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鬼姫と呼ばれた元ヤンが気弱令嬢に転生した件〜令嬢ライフも、意外といいものだな!〜  作者: seika


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10/30

盗賊団のボス

 ミリア様に家族だと言ってもらえた。

 それだけで、私の秘密なんてどうでもよく思えた。


 私は昔から可愛い女の子に憧れていた。物語に出てくるお姫様は可愛くて、か弱くて、悪者から王子様に助けてもらう存在だ。私もお姫様になるんだ! と両親に宣言したくらいだ。


 でも、現実は甘くなかった。

 生まれが平民の私は、どう足掻いてもお姫様にはなれない。

 だからメイドになった。華やかな世界に足を踏み入れたかった。可愛いメイド服は着られるし、平民では身につけられない礼儀作法も教えてもらえる。愛嬌の良さのおかげか運よく採用され、働かせてもらえるようになった。


 まだ8歳だったミリア様を一目見て、思った。


 ――この方こそ「私の理想のお姫様だ」と。


 ミリア様は可愛くて、優しくて、そして重いものを持てない“か弱さ”を持っていた。守ってあげたくなる、まさにお姫様。私はミリア様みたいになりたくて、仕草や立ち居振る舞いまでこっそり真似をした。


 けれど、私には生まれつきの欠点があった。

 他の人より……力が強いことだ。

 少し力を入れただけで、持ったものを壊してしまう。

 だから私は、それを自分だけの秘密にした。

 ルーシィさんにも内緒で、誰にも知られないように。

 こんな力、使い道なんてない。

 何より可愛くない。


 ミリア様に知られてしまったら、私のイメージが壊れて幻滅されてしまう気がして……それが怖かった。



 でも――

 最近のミリア様を見て思った。

 かっこいいお姫様も、最高に素敵なんだと。







 最高だ、フィオナ。

 強いメイドとか好感度爆上がりだろう。

 誰に……とは言わないが。



 あたしは周囲をざっと見渡した。

 まだ数人残っていたが、これならすぐ片付くだろう。

 そう高をくくっていたのがいけなかった。


 赤鴉があまりにあっけなく倒されたから油断していたのもあるが、この世界で平和に過ごしていたせいで、あたしの危機感が鈍っていたのかもしれない。


 組織を相手にするってことは、常に複数の事態を予想しなければならなかった。危険なことをしでかしている連中なら、なおさらだ。例えば赤鴉をまとめるボス、つまり司令塔が存在する可能性を――。


「……何してんだ、テメェら」




「ミリア様……」


 突如現れた赤髪の男。

 ルーシィが……人質に取られた。

 しかも、拳銃を持っている。

 赤髪はルーシィの両手を背後から拘束し、こめかみに銃口を押し当てた。


「テメェら女相手にこのザマか。ろくに仕事もできねぇのか。あ?」


「おっ、お頭!! すみやせん!!」


 怯えたように頭を下げる下っ端。お頭と呼ばれた男は、軽装には似合わない豪華な指輪やブレスレットをしていた。概ね貴族から奪った品だろう。いま姿を現したということは、さっきまで高みの見物でもしていたのか。


 あたしは、じり……とそいつに気付かれないように、少しずつ距離を縮める。


「おっと、嬢ちゃん。さっきはうちのもんが世話になったな。お礼、せんとな?」


 ルーシィに突きつけられていた銃はカチリ、と引き金が引かれ撃鉄が起きる。


 さっきの奴等とは違う。

 本気で撃ちそうだ。


 完全に……詰んだ。


「さぁ、どうする?」





「――その手を、離せ」


 その時。

 突如として現れたルーカスによって、その場が一変した。


「がっ……!?」


 赤髪の腕が捻り上げられた。

 銃を落とし、男の手がルーシィから離れる。

 ルーカスの容赦ない回し蹴りがボスの頭に直撃した。


「なにっ!? お頭!!!」


 残りの奴等は狼狽えた。

 だが、遅い。


 ルーカスの背後から見慣れた護衛達が現れ、見事な連携で残りの奴等を次々に制圧していった。気付いた時には、赤鴉は全員縄で縛り上げられていた。


「全員拘束、完了しました!」


 護衛の一人がビシッと敬礼して、ルーカスに報告した。


「王都の詰所に引き渡す。あれで連れていけ」


 あたし達が乗ってきた馬車に盗賊集団は放り投げられた。うちが手配した馬車を勝手に連行用に使いやがって。


「あれには乗りたくないでしょう。私の馬車にご案内します」


 まあ、こいつの意見には賛成だが。


「お前、強かったのか」


「伯爵家ですから。当主になる為、小さい頃から嫌というほど訓練させられました」


「……へぇ」


 そういうものなのか?

 うちの兄はずっと怯えていて、一人も倒せそうになかったが。


 ルーカスは考え事をしているあたしの耳元で囁いた。


「言ったはずです。私が命を懸けて、あなたをお守りすると」


「なっ!!!」

「あはは、ミリア嬢の拳はもう見切りましたよ。殴られるのもたまには良いでしょうけどね」


 怒りと羞恥心で顔が熱くなっているあたしを見てルーカスは微笑んだ。


「とりあえずこちらへ。話は中でしましょう」


 不覚だが、ルーカスの馬車に便乗することになってしまった。

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