表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鬼姫と呼ばれた元ヤンが気弱令嬢に転生した件〜令嬢ライフも、意外といいものだな!〜  作者: seika


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/30

お茶会

 貴族社会において、お茶会やパーティーとはただの娯楽ではない。情報を交換して相手との関係を更新し、自分の立場を固めるための、いわば華やかな戦場である。


 誘われれば出席することが暗黙の了解だった。たとえどのような理由があろうと、同じ相手からの招待を立て続けに断るという行為は、相手の尊厳を壊し、「あなたの場に出ない」と主張しているのと同義なのだ。


 ……あたしは、そんな大それた意味があるだなんて知らなかった。


 ルーシィが何か言いかけていた気もする。

 けれど聞く耳を持たなかった。

 貴族の面倒ごとを避けたかっただけなのだ。


 ――だが。

 何度も逃げ切れるほど、ここは甘い世界ではなかった。





 イザベラという令嬢から催促の手紙が……来てしまったのだ。


 こっちへ来てからというもの、幾度となくパーティーやお茶会への誘いがあった。体調がすぐれないという理由で大半は断れたものの、このイザベラに関しては、どうやら断りの手紙も効力を発揮していなかったらしい。


 あたしだって度々送りつけられる手紙には、さすがに目を通した。


『パーティーを開きますので、ぜひいらして下さい』


 初めは丁寧な文章だった。

 綺麗な文字で綴られたありがちな定型文。

 それが数日後には、場所と日時、そして一言。


『来なさい』


 という命令文に変わっていた。

 一枚の高級な用紙に書かれたその一言は、迫力がありすぎたのだ。

 これを無視することは出来ない。そう悟った。


 そんな流れであたしは、貴族のお茶会とやらに初めて顔を出す羽目になった。もちろん了承の有無は送った。ルーシィが。



 屋敷でメイドたちとのんびり過ごしていたあたしに、わざわざ足を向かわせるとは、いい度胸だ。


 ちなみに、イザベラの情報はまったくと言っていいほどない。ミリアの友達なのかとも思ったが、屋敷の者や兄に聞く限り、ミリアはパーティには顔を出していたものの、親しい友人と呼べる存在はいなかったらしい。ルーカスにくっついて行動していたミリアは、令嬢達に良い印象を持たれてなかったんだと。


 なのに、ここまで誘ってくるとは……怪しい以外の何者でもない!


 イザベラの正体や、何を企んでいるのかを確かめるという、重大ミッションも発生しているのだ。断じて、お茶会のスイーツが目当てなどではない。



「ちょっと令嬢達と茶を飲みに行ってくる」


 あたしの目的(ミッション)をつゆほど知らない兄にそう告げると、大きく飛び跳ねて大袈裟なほど喜んでいたが、友達探しに行くわけではない。


 ルーシィに最低限のマナーだけ教えてもらい、準備万端。

 おかげで寝不足だが。



 いざ、出陣!



 今日はルーカスはいない。

 屋敷の前で待機されて、「ついてくる」などと言われたらどう追い払おうかまで考えていたのに、どうやら任務に行っているらしい。アッシュフォード家が管理している領地の偵察? みたいだ。


「なんか凄そうだな」


「伯爵家を継ぐために、子供の頃から色々できて、ルーカス様は凄かったんだよ!」


 と、兄がまるで自分のことのように熱く語り出した。

 ……ルーカスの信者か何かなのか。

 兄妹そろって。




 1時間かけてやっと到着したお茶会の会場は、イザベラの屋敷だった。あたしの屋敷とは比べものにならないほど豪華で、思わず圧倒される。待ち構えていた物腰の柔らかそうな執事に案内され、大きな門をくぐった。


 門の先は二手に分かれていた。

 屋敷へと続く道と、そのまま庭園へ誘う道。

 白く整えられた小道の先には、広々とした庭園が広がっている。中央には大きな噴水があり、その周囲には、噴水を引き立てるように刈り込まれた木々が並んでいた。


 貴族の庭園とは、癒しのためではなく、他者に見せるための空間なのだ。あたしの屋敷の庭園も、元々はそういう目的だったのかもしれない。今は間違いなく、あたしの癒し(ティータイム)の場だ。



 執事やメイドを合わせて、二十人ほどが隅の方で待機していた。

 対する貴族は、イザベラを含めて六人。

 どう考えても多すぎだろう。


 長机の上には、白いクロスが歪みも無くきっちりとかけられていた。

 六人分の席はすでに決められていて、イザベラは当然のように上座、中央寄りに座っていた。


 問題は、あたしの席だ。

 執事に案内されたのはイザベラの隣。2番目の上座。


 おい、間違えてるぞ。


 ……とは、この完璧そうな執事のじいさんには言えなかった。



『なぜ貴方が上座に?』


 すでに座っていた他の令嬢からそんな視線を浴びせられる。

 このお茶会で何が始まるのか、まったく予想できない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ