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032 カナデの事とサクラの事(2)

本日2回目の投稿です。

 一章 十九話(2)


「サクラ、今から話すことはサクラの今後を決めるとても重要なことだよ。」


と前置きをしてからカルミア様が話し始めた。


「精霊のいう『資格持ち』とは、『エルフの選択』ができる資格を持っている。と言うことなんだ。そして、このエルフの選択をしたのは、今から約2000年前の『カロス・エニュオン』様ただひとりなんだ」


『カロス・エニュオン』様とは、大陸暦の始まりを宣言した人物だが、それ以外のことは記録に残っていない。謎の人物だ。




「そしてね、多分だが、世界樹の精霊は、もし、詳しいことが知りたいなら、サクラが10層に来なさいと言っていると思う」


 そう言ってから、カルミア様は、つくも(猫)の方を見て、


「神獣様。精霊のおねがいには、このことも入っているのではないでしょうか」


と尋ねた。つくも(猫)は、黙ったまま、しっぽをピコンとあげた。


「あれは、そうだという合図です。精霊は、サクラさんのことをいろいろ助けてほしいとお願いしたそうです」


 私が補足をする。


「やっぱりね。あの樹魔(じゅま)車両なら、10層に到達できると言うことだね」


 カルミア様の言葉で、みんなはもう一度、紅色だが白銀に輝く装甲を持った最新型の樹魔車両を見た。




「ベニザクラ『白銀(はくぎん)』……」


 パーソンさんが、つぶやいた。


「いい名前ね。ベニザクラ『白銀』これが正式名称で、ふだんは「ベニザクラ号」ね」


 ツバキさんがサクラさんを見た。


「私も賛成!サクラは……」


 シンティさんが手をあげてからサクラさんを見る。


「ベニザクラ『白銀』、それがわたしの新しい(かけ)る力なのね。そして、わたしは大樹の森10層で世界樹の精霊にあって話を聞かなければいけないのね」


 サクラさんが、私とつくも(猫)を見た。


「神獣様、探求者様、私に力を貸してくださいね」


 大樹の森で初めて会った時のキラキラした目ではない、なんだろう、いっしょにいることが当たり前、それが当然という感じのまなざしだ……、そうか、親愛だ。家族なんだ、



「サクラさん、ぼくはC級(ゴールド)スター冒険者です。そして、サクラさんのパートナーです。家族なんですからどこにだって一緒に行きますよ」


 サクラさんは、わたしの『家族なんですから』の言葉にびっくりしていたが、恥ずかしそうに微笑んでから「はい」とうなづいた。


(サクラ、ベニザクラ『白銀』は、神装力第三権限の力で守られている。この星で一番安全な場所だよ)


 サクラさんと私に、つくも(猫)から念話が届いた。


 サクラさんは、一瞬キョロキョロと辺りを見渡したが、直ぐににっこりと笑って、


(ありがとね、ねこちゃん)


と、サクラさんも、念話をつくも(猫)に送った。




「サクラ、本当にいいんだね。10層への到達は、技術的なことだけではなくいろいろなしがらみもあるから並大抵の気持ちでは達成できないよ」


「はい父様、わたし、双子の樹魔を譲ってくれたことのお礼をしっかり言いたいんです」


 みんなが、「ああ、サクラさんだ」とほっこりしたところで、

 

「さて、カナデ君。もう1つ、君のことだ」


 カルミア様が、ゆっくりと私を見て、半端ない威圧を放ってきた。


 なんだろうこれ、C級スター試験を受けろとラウネンさんに言われた時の雰囲気に似ている。


「サクラと一緒に10層を目指してくれるんだね」


 威圧が高まる。これって、娘を思う父親の威圧ですね。すさまじい。


「はい、勿論です」


 私がそう答えると、威圧が消えて、いつものカルミア様の穏やかな顔があった。


「10層に到達できた人間は、記録で残っている限りまだいない。それは、9層にいると思われるS級の魔物達に対抗できる力がないことと、各国家が牽制し合っていて、お互いの足を引っ張っているからだ」


 権力争い。既得権争い。どこにでもありそうなよくある話だ。


「なので、カナデ君には、探求者を超える存在になってもらい、それらのしがらみを一掃してほしい」


 でた、多言語翻訳君の誤変換が……。本当にメンテナンスはどうすればできるんだろう。


 私が現実から逃避をしていると、


「カナデさんですもの、そんなのお茶の子さいさいです」


 何でこの言い回し知ってるの。とつい突っ込みたくなる。サクラさん、キラキラした目で私を見ないでください。


「カナデ、いつだったかお前に言ったよな。お前が発見したり発明したりしたいろいろな事を、誰にも文句を言わせないで発表できるようになれと……。これは、それと同じだ」


 ラウネンさんがめずらしく真面目だ。


「カナデ君。あなたと一緒に発明した第3世代異次元収納箱は、このままでは世に出せない。でも、カナデ君が圧倒的な名声と権力を確立すれば、更なる高みも夢ではないんですよ」


 パーソンさんに言われると、その気になってくる。


「あーなんだ、伝説の鍛冶師って言う道もあるぞ」


 カルコス親方、ホッとします。


(おもしろそうじゃないか。俺様も退屈しないですみそうだ)


 つくも(猫)から、まさかの承認念話が届いた。


「カナデ君。みんなが面白がっているけど、サクラと10層を目指すには、君が誰にも文句を言わせない圧倒的な力を示さないと実現が難しいと、私も思うわ。つまり、ここでそうしますって宣言するんじゃなくて、それぐらいの気持ちで望まないと駄目だって事だと思うの」


 ツバキ姉様が真面目に諭してきた。


 カルミア様、ラウネンさん、カルコス親方、パーソンさんがにっこりとうなずいた。


「ぼく1人では無理ですよ。みなさん、協力してくれますよね」


 そう言うのが、今の私には精一杯だった。




       ★ ★ ★ ★ ★




「ねえ、エル。10層に行くためには、うちに何が足りないと思う」


 シンティさんが、エルにささやいた。


「奇遇だね。実は、ぼくもそう考えていたところだよ」


 エルが、何かを決心した時に見せる鋭いまなざしで言った。


 パーソンさんが、優しいまなざしでそんな2人を見つめていた。



       ★ ★ ★ ★ ★




(10層にはベニザクラ『白銀』ごと乗り込んでみるか。なにしろ、あの精霊は、一度とは言えこの俺様に負けを覚悟させたやつだからな。そのぐらいはやらないと気が済まないぞ……)


 つくも(猫)は、前足をペロリとなめては顔を前足で洗うを繰り返しながらそう考えていた。





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