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余命宣告を乗り越えた幼馴染の愛が重い  作者: ミソネタ・ドザえもん
第八章

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39.外堀②

「おじさん。おばさん。こんにちはっ!」


 リビングにて、奏は俺の両親に満面の笑顔で挨拶をしていた。

 俺達がいない間、皆で雑談をしていたらしい両両親は、俺達を見て微笑んだ。


「奏ちゃん。こんにちは」

「奏ちゃん。ウチの子がごめんねー?」

「いいえ。あたしこそ、子供っぽいことで怒っちゃってごめんなさい」


 奏は両親に向けて頭を下げた。そんな奏の姿を見て、俺の両親は少し困った様子だった。


「奏ちゃん、頭をあげてよ。ウチの息子がテストで完膚なきまでにあなたを負かしたのが悪いんだから」

「いいえ。真剣勝負を挑んでくれたあっくんには、むしろ感謝しているんです」


 え、そうなの?

 そうなら……さっき、どうして俺は奏に毎日の勉強会を要求されたのだろう?


 ……。


 ま、奏との勉強会が嫌というわけではないし、いっか。


「だから、次のテストでは勝てるよう、今後も勉強、頑張って行こうと思います!」


 奏の力強い宣言に、両親は微笑んでいた。


「……それで、実はさっきあっくんと一つ、約束を交わしまして」

「約束?」

「はい。あたし、これからしばらくの間、あっくんと勉強会をすることになったんです」


 奏の言葉に……。


「あら、良いじゃない。頑張ってね、奏ちゃん」


 俺の母は喜んだ。


「それで……当分の間、毎日あっくんの家にお邪魔させてもらおうと思っていて」


 ……あ、それは一応、ウチの両親にも話を通しておくつもりだったのか。

 ウチの両親は平日の間、仕事でほとんど家にいないし、別に断っておかずとも何とかなりそうなものだけども……。


 ……ん?


 というか、ウチの両親は平日、ほとんど家にいないとなれば……当分の間、俺と奏は、俺の部屋で二人きりの時間が出来ると言うことになるのでは……?


 ……。

 …………。


 ……………………。


 あはは。やったぁ!


「ちょっと奏、いきなり何を言い出すのよ」


 恐らく歓迎ムードの俺達一家とは違い、奏の母は奏を咎めるように口を挟んできた。


「いきなりそんな……萩原さん達も迷惑でしょう?」

「え?」

「いや別に……」

「まったく問題ないよね?」

「ほら、迷惑だって言っているじゃない」


 奏の母は、眉間に皺を寄せていた。


「駄目よ、駄目。あんまり萩原さん達に迷惑をかけないの」

「ぶー……。いいじゃない、お母さん」

「駄目ったら駄目」


 奏の母は怒ったように続けた。



「だから、二日に一回はウチに来なさい」



 ……あれ。

 奏の母の瞳に……光が灯っていない?


「そうすれば、あっくんともきちんと毎日勉強が出来るし、あたしも協力出来る」

「……えー」

「何よ。不満なの?」


 奏は不服そうに俯くばかりで、何も言おうとしなかった。


「俺は全然構わないけど……?」


 とりあえず、俺は奏の母の意見に賛同した。

 正直、毎日毎日、奏を我が家に呼びつけるのは彼女の負担になるだろうことから、少し懐疑的な部分があったのだ。

 そもそも、夜遅くに女の子を一人で帰すこと自体危ないことなのに……それを毎日ともなれば、彼女の負担は計り知れない。


 ……あれでも、あんまり遅い時間に帰すことになったらウチに泊めればいいのか。


 あはは。

 であれば、当初の案で行けば、毎日奏を家に泊めることになっていたかもなっ!

 

「ほら、あっくんもこう言ってるでしょ?」


 相変わらず、奏の母の瞳には光が灯っていなかった。


「……でも」

「奏、この家で勉強するのがそんなに嫌なの?」

「……うーん」

「奏……?」

「正直、嫌か嫌じゃないかで言えば……嫌」

「どうして?」


 俺の質問に、奏は俯いた。


「だって……」


 奏がチラリと見たのは、迫力ある微笑みを見せる奏の母。


「……うぅ。わかった。わかったよ」


 奏は渋々、奏の母の要求を呑んだようだ。


「お母さん、先に言っておくけど、あんまりあっくんに変なことしちゃ駄目よ?」

「あはは。あたしがあっくんに何をするって言うのかしら?」

「そうよ。一ノ瀬さんに限ってそんな。あはは」


 両家の母は笑い合っていた。

 ……なんだか微笑ましい光景だな。


「それじゃあ、そろそろ夕飯の支度をしましょうか」

「あ、手伝う」


 奏の母の提案に、奏が同調した。


「あたしも、折角だし手伝おうかしら」


 俺の母は、よっこいしょ、とソファから腰を上げた。


「それじゃあ、男達はそこでしばらくの間、待っていてね」

「はあい」

「あっくん。美味しいご飯作るからね」

「ありがとう」


 女性陣にご飯の支度を任せて、俺は父の隣に腰を下ろした。


「敦。君も中々、大変だね」

「え?」


 ソファに腰を下ろすや否や、父に言われた。

 なんのことはわからず、俺は首を傾げた。


「あっくん。ごめんね。ウチの連中が」

「何がです?」


 何故だか、奏の父からは謝罪の言葉を頂いた。


「……大変なことがあったら、いつでも相談してね」

「そうだよ。俺達は君の味方だから」

「二人とも、どうしたんです?」


 深刻そうな面持ちの二人に、俺は困惑を隠せなかった。


「あっくん。……奏が学校に転校してきてから、何か変なことに巻き込まれてたりはしていないかい?」

「変なことって?」

「いやその……例えば、いきなり眠気が襲ってきたこととかなかった?」

「……あー」


 そういえば、そんなこともあったっけか。

 でもあれは、俺が勉強しすぎたせいだしなぁ。


「他には……奏にプレゼントを渡されたとか」

「え……」


 どうしてそれを?


「……スマホのバッテリーの減りが早くなったとか」

「早くなりましたけど、単純なバッテリーの劣化だと思いますよ? あはは」


 俺が笑うと……。


「……ここにいる連中で一番大物なのって、実はあっくんだよね」


 奏の父は呆れたように苦笑していた。

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― 新着の感想 ―
ちょっと待って奏さんのやらかし知った上でスルーしてんのかこの親。
おぉう…これ外堀がコンクリで埋められてらぁ…。
黒とグレーの境界ってどこなんだろう? あっくんの対奏ちゃん限定(?)の大きな包容力(?)が頼もしいような怖いような?が楽しい今話でした♪
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