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鬼姫と呼ばれた元ヤンが気弱令嬢に転生した件〜令嬢ライフも、意外といいものだな!〜  作者: seika


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27/30

まだ終わらない

 夜になり、村は静まり返っていた。

 数人の男が交代で見張りに立ち、少し離れた場所では、グレイ達が焚き火の赤い光に照らされている。


「いやぁ、一気に問題が片付いたな。大変だったけど、やり甲斐はあったわ」


「あぁ、ミリア様も結構やるんだな。

 ルーカス様を殴った時は驚いたけど、あの方が執着するのも、なんか分かる気がするよ」


 部下の会話は聞こえているはずだが、グレイは輪の端でもたれかかり、目を閉じたままだ。彼が何を考えているのか、その場の誰にも分からなかった。

 輪の中にいたハマルも、その一人。


 ……いや、この男の場合は、自分のことしか考えられないのだ。


「そんなことよりさぁ、シャナさんと一言も話せてないんだけど俺!! 話しかけようとするたびに、雑用任されるしさぁ!!」


「まあ、それだけお前を必要としてるってことだろ」

「帰ってくるなり、これからはがっつかないって宣言してなかったか?」


「そうだった……まあ、必要とされて悪い気は……しなくもねぇ」


 この男は、単純な男でもあった。


「今夜も何も起きないといいな」


「もう猪は倒したわけだし、見張り役もいる。俺らが見張る理由もないと思うんだけど、ルーカス様は、ミリア様のことを心配されているからな」


「何かあったら俺等が扱かれるもんな」と、談笑していた時だった。


 チリン……と微かに鈴が鳴った。



 柵にぶつかれば鈴が大きく鳴るようになっていたが、今のは、聞こえるか聞こえないかほどの小さな音だ。


 だが……確かに、何者かがこの村に侵入した合図だった。



「おい、今の――」

「鳴った、よな?」



「むおおおぉぉーーーー!!!」


 入口近くにある家畜小屋から、呻き声が響き渡った。


 松明(たいまつ)を握りしめた護衛達。

 そして、グレイが即座に動いた。


 見張りが指差した場所へ駆けつけた。

 数メートル先の家畜小屋に、複数の影が見えたが、生憎今日は新月だ。

 もっと近寄らなければ姿は見えない。


 暗闇の中で光るものが、こちらを向いていた。

 近付こうと、足を踏み出した瞬間、それはその場を離れていった。目にしたのは、ほんの一瞬のことだった。


 松明の火をかざした時、そこにいたのは――。


 倒れ伏した牛だった。

 地面には血と、引きちぎられた中身が散乱していた。


「うっ、これは……」

「ルーカス様に報告しろ!!」


 グレイがそう叫んでいた。




 あたしがその騒ぎに気づいたのは、起こされてからだった。

 フィオナも連れて行こうとしたが、ルーシィが小さく首を振った。


「家畜が襲われたのです。それを見れば、フィオナは卒倒しかねません」


 あたし達はフィオナを寝かせたままにして、ルーカス達の元へと向かった。

 村人が集まっているのが見えてきた。その少し先で、ルーカスが護衛達と何か話している。

 松明をかざしている様子から、飼っていた牛がやられているのだと分かった。


「ルーカス!」


「ああ、ミリア嬢。見ても平気ですか?」


 ルーシィはこちらに近づけないようだ。ハンカチを当て、目を逸らしている。


「……あたしは平気だ。それより、猪がまだいたのか?」


「足跡が違います。それに、村の柵も見に行かせましたが、壊された形跡はありませんでした。


 鈴の音も僅かしか鳴っていなかったことを踏まえると、突撃したのではなく、飛び越えて侵入した可能性が高いですね」


「飛び越えて……では、他の獣だと?」


「ええ。それしか考えられません。

 解決したと思ったのですが……また振り出しに戻ってしまいましたね」


 ルーカスが天を仰いだ。


「帰る予定は中止になってしますが……」

「ああ、分かってる」


 このまま帰れるわけもない。

 村長の件もあるしな。まあ、ルーカスにそれを話すのは……この件が終わってからでいいだろう。


 しかしよく見ると、この家畜……引き裂かれ、食い荒らされている。

 敵は肉食ということか。家畜や人間を襲っていたのも、そいつの仕業で間違いないだろう。


「……おかしくないか? 猪や他の獣なんて、今までこの村に出たことはなかったんだろう。それが、なぜここ最近で現れるようになったんだ?」


「それは、私も考えておりました。この村に何か変わったことがあったのではないかと……」



 あたしは、ハッとして顔を上げた。


「……おい。獣に襲われ始めたのは、2ヶ月前だと村長が言ってたよな。

 鉱石を見つけたのは……いつだ?」


「確か、3ヶ月だと思いますが……」


 ルーカスと目を合わせた。


「鉱山を掘り始めてからでしょうか。被害が出るようになったのは」


「……行こう。そこに答えがある」

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