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余命宣告を乗り越えた幼馴染の愛が重い  作者: ミソネタ・ドザえもん
第十二章

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60.香水

 高垣さんとの一件も無事にひと段落した翌日、俺は先日、奏と交わした互いの家で交互に勉強をする約束のため、奏の家に向かっていた。


「奏、いる?」


 奏の住むタワーマンションに到着した俺は、エントランスで奏の部屋を呼び出しした。

 数度のコールの後、向こうが応答したので、俺はそう尋ねた。


『あー、あっくんー!』


 ……呼び出しチャイムから聞こえた声は、いつも通り朗らかな女性の声。

 しかし、奏の声とは少しだけ声色が違った。


「お、おばさん。おはようございます」

『うふふ。おはよー、あっくん』


 どうやら呼び出しに応答してくれたのは奏の母のようだった。

 久しぶりの奏の母との会話に、俺は少しだけ声を上ずらせた。


 奏の母が、奏宅のチャイムを鳴らして応じてくれるなんて当たり前のことなのに、何を緊張しているのか。

 そんなことをもしかしたら思う人もいるかもしれないが……これにはやむを得ぬ事情がある。


『うふふ。あっくんとやっと会えたわー』


 というのも、奏の母との対面は……実に、先日我が家一同で奏家に訪問させてもらって以来、一度も発生しなかったことなのだ。

 奏の母は、奏のこれまでの人生を伝えるために現在、国内の各地で講演会に駆けずり回っている。


 恐らく、ウチの両親、奏家の両親の中でも一番多忙を極める人物だったのだ。


『うわー、お母さん! なんで出ちゃうのー』


 チャイムの奥から、奏の慌てふためいた声が聞こえてきた。


『えー? だってあたしもあっくんとお話ししたいしー?』

『もうっ。……これまで、なるべくあっくんとお母さんが会わないように調整してきたのに』


 え、そうだったの?


『……奏、そろそろあっくん、家にあげたら?』

『あ。……あ、あっくん。ごめん、すぐに開けるね』

「う、うん……」


 ……奏、俺のことをそんなにおばさんと会わせたくなかったのか。

 少しだけ寂しい気持ちになった。


「お邪魔します」


 自動ドアが開くと、俺はそうチャイムに向けて発してから通話を切った。

 その後、エレベーターに乗って、奏の部屋に到着すると……俺は呼び鈴を鳴らした。


「あっくんー! おひさー!」

「わっ」


 扉を開けてもらうと、おばさんが俺に飛び込んできた。


「もーっ! お母さん!」


 奏母の胸元に顔面を押し付けられながら……遠くに奏の怒り声が聞こえていた。


「うふふ。奏、あたしとあっくんの感動の再会を邪魔しないでよ」

「感動の再会をするのはあたしとあっくん!」


 君と俺は、昨日も会っているだろう。


「ふふっ。どうやら二人の仲はあんまり進展がないみたいね」

「そ、そんなことないもんっ!」

「うふふ。折角だし、あたしも協力しましょうか?」

「もーっ。お母さん、あっち行ってて!」

「うふふ。じゃああっくん。また後でー」


 奏の母は俺を離して、部屋の奥に消えていった。


「……なんだったの?」

「……あっくん」

「何? ……わっ」


 奏は突然、俺に消臭スプレーを二度噴射した。


「つ、冷た……っ。どうしたの?」

「……」

「……」

「…………」

「…………」

「お母さんの香水の匂い、きついから。ちょっと嫌かなーって」

「あ、それなら仕方がないか」


 俺は良い匂いだと思ったけど……まあ、そこは主観の問題か。


「それじゃ、あっくん。お部屋に行って勉強しようっ!」

「うん」


 奏はさっきまでの雰囲気はどこへやら、いつも通りの満面の笑みで俺を自室へ誘った。


 ……やっぱり奏は、笑っている姿が一番似合っているね!

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― 新着の感想 ―
応援してくれてるであろう母親でもこれかぁ。怖いわぁ。
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