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038 D級魔石と奇跡の魔石(2)

本日2回目の投稿です。

 一章 二十二話(2)


 待ちぼうけを素手で捕獲するためには、身体強化が必要になる。不足している部分を確認して、補強しなければならないのだ。

2日目


 結果、ジェイド様の身体強化は、さすがは王族ということで、D級魔物の捕獲なら全く問題なかった。


 ただ、剣技の訓練をするためだろう、腕力に比重を置いた調整がされていたので、それに合わせた脚力の強化をしてもらった。


 S級直々の指導ではあるが、あっという間に習得してしまったらしい。やはり、ただ者ではない。







3日目


「ジェイド、タイミングは剣と同じだ。耳をつかんでそのまま両足を拘束する。それで活動停止になる」   


「うん、やってみる」


 罠を避けて、まちぼうけがジャンプする。その先には、くる方向が分かっているジェイド様が待ち構えている。


「これでいいの」


「……」


 ラウネンさんの気持ちが少し分かったかも。なんで直ぐにできるの。


 結果、ジェイド様はその日の内に5匹のまちぼうけを活動停止にした。




 ベニザクラ号が迎えに来るまでの待ち時間。私とジェイド様は、草原に座ってまったりしていた。


 そして、そういえば気になっていた……と言う感じでジェイド様が質問してきた。


「ねえ、カナデ。霧散(むさん)と活動停止はどう違うの」


 流石の王族も、そこまでは教えられていないらしい。


「霧散は、体が霧状になり消えてしまい魔石だけが残る。活動停止は、魔素の成分が体に残った状態で動かなくなるんだ」


「動かなくなるのは、死んだということ」


「そこは、よく分かっていないけど、異次元収納箱に入るということは、生命活動は停止されたということになる」


「ああ、だから活動停止なんだね」


「そうだよ。魔物がどうやって生まれているのかを確認できた事例はまだないんだ。ただ、鹿型魔物だけが、子育てらしきことをしていることが確認されている」


「子どもを育てているってこと」


「子どもなのか、小さな個体なのかは分かっていないんだ。なにしろ、生まれた瞬間を誰も見たことがないんだよ」


「ふーん。そうなんだ……」


 しばらく黙っていたジェイド様がまた質問してきた。


「まちぼうけは剣がかすっただけでも霧散したけど、もっとランクが上の魔物はどうなるの」


「さすがに、A級、S級の事は分からないけど、C級の猪型魔物『まっすぐ』は、もう動けない状態まで切られたら霧散するよ。それと、首を切られたり心臓の致命傷でも霧散するね」


「霧散すると、残るのは魔石だけなんだよね」


「そうだよ。だから、パーティーを組んで、霧散させないように捕獲しないと素材は手に入らないんだよ。それができるのが、C級以上の冒険者さ」


「すごいね。カナデはC級なんだよね」


 そう言って、憧れの野球選手を見るようなまなざしで、ジェイド様が私を見ていた。







4日目


「マジかあー」


 今、冒険者ギルドの素材回収室で奇跡が起きている。


「なあ、カナデ。確認するぞ。この狂乱(きょうらん)状態のまちぼうけ、しかも活動停止状態だ。これ、本当にこの坊主が1人でやったのか」


 さすがです。ラウネンさん。ジェイド様が王族だと知っているのに「坊主」呼びだ。貴族特権は認めないを貫いています。


「ああ、それはボクも間違いないということを断言するよ。それと、坊主ではない。ジェイドだ。名前を呼べ」


 ナツメさんが、半目で威嚇する。それを威嚇でやり返す2人。やめて。


「2人とも、大人げないです」


 サクラさんにバッサリ切られて、落ち込む兄をほおって置いて、話を進める。


「いろいろな偶然が重なって、こうなった。としか説明できないです」


 そう言うと、私は捕獲までの経緯を話し始めた。







 私とジェイドは、いつものようにまちぼうけを捕獲するために、罠を張って待ち構えていた。


 そこに、1匹のまちぼうけがのこのこと現れた。


「しめしめ、早くこっちへやってこい」


 私とジェイドが、ワクワクして待っていると、いつもの食事場所に、何という偶然か、まちぼうけの大好物である、魔素がバッチり詰まった袋豆が落ちているではないか。


「なんてことだ、これではこっちにこないぞ」


 あきらめかけた時だった。袋豆を食べていたまちぼうけが突然暴れ出した。どうやら、袋豆の中にカメムシが潜んでいたらしい。


 カメムシの臭い臭いにおいを口の中で噴射されたまちぼうけが、なんと言うことでしょう。臆病な性格のため起こること自体が奇跡と言われている、狂乱状態になってしまった。


「ジェイド、危険だ。まちぼうけが狂乱状態になった。つまり、ランクが1つ上がる。C級魔物だ。逃げるぞ」


 私達が逃げようとした時だ、


「ぴきー」


 そう鳴いて、まちぼうけが私達が潜んでいる草むらめがけて突進してきた。


「だめだ、やられるー」


 私は必死にジェイドを守ろうと、待ち構えたその時、


「ズバーン」


 すごい音がして、まちぼうけに生えた角が木に刺さって動けない状態になった。


 なんて運がいいんだ。この状態なら、子どもでも活動停止にできるではないか。


 ということで、ジェイドが偶然にも用意していた捕獲縄を使って確保した。


 以上が、経過です。







 私の説明が終わると、シラーとした空気が部屋いっぱいに流れていた。誰もが、


「そんな偶然ある分けねーだろー」


という顔である。しかし、偶然。そうとしか説明ができない。それが今回のできごとだ。


 ただ、ラウネンさんだけが、額をピクピクさせながら必死に怒鳴りたい衝動を抑えていた。


 それもそうだ、絶対口外するなの内容のかなりの部分を暴露している。




「では、『本人魔石捕獲証明書』を発行しなくてはいけないね」


 シラーとした空気が流れる中、氷のような冷気を纏ったカルミア様が、いつから用意していたのという絶妙なタイミングで『本人魔石捕獲証明書』を机の上に置いた。


 いろいろ突っ込みたいことはあるが、まあ、いいか。


 冒険者のいいところ。細かいことは気にしない。


 復活した冒険者達が、次々に今回の偉業を褒め称え、ジェイド様をもみくちゃにした。ナツメさんも、ハラハラしながらもにこやかに見守っていた。




 さて、やるか。『真色眼(しんしょくがん)』発動


 『真色眼』神様からもらった力の1つ。敵か味方かを赤玉青玉で見分ける力。


 そして、自分が守りたいと願う者に向けられる敵意を見分けられるように改良ができた。


 対称、マイアコス王国第5王子ジェイドスター・フォンターナ


 できるだけ正確に対称の情報をイメージする。


「ポン」


 赤玉が1つ。ジェイド様の直ぐ近くで浮かんだ。冒険者ではない。文官のようだ。


「ちょっとまっ   ぐえぇ」


 そいつが何かを叫ぶ前に、つくも(猫)がそいつの腹をしっぽの先で軽ーく撫でた。


「うわっ、こいつ汚え。白目むいて漏らしてるぞ」


「床が汚れる。つまみ出せ」


 冒険者に手足をもたれて外に運ばれ放置される文官。冬ではない。きっと誰かが助けてくれる。ここはそういう町だ。  

 たぶん正妃の手先だ。「何か成果を上げそうになったらじゃまをしろ」とでも命令されてたのだろう。


 正妃も、その危機管理能力を国のために使え。愚か者め。




『本人魔石捕獲証明書』は、必要事項が記入され、2人のギルド長とS級案内人でありA級(ゴールド)スター冒険者でもあるナツメさんの署名がスラスラとされて、異例の速さで正式に受理、発行された。







 ジェイド様の成果は、次のようになる。


 霧散によるD級魔石3個。


 活動停止状態で取り出したD級魔石が5こ。そして、この5この魔石にはプラス評価がつく。


 また、『本人魔石捕獲証明書』も発行された。


 最後に、C級魔石が1個。そして、活動停止状態なのでプラス評価がつく。


 また、いままで誰も実現できなかったことなので、『奇跡の魔石』の称号がついた。




 その価値は、A級と同等だ。さらに、『本人魔石捕獲証明書』が発行されたので、誰もこの魔石をジェイド様から取り上げることはできない。


 例え、正妃でもだ。




 ジェイド様の滞在予定は6日だ。


 今夜は、ベニザクラ『白銀』で美味しい夕食を食べながら、4人でゆっくり話をしよう。


 いや、4人と1匹いや1柱?……。


 ああややこしい。



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