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余命宣告を乗り越えた幼馴染の愛が重い  作者: ミソネタ・ドザえもん
第十二章

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62.相変わらず

「いえ、時間はないです」

「えぇっ!?」


 奏の母の質問に真摯に答えた結果、俺は奏の母に驚かれることとなった。

 今日は奏と三時間の勉強会を行う予定で、奏こそ眠ってしまったが、勉強会はまだ一時間半くらいしか行っていない。

 奏の母と構っている時間など、あるはずもなかった。


「……うふふ。なるほど。奏では中々陥落させられないわけね」


 一人何かを呟く奏の母の瞳には、光が灯っていなかった。


「あっくん。どうしても今は時間はない?」

「そうですね。今は勉強中なので、それが終わった後なら少しくらいは時間は取れると思います」

「うふふ。あたしにそんな態度を取って、本当にいいの?」

「え?」

「あたしの機嫌を損ねたら、もう二度とこの部屋の敷居を跨げないかもしれないわよ?」

「……まあ、仕方がないですよね」

「うふふ。それくらいなら動じないか」


 相変わらず、奏の母の瞳には光は灯っていない。


「それなら……そんなに頑なだと、奏ともう二度と会わせない」

「えっ……」

「もしあたしがそう言ったら、態度を翻してくれるかしら?」


 奏の母のお願いより勉強を優先したら、奏と会えなくなる……?

 それはなんというか……中々の横暴だ。

 抗議をしたくなったが、奏同様、瞳に光が灯っていない人相手だとどうしてか、文句の言葉は喉につっかえて外に出てこなくなる。


 ……代わりに、その迫力に気圧されて、俺は少し考えることにした。


 奏の母の要求を呑むか。

 勉強を優先するか。


 ……答えはすぐに出た。


「それでも、俺は勉強を優先します」

「へえ……」

「だって……今の俺だと、遅かれ早かれ、奏と離れ離れになる日は近いじゃあないですか」

「……ん?」

「今の俺は無力です。そんな人間的な魅力のない俺が、魅力たっぷりの奏の隣に立つには取捨選択が必要なんです」

「えぇ……」

「現時点での俺は彼女の隣に立つためにも勉強が必須なんです。だから、あなたの要求は吞めません。ごめんなさい」


 奏の母は呆気に取られた様子だった。


「それに……おばさんに一度、奏との絶縁を促されたって、最終的にはそれを撤回させればいいんです」

「……えっ」

「必ず俺は……今度こそ、彼女を救えるような男になるつもりです。そうなれば、きっとあなたも俺を認めざるを得なくなる」

「……」

「……」

「…………」

「…………」

「うふふ。うふふふふ。あっくん。あたし、あなたのこともっと好きになっちゃった」


 奏の母はうっとりとした表情で俺を見た。


「うふふ。なら仕方がないわね。今日のところは勉強を優先して頂戴」

「すみません」

「勿論。奏との絶縁も、この家への訪問禁止もないから安心して」

「すみま……えっ」


 じゃあなんでそんな話を俺にしてきたんだ?


「うふふ。まあ、今日のところは諦めてあげる」


 奏の母はテーブルの上にお菓子を並べた。


「本当は、奏の容体のことについて色々と話したいことがあったんだけどね……。それはまたの機会……っ」

「ち、ちょっと待ってください! おばさん!!!」


 俺はテーブルを思い切り叩いて、身を乗り出した。

 さっきまであんな殊勝なことを言っておいておかしな話だが……奏の容体、と聞いたら、頭に血が一気に昇った。


「そ、その話……出来れば今、教えてほしいです」

「あらぁ? あっくんは奏と並ぶ存在になるため、お勉強をするんじゃなかったかしら?」

「……そのつもりでした」

「なら、お勉強をしないと」

「……勉強なんか、どうでもいい」

「んー? 何ー?」

「勉強なんかどうでもいい。奏の身に何かあるんですかっ!」


 言葉通り、俺の頭の中にはもう……勉強のことも。自らの無力さのことも。


 全てがどうでも良くなっていた。


「うふふ。うふふふふ」


 奏の母は、怪しく笑っていた。


「あっくん。あなた、ウチの娘のこと、好きすぎだよっ」

「……おばさん。冗談は良いので、教えてください」

「……」

「……」

「……ごめん」


 奏の母は少し気まずそうに苦笑した。


「それじゃあ、ここで話すのも眠っている奏に悪いし、リビングでお話しましょうか」

「はい」

「じっくり。二人きりで。奏のこと……お話しましょうか」

「はい」


 俺は立ち上がった。


「早く行きましょう、おばさん」

「うふふ。満点よ、あっくん」


 奏の母は満足げに微笑んでいた。


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― 新着の感想 ―
この娘にしてこの母親、この母親がいても友人夫婦なあっくん両親、そして奏ちゃん父の為人も気になりますが…… そういえば昼メロってホラーには含まれなかったんだっけ?と意識を遠くの方に飛ばしつつもあっくんの…
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