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鬼姫と呼ばれた元ヤンが気弱令嬢に転生した件〜令嬢ライフも、意外といいものだな!〜  作者: seika


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女の戦い?

 刺激のない、退屈な話が続く。

 あそこの令嬢が誰と婚約したとか、国でも指折りのデザイナーに服を見立ててもらったとか。どこかの家の話、誰かの服の話。同じような話題が何度も繰り返され、思わずあくびが出た。


 なんか、中学の女子を思い出す。

 教室のど真ん中に集まって、噂話や自慢話を永遠にし続けていたな。


 あたしは参加しなかった。

 その頃から女子のノリというものには興味がなかったし、空気を読んで話を合わせる、みたいな技もあたしには備わっていなかった。


 そういえば……ミリアの年はいくつだろう。


 気にしたこともなかったが、同い年くらいの令嬢を見ると、自分の年齢くらい把握しておいた方がいい気がしてきた。見た目だけだと高校生か大学生くらいに見えるし、ここにいる連中もそのくらいだろうか。ドレスと仕草でやけに大人っぽく見える。


「ミリア様はお久しぶりでしたわよね。今日はルーカス様とご一緒ではないのですわね」


「ああ、ルーカスなら――」


「それよりも! 前回のイザベラ様のお誕生日パーティーは一段と素晴らしかったですわ! どのパーティーよりも華やかでしたし、あの紫色のドレスもイザベラ様の魅力を引き立てていて……」


 青髪の令嬢があたしを押し除けやがった。

 イザベラを褒めちぎるその背後から、不意打ちを食らわせてやろうか……。


 彼女はあたしの殺気を感じ取ったのか、落ち着かない様子で周囲を見渡していた。

 ふん、これで勘弁してやろう。



 あたしを含めて五人は男爵令嬢。

 対するイザベラは、ルーカスと同じ伯爵令嬢だ。

 格上相手となれば、そりゃゴマも擦りまくる。


 だが、イザベラが何の反応も示さないので、青髪は他のやつを話題の標的にし始めた。


「ウェイガ様の屋敷で開かれたお誕生日パーティーは落ち着いた雰囲気でしたわよね。そうそう、会場が少々手狭でしたのではなくて? 皆さま、肩が触れてしまいそうでしたわ」


「あら、ミンチュア様こそご用意なさった会場が広すぎましたわ。参加された人数が少なく見えてしまいますし、次回からは見栄を張らず、人数に見合った会場をお選びになった方がよろしいのでは?」


「なっ、なんですって……!」


 ミンチュアは震えながら立ち上がったが、紅茶を口に運ぶイザベラを一瞥すると、何も言えずに腰を下ろした。


 ほう、これがマウントの取り合いというものか……。(←多分違う)

 女の争いというものは、ねちっこいのだな。

 これはこれで、傍観する分には面白い。


「ミリア様は、まだ一度もお誕生日パーティーを開かれていませんわよね? せっかくですし、主催なさってはいかが?」


 赤髪の令嬢が、にこやかな顔でそんな爆弾を投げ込んできた。


「ミリア様のお誕生日はいつ頃なのかしら?」


 そんなことあたしが知るか!

 清水亜弥の時は八月だったけど、奇跡的に同じって可能性もあるしな。

 その場しのぎで言ってみるか。


 いや……待てよ。

 この中の誰かが、ミリアの誕生日を知っていたら誤魔化せない。

 手汗をかきながら、どうしたものかと黙り込んでいると。




「ミリア嬢の誕生日は、4月26日ですわ」


 なんと……!

 さっきまで黙っていたイザベラが! 

 しかも日付まで正確に。


「あ、あら、イザベラ様はよく覚えていらっしゃいますのね。流石ですわ」


「本当に、記憶力までよろしいのですのね」


 おおっと、出ましたゴマすり!

 みんなちらちらとイザベラの機嫌を気にしてるようだ。


「……当たり前ですわ」


 イザベラはというと、華麗な対応。

 これだけ褒められて威張る様子も見られない。

 こいつ意外と良いやつなのか?

 チョココロネみたいな髪型をしてるが……。



 イザベラはカップをそっと置き、まっすぐあたしを見つめた。


「ミリア嬢、最近大変だったようだけど、あの噂は本当なのかしら?」


「うわさ?」


「ええ、貴方が毒殺されかけたという噂よ」


 あぁ、そういえば。

 真相を知りたがる記者もいたな。

 だが、それも一か月ほど前の話だ。

 とうに忘れ去られているものだと思い、油断していた。


「どうなの?」


 何やら威圧感が凄い。


「いや、あれはちょっとした手違いというか……間違って飲んだだけだ」


 イザベラの眉がぴくりと上がった。


「毒を……間違えて? 貴方の屋敷では、毒が調味料として置かれているのかしら?」


 うっ、鋭い指摘に嫌味まで乗せてくる。

 ……こいつ、できる!


 口じゃあたしに勝ち目はないかもしれない。


「それに、随分と品のない話し方になったのね。どうされたのかしら?」


「あら、それは私も思いましたわ。婚約者の方がいらっしゃらないと自然と変わってしまうものなのかしら?」



「はあっ!? なんであいつがいるからって上品ぶらないといけないんだよ!」




「「・・・・・・」」



 はっ!

 やって、しまった……。

 みんなの視線があたしへ突き刺さる。



「令嬢が、なんて言葉遣い……」

「はしたないわ」


 まあ、分かりきった反応だ。

 存分に言えばいいさ。

 開き直ってるあたしを見て、イザベラがくすりと笑った。


「ふふ、なるほどね。わざと品位を落とすことで、婚約者の関心を自分に向けた、と……そういう手を使ったのね」


 最近似たような言葉を聞いた気がする。

 関心向けようとしてないし、なんなら無くして欲しいくらいだ。

 などと、抗えるわけがなかった。


 幾度となくルーカスの関心を惹こうとしていたミリアの話は有名だったらしく、その場の全員がイザベラの言葉に納得してしまったようだ。なんか悔しいけど、そのままにしたほうが都合が良さそうな流れになった。


「他の令嬢から、ルーカス様をミリア様の屋敷の前で、よくお見かけになると伺いましたの! 本当でしたのね!」


「私は盗賊から助け出したと聞きましたわ!」


 つい最近のことまで広まってるのか。

 しかもルーカスが英雄みたいに、もてはやされているのが気に入らない。


「今まではルーカス様を追いかけていらしたのに、立場が逆転したのね。その秘訣を今度、皆様にも教えてくださらない?」


 何言ってんだか……と思ったが、イザベラの提案に前のめりになっている令嬢達。みんな婚約者がいるからこういう話は余計に敏感なのだろう。


 もう知らん。

 諦め半分で頷いたが、令嬢達は何故か嬉しそうにしていた。

 あたしが恋愛講座を開くとでも思っているのか。

 イザベラは次の約束を取り付けると、音も立てずにカップを持ち上げた。



 はぁ……この堅苦しいパーティーにまた来ないといけないのか。

 令嬢達は自分の婚約者の話で盛り上がってるし。

 どこの世界でも女は恋バナが好きだな。

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