またあたしを邪魔するんだね」


 奏は瞳の光を消しながら、俺には聞こえない声で何かを呟いた。


「うふふ。じゃあ行こうか。あっくん」

「うん」

「綾香ちゃんが待ってるもんね。綾香ちゃんが待ってるんだから仕方がないよね。……うふふ」


 奏は薄く笑いながら、座席から立ち上がり、まもなく電車が駅に到着したため、電車を降りた。

 閑静な住宅街近くの駅周辺は、マンションやコンビニ等が立ち並んでいるものの、商業施設等はなく、見どころの多い駅とは呼べなさそうな雰囲気を醸し出していた。


「綾香ちゃん、食べ歩きが趣味らしいの」

「へー」

「で、この辺は個人経営の洒落たお店が多いんだって」


 なるほど。それは食べ歩きが趣味の人にはうってつけの地であろう。


 それにしても高垣さん、コスプレだったり食べ歩きだったり、結構多趣味な人だ。これで勉強も頑張っているのだから、寝る暇もなさそう。


「あっくん。今、綾香ちゃんのこと考えているでしょう?」

「え? うん」

「うふふ。そっか。あたしじゃなくて綾香ちゃんのことを考えているんだね」

「……え? うん」


 俺は頷いた。


「奏のことはいつも考えているしね」


 俺は苦笑しながら頭を掻いた。

 ……奏は。


「……うふふ」


 薄く微笑んだ。


「うふふふふ。あっくんったら、本当にあたしのこと好きすぎっ」


 何やら機嫌を取り戻したようだ。

 遠くからセミが鳴く中、俺達は住宅街の道路を歩いた。この辺はビルも少なく、陽の光を防ぐような遮蔽物がなく、日陰が一切ない。


 故に、汗が滝のように噴き出して辛い。


「奏、ジャケット暑くない?」

「え?」

「俺はTシャツ一枚で参っているから……」

「……うふふ」


 奏は微笑んだ。


「大丈夫。適温だよ」

「そう?」

「うん」

「……その割には、額が汗でいっぱいだよ」

「ひゃんっ!」


 俺はポケットからハンカチを出して、奏の額の汗を拭った。

 その拍子に奏から変な声が漏れた。

 ……今度からいきなり額の汗を拭うのはやめよう。


「無理しちゃ駄目だよ」

「……」

「……奏?」

「うふふ。あっくんが汗を拭いてくれるから、問題ないじゃない」


 そうなのか?

 ……。

 …………。


 まあ、そうなのか。


「あ、ここみたい」


 奏が手にしていたスマホのマップアプリを確認して、目の前にあるこじんまりとしたお店の前で立ち止まった。

 口振りから、どうやらここが高垣さんとの待ち合わせ場所らしい。


「じゃあ、さっさと入ろう」

「うん。クーラー効いているといいなー」


 ……やっぱり暑いんじゃないか。


「いらっしゃいませ」


 扉を開けると、クーラーの冷たい風と店員の声が俺達を出迎えた。


「二名様でしょうか?」

「あ、待ち合わせです」


 奏はそういって、店内をキョロキョロと見回した。


「あっ、綾香ちゃん!」


 そして、店内にいる高垣さんを見つけて、嬉しそうに手を振り、歩き出した。

 俺も奏に続いた。


「こんにちは」

「こんにちは。遅かったわね」

「うふふ。ごめんねぇ」

「……ま。いいけど」


 ……げ。


 ……てっきり今日の食事は、奏、俺、高垣さんの三人だけのものだと思ったが、どうやら違ったようだ。


「……門倉さんもこんにちは」

「うん。こんにちは。奏ちゃん」


 門倉さんは優しい微笑みを浮かべていた。

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