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余命宣告を乗り越えた幼馴染の愛が重い  作者: ミソネタ・ドザえもん
第十三章

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68.時短の天才

「奏、そろそろ機嫌を直してよ」


 外出用の服に着替えた後、廊下に出た奏を部屋に戻すと、奏はさっきまでの楽しそうな雰囲気を引っ込めて何故だか不機嫌になっていた。

 頬を膨らませて、そっぽを向いて、俺の言葉を無視する奏の機嫌は、中々直らない。


 それこそ、高垣さんとの約束のため、家を出て電車に揺られている今でさえ、彼女は俺を無視したままだ。


「奏、ごめん」


 心からの謝意を込めて言うが、奏は相変わらず返事をしてくれない。


 ……はて、一体何が原因で奏は怒っているのだろうか?


 疑問は尽きない。

 尽きないが……ここで喧嘩状態のまま高垣さんと会うと、高垣さんからまた色々言われそうなので、彼女に会うまでにはなんとか機嫌を直してもらわないと。


 ……でも、一体どうすれば奏の機嫌を直すことが出来るのだろう?


 そういえば俺、ついこの前も奏を怒らせたことがあったな。

 あの時奏が怒った理由は確か……俺がテストで彼女をボコボコにしたから。


 であれば……もしかしたら今回も、俺の無遠慮な行為が原因で奏は怒っているのかもしれない。

 とすると、奏が怒る直前、俺が仕出かした彼女への無遠慮な行為を思い出せば、彼女の機嫌を直すことが出来るかもしれない。


 ……俺が奏にした無遠慮な行為、か。


 ……。

 …………。


 ……あったか? そんな行為?


「奏。奏」


 くそう。思いつかないのではしょうがない。


「奏、そろそろ機嫌を直してよ」


 こうなれば……前回と同じ手を使おう。


「君と仲直り出来るのなら、俺……なんでもするから」


 これぞ、秘儀、なんでもするから作戦。

 前回と同じ作戦だが、奏はどういうわけか俺がなんでもする、と言うと途端に態度を翻すのだ。


 さあ、今回も効いてくれよ?


 そんな期待を込めて俺はなんでもすると宣言したのだが……。


「……」


 奏の返事はなかった。

 ……マジか。


「か、奏ぇ……。そろそろ口を聞いてくれよ」


 このままだと、本当に高垣さんに文句を言われてしまう。

 本格的に困った俺は、泣き落とし作戦を実行した。


「……ん?」


 半泣き状態で迫る俺に対して、奏は呑気な顔を覗かせてきた。


「ごめん。あっくん。あっくんのジャケットに集中していて、すっかり返事を忘れていたよ」


 奏は俺の気も知らず、あっけらかんとした口調で言った。

 よく見たら彼女は、ブカブカのジャケットの袖を口元に寄せていた。集中していた、とは、恐らく匂いを嗅いでいた、というところだろう。


 ……なんで俺のジャケットの匂いに集中していたんだ?

 もしかして匂うのか?


 ……いや、匂いに集中するってなんだ?


「……ごめん。さっきから何を話していたの?」


 俺の疑問は声にならず、おかげで奏から疑問の声を頂いた。


「いや、なんでもない……」

「ふうん」


 奏は未だにジャケットの匂いを嗅いでいた。


「ねえ、あっくん」


 奏はジャケットの袖の匂いを嗅いだまま続けた。


「さっきあっくん。あたしになんでもするって言ってなかった?」

「匂いに集中していたのに、そこは聞こえてたんだ」


 思わずツッコんでしまった。

 奏はすごいなぁ。


「うふふ。聞こえてしまってました」

「あはは。それは困ったなぁ」


 俺は苦笑しながら頭を掻いた。


「それじゃああっくん。何があったのかは知らないけれど、なんでもしてもらってもいい?」

「うーん」


 ……俺は腕を組んで悩んだ。

 だって、俺が奏になんでもすると言ったのは、彼女の機嫌を直すため。そもそも彼女の機嫌が損なわれていなかったのなら……なんでもするなんて言う必要がなかったのだ。


 であれば、今回は機嫌を損なっていたわけでもないし、なんでもする必要はないと思える。


「うふふ。あっくん。なんでもしてくれないなら、あたしあっくんのこと無視しちゃうかも」

「な……!」

「うふふ。あっくん、なんでもしてくれる? してくれない?」


 な、なんて卑怯な……!


「……き、聞かない」

「いいのかなー? 本当にいいのかなー?」

「……くっ」

「もしなんでもしてくれないなら、無視しちゃうよ。一生……」


 笑っていた奏は、顔を硬直させた。


「……一生は嫌だから、三十分無視しちゃうよ」

「あはは。奏は時短の天才だなぁ」


 僅か数秒の思案の末、無視の期間が一生から三十分に縮まったんだもの。

 さて、たかだか三十分程度の無視であれば……俺が導く答えは決まっている。


「わかった。なんでもするよ」

「……え、いいの?」

「うん」


 俺は頷いた。


「奏相手にだけは、嘘をつきたくないから」

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― 新着の感想 ―
あっくんはノーガード戦法使い過ぎ。そいつに白紙委任状渡す事の危険性に未だ気づいていない……。
今話は(ごく一部を除けば)普通にイチャイチャしてるだけだったな~(;^_^A それだけのはずなのにメチャクチャ新鮮味があることに驚かされた今話でもありました♪
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