村長の裏の顔
「お邪魔するぞーー!」
「あっ!! フレイおじちゃんだ!」
「これ、やっとこさとれた芋なんだ。お裾分けに来たぞ」
このフレイおじちゃん(28歳)と呼ばれた男は、積極的に討伐や力仕事を受け持っている一番の働き者だ。
ルーカスやグレイが指示を出さなくても率先して動いてくれる。
つまり、あたしはこいつを気に入っている。
そんな奴が、貴重な食料を差し入れに来た理由は一つしかない。
目が完全にシャナを追っている。惚れているのは丸わかりだ。
そんな視線にまるで気付いてないのが、シャナだ。
お礼もそこそこに、早速調理を始めていた。
「あー、フレイも食べていったらどうだ?」
あたしは見ていられず、口を挟んだ。
「えぇ!! おっ、俺もですか!!?」
顔を真っ赤にして狼狽えている。
シャナが振り向いて微笑んだ。
「そうですね、ぜひ食べていってください」
「おじちゃん! ここ座ってーー!」
シオンも嬉しそうに、小さな体で椅子を動かしている。
フレイは観念したのか、ギクシャクしながら椅子に座った。
まあ、長い道のりだろうが頑張れよ、と心の中でフレイを応援した。
皆で食卓を囲むのも、これが最後かもしれないな……。
「……ミリアは、もうかえっちゃうの?」
シオンが俯きがちに、そう聞いてきた
「ああ、問題は解決したし。これでみんな平和に暮らせるだろ」
シオンの頭をくしゃ、と撫でた。
気持ち良さそうに目を閉じていたが、次に目を開けたときには、シオンの表情は曇っていた。
「へいわ、なんかじゃない……あいつらがいるから」
「あいつら……?」
シオンは小さな体を震わせ、怒りを露わにしていた。
「あいつらはっ……!
おれたちのしょくりょうを、ひとりじめしてるんだ!!
かあちゃんが何回も、頭を下げに行ったのに、
水も、たべものも……おれたちには分けてくれなかった!!」
「こらっ!! やめなさい!!」
シオンの口を、シャナの手が塞いだ。視線が扉口へと向けられる。
それは明らかに、誰かに口止めをされている者の怯え方だった。
「……シャナ、隠していることを話せ」
「いえ……なにも……」
「大丈夫だ。あたし達が、絶対守るから」
「そうですよぉ!! 私達、山賊を倒したこともあるんですよう!! どーーーーんと任せちゃって下さい!!」
「すごい!! さんぞくだって! かあちゃん、ミリアたちなら、きっとなんとかしてくれるよ!!」
シオンの後押しが効いたのか、シャナは小さく溜め息をついた。
それを見ていたフレイが頭を掻き、シャナに代わって声を潜めて話し出した。
「村長が、伯爵家から支給されていたものを一人で着服していたんです。水も、食料も……送られたもの全て。
誰が頼みに行っても、追い返すばかりでした。
村長は、村の若い男達の中でも腕が立つ者を2人抱え込み、食料を与えて自分を守らせているのです。村の皆で奪おうとしても、こちらが無事で済むとは思えません」
まさかだった。
イケすかないだけだと思っていたが、裏ではそんな事をしていたのか。
「伯爵家にその事は?」
フレイは首を横に振った。
「伯爵家は村長を通して話をしているので……それに、支給物は使者が置いていくだけで、すぐ去ってしまうので、村の様子まで見てはくれませんでした」
「……そうか分かった。話してくれて助かった。」
知らなければ、同じことの繰り返しになるところだったな。
「ミリア様、どうなさるんですか?」
「……そうだな。この村が平和になる方法はひとつしかないだろ?」
「ひえっ!! ミリア様のお顔が、恐ろしいです!!」
「フィオナ……いい加減慣れなさい」
ルーシィとフィオナが何か言っているが、あたしは、あの村長をどうしてやろうかと考えるのに忙しかったのだ。




