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余命宣告を乗り越えた幼馴染の愛が重い  作者: ミソネタ・ドザえもん
第九章

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45.一緒ならば問題ない

 渋谷先生に因縁をつけられた後、俺は奏に手を引かれて教室を後にした。

 向かった先は図書室。


「綾香ちゃん。遅くなってごめーん!」


 図書室には高垣さんが先にいて、一人で読書に勤しんでいた。


「一ノ瀬さん、図書室では静かに」

「え? でも、あたし達以外には誰もいないよ?」


 夏休み前日のためか……。

 いや、平常運転のためか、図書室には俺達以外の利用客はいなかった。


「……モラルの問題よ」

「そっか。それなら……これからは気を付けるね」


 奏は快活に微笑んだ。


「……それで、萩原君。あなた、変なトラブルは起こさずに済んだの?」

「変なトラブル?」

「渋谷先生と。あなた、いつもは自ら他人に絡んでいくことなんてないのに、急に先生に絡みに行くんだもの」

「ねー。驚いたよねー」


 同調する奏の瞳には、光が灯っていなかった。


「圧つよぉ……」


 高垣さんが声を震わせた。


「……そ、それで、先生との間に、変なトラブルを作ってきてないでしょうね」

「うん。勿論さ」

「……ほっ。それなら良かった」

「勿論、変なトラブルを作ってきたよ!」


 高垣さんは頭を抱えた。

 とりあえず俺は、高垣さんに渋谷先生との間に起きたいざこざを話した。


「……ま。あたしに実害が及ぶことはなさそうだから良いけども、あなたも毎回、大変ね」

「そうだね。俺が口下手なのが悪いのかなぁ」

「……いや、今回の件はどちらかと言うと」


 高垣さんは奏に目配せをした。


「んー? 何、綾香ちゃん」

「な、なんでもないでしゅ……」


 あ、また弱気高垣さんが出たな。

 それにしても、この弱気高垣さんの出現条件は何なんだろう?


「自覚ある上でやってるってこと……? たち悪……」


 高垣さんの呟きは、声が小さくて聞こえなかった。


「そういえば俺、どうして二人に呼び出されたんだっけ?」


 渋谷先生の話にひと段落が付いたタイミングで、俺は思い出した。


「……うふふ。あっくん、今朝のこと、もう忘れたの?」

「今朝のこと?」

「あっくん、綾香ちゃんに今朝、明後日の予定を聞かれて、デートしようって言われてたじゃない」

「明後日の予定は聞いたけど、デートしようとは言ってないからね」


 あー、そういえばそんなこともあったな。

 

「なんの用だったのかな。なんの用だったのかな。あたし、気になるな」


 奏は高垣さんへ向けて薄く微笑んでいた。


「……圧かけないって約束、どこいったのよ」

「圧なんてかけてないよー。もう、綾香ちゃんったら酷いなあ」

「……ま。いいか」


 高垣さんは呆れた様子でため息を吐いた。


「……萩原君。あなた、飛行機に詳しいって聞いたんだけど、本当?」


 高垣さんの質問に、俺は目を丸くした。

 一体、それをどこで知った?

 確かに俺は……とある人物との一件が影響して飛行機に興味を持ち、空港に通うようになった。そして、気付けば空港に行くことが好きになり、転じて飛行機に対する造詣も深くなった。


 しかし、それはこの学校の人間には……ただの一人にも話していない。


 ……あ。


「……数少ない一ノ瀬さんとの会話の中で、この子が教えてくれたの」

「……あははぁ」

「というか、この子と話すといつもあなたの話題ばかりなんだよね。で、ちゃんと話を聞いてないとすぐに圧をかけてくる。だからあたし、あなたのこと忌避してた部分もあるからね?」

「ち、ちょっと綾香ちゃん! あたしのことを忌避していた部分は他言オッケーだけどその前は駄目ーっ!」

「そっちは良いのかい……」


 奏は珍しく狼狽えていた。

 ここまでの狼狽え方は……奏と奏の母とのやり取り以外では初めて見る。


 ……この二人、結構相性良さそう。


「ま、いいや。とにかく、あなた飛行機に詳しいんでしょう?」

「まあ。……それが?」

「……実は」


 高垣さんはポケットからスマホを取り出した。

 スマホの画面には……可愛らしい小さい子が一人。


「弟」

「へぇ、綾香ちゃん。弟いたんだ! 可愛い!」


 ……奏の言う通り、実際、写真だけだが、高垣さんの弟は凛々しい顔立ちをしているように見えた。

 高垣さんも顔立ちが整っている方だが、遺伝だろうか。


「実物は全然可愛くないよ。生意気だし、すぐに悪戯するし、いっくら注意しても玩具もちゃんと片づけないし」

「……ほう?」

「でも、まあ……時々? 可愛いな、と思う時もあるかもね」

「ツンデレ」

「ツンデレだね」

「う、うっさい!」


 高垣さんは頬を染めた。


「……で。ウチの弟がさ、この前ニュースを見てたんだよ」

「ちっさいのにニュースを見ているのかい。それは、将来が楽しみだ」

「そしたら丁度……とある航空会社の機体のラッピングが報道されてて……。それがこの子の好きなアニメのラッピングだったんだよね」

「……なるほど」


 大体、話が見えてきた。


「そこで……萩原君! お願い!」

「うん。いいよ」

「この飛行機の写真を撮りたいから、空港を案内して……っ! え、いいの?」

「うん」


 即決即断に、高垣さんは目を丸くしていた。


「……えぇ、判断が早い」

「ふふっ。自分の好きなものに興味を持ってくれた人のことは、無条件で応援したくなるものだろう?」

「……っ!」


 奏は何かを閃いたらしい。


「はいはいっ! あっくん! あたしもたった今、飛行機が好きになりました!」

「そうなの? 嬉しいなぁ」

「疑う素振りも見せない……」


 高垣さんは呆れたため息を吐いた。


「それじゃあ、明後日。よろしくね。萩原君。そして、一ノ瀬さん」

「……へ?」


 俺は目を丸くした。


「どうして奏も?」

「はあ? 決まってるでしょ」


 高垣さんは腕を組んだ。


「……命が惜しいから」

「は?」


 よくわからないが、とりあえず俺達は明後日、三人で空港に行くこととなった。

九章終了。

次章、再びの空港へ

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― 新着の感想 ―
高垣さん、リスク管理できてえらい。
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