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余命宣告を乗り越えた幼馴染の愛が重い  作者: ミソネタ・ドザえもん
第十一章

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53.何も出来ない

「あっくん。少しは落ち着いた?」


 奏のおかげで確かに気持ちは少し落ち着いた。

 ただ彼女の言葉を全て信じることは出来ない。

 そもそも……高垣さんの弟が、本当に入院しているかどうかでさえ、全ては俺達の憶測に過ぎないのだから。


 ただ、それであればそんな状況にも関わらず不調に陥った俺の滑稽さ加減が限界突破しているな。

 俺は苦笑した。


「あっくん。何を笑っているの?」

「ごめん。……どうやら俺は、考え過ぎていたみたいだ」

「それは……まあ、いつものことじゃない?」


 奏も俺につられて、苦笑した。

 しばらく俺達は互いに苦笑しあった。

 微笑み合って、彼女の手の温もりを感じて……ただいまの時刻は朝七時。


「……まあ、結局のところ、綾香ちゃんの弟の容体は、綾香ちゃん自身に教えてもらわないことにはわからないよね」

「そうだね」

「次に会った時に、聞いてみる?」

「そうするつもりだよ」


 俺は深く頷いた。

 深く頷いてみせるくらい……次会った時、俺は高垣さんに弟さんの容態を聞くべきだと思って疑わなかったのだ。


「……うーん」


 しかし、俺の考えとは裏腹に、奏は少し困った様子を見せた。


「あっくん。正直、あっくんの意見には……本当は賛成したいんだけど、賛成できない」


 奏はどうやら、高垣さんに弟さんの容態を聞くことは反対らしい。


「どうして?」

「……もしあっくんに兄弟がいて、その兄弟に対して深い愛情を持っていたとして。その兄弟が程度に差はあれ病気や怪我を患ってしまっていたとして。……他人にそのことを聞かれることは、気分が良いものかな?」


 ……そうか。これも奏の経験則か。


「……ごめんね。あたしが嫌だったから、あんまり人に家族の体調とかを聞くべきではないと思っているだけ」

「そういえば君は……俺達以外には、君の容体を伝えなかったんだよね」


 それがきっかけで、奏は小学校時代の友人ほぼ全員と疎遠となってしまったくらいだ。


「……自分の容体を他人に知られるって、実は結構、ストレスなんだ」


 奏は俯きながら語った。


「だって……言い方が悪いけど、皆、人が不幸になるお話、大好きじゃない。不幸話を聞いて喜んでいるわけじゃないと思うよ? 中には、一緒になって悲しんでくれる人もいる。でも、あくまでその人達が部外者である以上……そうやって相手のことで一喜一憂するだけで、当事者からしたらあまり気持ちの良いものじゃないんだよ」

「……そっか」

「……」

「……」

「……それでも、あっくんは高垣さんに弟さんの事情を聞くつもりはある?」


 一瞬の沈黙の後、奏は念押しのように尋ねてきた。

 ……奏の話を聞き、少しだけ自分の浅はかな考えを呪った。

 確かに俺は、高垣さんに彼女の弟の容体を聞いた時、彼女がどう思うかまでは考慮に入れていなかった。


 ……ただ、高垣さんの友達という身である以上、彼女の弟の容体を知ることで、俺にも何か出来ることがあるのではないか。

 そんな……誤解をしてしまったのだ。


 ただ、今ならハッキリと言えることがある。


 ここ最近……いや、奏を救うことが出来なかったあの日に、身に染みて理解したことがある。



 ……所詮、俺は何も出来ないただの子供だ。



 あの日、俺は奏に何もすることが出来なかった。

 いや、何もすることが出来なかったわけではない。


 激励の言葉を送っても、その言葉に効力がなく……。

 慰めの言葉を送っても、彼女の悲しみに寄り添えるわけでもなく……。


 彼女の秘めたる想いを聞いても、結局、俺に出来ることは何もなかった。


 あの一件以降、俺は気付かされたのだ。



 俺は……なんて無力なのか、と。



「……奏の言う通りだね」


 俺は俯いた。


「結局俺は、高垣さんから彼女の弟の容体を聞いたとしても、何か出来るわけではない」

「……あっくん」

「あの日から。……君を救うことも出来ず、無力感に苛まれたあの時から、俺は何も変わっていない」


 ……変わりたい。そう努力を続けてきたはずなのに。




「結局、俺はまだ……無力な子供のままなんだ」



 

 ……俺は。


「でも……っ」


 奏の手を握りしめた。


「無力感に苛まれることがわかっているからと言って、何もしなくていい理由にはならない……っ」


 ……無力感に苛まれるのが嫌だと逃げれば、結局俺は何も出来ない子供のままなんだ。


「あっくん。でも、高垣さんが迷惑するかも」

「確かにそうかもしれない。でも、だったらハッキリと迷惑だと言ってもらって身を引くことにするよ」

「……」

「彼女の気持ちは彼女にしかわからない。心の奥底では助けを求めているかもしれない。だから、高垣さんが今、何か俺に求めていることはないか。それだけは確かめてみるよ……っ」


 例えその結果……俺が再び、自らの無力感に絶望することになろうとも。


「だって、俺と高垣さんは友達だから」


 ……自らが苦しむ結果になろうとも、友達のために何もしないことだけは、嫌だった。

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― 新着の感想 ―
ごめんだけど、奏さんはこれただあっくんが自分以外に関心持つの止めさせようと誘導してるようにしか見えないんだわ。
前話後半から引き続き真面目系青少年たちの優しさあふれる展開だったはずのに何故だろう、今話の拝読後奏ちゃんの瞳の光沢をチェックしたい欲求に駆られています。 でもこの2話で二人のしごくまっとうな部分を知る…
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