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鬼姫と呼ばれた元ヤンが気弱令嬢に転生した件〜令嬢ライフも、意外といいものだな!〜  作者: seika


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鉱山

 と、決め込んだのはいいものの……。

 同じ領地内だが、村からは離れているらしく、馬車で移動しないといけない。


 ルーカスの護衛として、グレイは当然付いて行こうとしたが、ルーカスがそれを止めた。今グレイがこの村を離れるのは得策ではないと思ったのだろう。原因を探るだけだと言い聞かせられ、グレイは不満げに頷いた。


 どんだけ心配性なんだ。

 そう思ったが、飼い主に置いて行かれた大型犬みたいで、つい笑ってしまった。案の定、グレイに殺気の籠った目で睨まれたのは言うまでもない。


 少人数のほうが行動しやすいとのことで、ルーカスとあたし、そして護衛のハマルが任命された。


「はぁ!? また俺かよぉ……」


 と本人は嘆いていたが、渋々馬車に乗り込んだ。


「あっ! そうだ、ミリア様! シャナさんの好きな食べ物って知ってます?」


 シャナのことについて、根掘り葉掘り聞かれた。

 狙っているのが見え見えだ。

 だが、残念ながらあたしが応援しているのはフレイだ。あいつとシャナをくっつけたいので、こいつに渡す情報には、しっかり嘘を混ぜておいた。


「シャナのタイプは寡黙で騒がない大人な男が好きだと聞いたことあるぞ」

「マジっすか! 寡黙で大人な感じかぁ!」

「あと、口笛吹く男がかっこいいとも言ってたな」

「口笛っすか?」

「ふっ……」


 ルーカスの肩が小刻みに揺れている。

 ハマルで遊んでいたことに気付いたのだろう。

 しかし、ハマル本人は、弄ばれていることに全く気付いていない。目的地に着くまでの間、健気に口笛の練習をしていた。








 そして2日後。

 ハマルの口笛は上達しないまま、鉱山へと到着した。

 馬車を降りると、ここから先は岩場だった。

 ルーカスが手を引いてくれる。いつも思うが、レディーファーストとして、当たり前のことなのだろうか。ハマルを見ると、自分の足元しか気にしていない。あたし達の前を横切りながら進む姿を見て、アレは例外だ……とあたしは首を振った。



 音が聞こえる。

 カン、カンと、何かを打ちつける音だ。


「あの崖の途中に見える凹みが、鉱石のある洞窟ですよ。

 父上からは地図で説明を受けただけで、実際に足を運ぶのは、私もこれが初めてなんです」


 確かに、頭上から大きな音が一定のリズムで聞こえてくる。視線を周囲に戻すと、あるものに目が奪われた。


「……こんなところに、池がある」


 村の池に比べたら小さいが、洞窟の下に位置していた。

 だが池の状態は村のものと、さほど変わりない。

 食料の缶詰や食べ残しが浮かんでおり、土や石が不自然な状態で積み上がっていた。恐らく、掘り進める際に出た邪魔なものを、下へ捨てているのだろう。あいつ等にとって、ここはゴミ捨て場か何かなのか?

 そう思うと、グッと拳を握る力が強くなった。


「ひどいっすね、マナーってもんを知らないんですね」


「……ミリア嬢、もう少し周囲の探索を進めましょう」


 3人でもう少し先へ進み、岩場に差し掛かった時。


「伏せろ!」


 ルーカスの声に反応し、咄嗟に岩場の影に隠れた。

 そっと顔を出すと、岩場の下にある洞窟に、狼が一匹。

 入り口を守るかのように、(うずくま)って目を閉じている。眠っているようにも見えるが、油断はできない。


「うわっ!! なんだあれ!! まさか、あの幻といわれる(ウルフ)か!? かっけっーーごふっ!?」


 よし、こちらには気付いてないようだ。

 ルーカスは、腹を押さえるハマルを一瞥し、溜め息をついた。


「……まあ、お前が悪い」


「そんなぁ、ルーカス様まで……俺、女の子に殴られたことなんてないのに……」

「私だってなかった」


 ルーカスは大きく頷いて同意している。が、目線は狼から離れない。


「さて、これで合点がいったな。昨夜、襲ってきたのはあの狼だろう。あそこが巣穴で、まだ仲間がいそうだ」


「だが、ここが巣穴なら、村まではだいぶ距離があると思うが……」

「そこまで降りる必要があった、ということでしょう」


 ルーカスが鉱山を見上げた。

 採掘によって森は切り裂かれ、水は濁り、山は休むことなく震えていた。

 周囲には野生の動物は一匹もいない。気配もしない。

 猪や狼が村へ降りてきたのは、偶然ではない。

 人の耳には届かぬほどの振動が、獣たちの巣を壊していた。

 動物たちは、山から追い出されたのだ。


「まさか、こんな被害が出ているとは……父上も予想していなかったのでしょうね」


 ルーカスが何か考え込んで、


「……ここは私にお任せください」


 一体何をする気なのか。

 ルーカスの行動は早かった。

 靴が汚れるのもお構いなしに、鉱山を目指し、崖を登っていく。


「るっ、ルーカス様!危ないですよ!」


 ハマルが止めるも、聞く耳を持たない。

 あたし達は上り坂を見つけ、ルーカスの後を追った。

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