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余命宣告を乗り越えた幼馴染の愛が重い  作者: ミソネタ・ドザえもん
第十二章

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61.親譲り

「お邪魔します」

「もう。あっくん、二日に一回はあたしの部屋に入ってるんだから、あんまりかしこまらないでよぅ」


 奏の部屋に通された俺は、奏に冗談を言われながらもアウェイ感を拭えずにいた。

 俺の部屋に奏を入れるのと、彼女の部屋で入れてもらうのでは……何故だか心的ストレスが段違いだった。


「それじゃああっくん。いつもの、しようか」

「うん」


 奏の言う、いつもの……に、俺は少しだけ辟易とする思いだった。

 奏はいつも、この、いつもの、に数分の時間を要する。それは、さっさと勉強を始めたい俺にとって、酷く苦痛なものだった。


「うーん。じゃあ、今日のあっくんの座る場所はねー」


 その、いつもの、とは……勉強会をする直前、いつも奏が悩む、俺と彼女の座る配置のこと。

 先日、俺は奏と、勉強会をする際の座る配置を彼女に全て委ねる、との約束を交わしていた。


「奏、大事な勉強の時間が減っちゃうよ?」

「うーん。うーん」


 奏は俺の忠告を無視して、眉間に皺を寄せて悩んでいた。

 今の奏の姿を見ていると……そんなことがないことはわかっているのだが、実は彼女は勉強とかどうでもいいのでは、と少し邪推してしまう。


「よし。決めた」


 奏は得意げに微笑んだ。


「今日のあっくんの座る場所は……ここっ!」


 奏が指さした場所に、俺は座る。


「で、あたしはここっ!」


 そして奏は、俺が座った場所の隣……それこそ肩がぶつかりそうな至近距離に腰を下ろした。


「うん。いつも通りの配置だね」


 奏が俺の隣に座るのは、彼女に座る配置を全権委任してから、毎回そうだった。

 まあ、隣に座った方が勉強を教えてもらうのも楽だし、隣に座られることに不満はない。


 ただ……それであれば、奏の座る配置決め自体、無駄な工数がかかっているだけに思えて、今のこの行い自体に意味を見出せないのが本音だった。


「もうっ。あっくん、しっかりして!」


 奏はご立腹な様子だった。


「何が?」

「一昨日座った場所はあっちだったでしょう? でも今日は……一昨日に比べて、勉強会の開始時間が早くて、外の天気も良い。だからなるべく日当たりが悪い場所を選んだの」

「ははあ、一応考えてくれてはいたのか」

「当たり前じゃない。あたしをなんだと思っているの?」


 ……どうやら奏の機嫌を損ねてしまったらしい。


「ごめん。そうだね……。俺、配慮が足りなかったみたいだ」

「つーん。許しません」

「えー。どうしたら許してくれるの?」

「……」

「……」

「…………」

「…………」

「……うふふ。それじゃあ、今日も一時間の勉強会を三時間まで引き延ばさせてもらおうかな」

「そんなことでいいの?」


 なんだ。もっと面倒なお願いをされると思ったが……そんなことならお安い御用だ。


「それじゃあ、勉強を始めましょうか」


 奏に言われて、俺は頷いた。

 それからはしばらくの間、俺達は勉強に集中した。

 時折、彼女にわからない問題を聞かれたり。

 時折、彼女が問題が解けたご褒美として頭を撫でてあげたり。


 そんないつも通りの勉強会の時間を送っていった。


「うふふ。うふふふふ」


 さっきは機嫌を損ねたと思った奏だが、今日は問題をスムーズに解けているためか、すっかり上機嫌だ。


「あっくん。あっくん。この問題、自力で解けたよ」

「うわあ、すごいね」

「うふふ。そうでしょう? うふふふふ」


 難しい問題を自力で解けた彼女の頭を撫でようと、左手をノートから離して、彼女の頭に向けて伸ばした時だった。


「あっくん。奏。お茶でも飲んで休憩したらいかが?」


 奏の母が、部屋に入ってきた。


「げ」

「あっ、奏! げ、はないでしょ。げ、は」

「……あはは。飲み物、ありがとうございます」

「いいえ。うふふ。あっくんったら、あたしの登場にも臆せず、まだ奏の頭を撫で続けるのね」


 ……え?

 だってそりゃあ、難しい問題を自力で解けた奏を称えるのは……当然の務めだろう?


「……お母さん、あたし、勉強会中は邪魔しないでって言ったよね?」


 奏の声は冷たい。


「えー? 邪魔なんてしていないじゃない。あなた達がそろそろ疲れてきた頃だと思って、休憩を勧めているだけよ。それの何が邪魔にあたるのかしら?」

「……むぐぐ」

「ほうら、とにかくお茶を飲みなさい。そろそろ集中力も切れてくる頃でしょうしね」

「ありがとうございます」

「……むー。ありがとっ」


 そんな感じで、俺達はつかの間の休息を楽しんだ。

 奏の母は、俺達に飲み物を渡すと、飲み終わったらコップをキッチンに持ってきてね、とだけ言って、奏の部屋を後にした。


「それじゃあ、勉強を再開しようか」

「うん……」


 俺達は休憩を終えて、勉強を再開した。

 先程よりも俺の勉強は捗っていた。


 何せ、さっきより奏に問題の助言をしていないことが、勉強が捗っている一番の要因だろう。


 奏と一緒に勉強会をするようになって以降、勉学に一層興味が持ってくれるようになった。

 しかし、彼女はまだまだ……俺に、自力で解けない問題に対するアドバイスを求めてきていた。


 彼女にアドバイスをする間、自らの学習時間は減るわけだし……なるほど。これは結構便利だな。


「ふう」


 自らの学習もひと段落したところで、俺は奏の様子を確認しようと思った。


「……あれ」


 そして、隣に座る奏が……ぐっすり眠っていることに気が付いた。


「なんだか起こすのはかわいそうだ」


 奏は頑張り屋な一面もあるから……きっと、追い込みすぎが祟ったのだろう。

 ここは……彼女が起きるまで、寝かせておいてあげよう。


「あっくん。お菓子でもどう?」


 そんなタイミングで、奏の母は姿を現せた。


「……あらあ、もしかしてウチの子、あっくんを放って眠っちゃった?」

「ええ、そうみたいです」

「そう。……あっ」


 奏の母は何かを思いついたように満面の笑みで手を叩いた。


「それじゃああっくん。今って時間あるかしら?」

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― 新着の感想 ―
おかしいな? 平和で微笑ましいエピソードだったと思うんだけどな? 拝読後なぜか危険を察知して身構えてしまいました^^; きっと気のせい気のせい♪
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