026 サクラの樹魔車両と賢魔鳥(2)
本日2回目の投稿です。
一章 十五話(2)
ただ、「和音って何?」から質問が始まり、音波の説明までさせられたのだ。そして、ツバキさんは,あっという間に音の三要素(大きさ、高さ、音色)にたどり着き、研究所の名前を『音波研究所』に替えてしまったのだ。
「和音いきます」
バチを2本ずつ手に挟んで両手に持ち、和音の演奏を始めた。
すると、2体の樹魔車軸がうねうねと動き出し、お互いの動きを感じながら合わせようとしているように見える。
微妙にタイミングがずれていた動きが、段々とシンクロしていった。やがて、阿吽の呼吸と呼べるレベルの動きに進化していった。
「サクラ、調整木琴で仕上げをして」
「わかりました」
サクラさんは右手を前に差し出した。
「世界樹の枝」
木の枝が右手に現れた。
その枝を、頭上にあげ、何もない空間を叩く仕草をする。
ビーン
空気が振動した。
「めざめよメーム」
キーン 金属音の澄んだ音がする
「太古のメーム」
キーン 振動が魔方陣のように広がる。
「自我のメーム」
キーン 振動が樹魔を包み込む。
「ふるえよメーム ひとつになれ」
「ホスタンツァ ライエン」
そう言ってから、調整木琴を鳴らす。
「シャラララーン」
木琴を左から右へ木の枝で打ち流したした。
すると、二体の樹魔車軸が全く同じ動きで、12本の尖った触手に変形した。傘の骨のような感じだ。
「完成よ。大陸で初めてになる樹魔の同期よ。きっと、樹魔の可能性がこれからどんどん広がっていくわ。すごいわカナデ君。あなたの名前がきっと歴史に残るわよ」
「カナデさんなので、当然です」
なぜか、サクラさんが一番どや顔です。
今回の樹魔車両製作は、新技術がかなり使われているので、当分は一般には公開しない機密保持扱いだ。
なので、私の名前も当然公開されないのだ。よかったよかった。
ただ、ツバキさんは、憤慨していた。でも、父親でもある案内人ギルド長のカルミアさんに説得され、私の分解を含めてしぶしぶいろいろな事を我慢しているようだ。
サクラさんの樹魔車両制作が、最終段階に入っている。
予定よりも1ヶ月以上早い日程だ。装甲板の作成に最低でも1ヶ月はかかるはずだったのが、私が10日で終わらせてしまったことが原因らしい。
また、樹魔車軸の調整も予定よりも半月も早くできてしまった。
本来なら褒められるべき成果なのに、なぜか私が責められている。
「全く、てめえのせいで予定がどんどん前倒しになったじゃねえか。どうしてくれる」
カルコス親方がイライラしている。最後の工程に進みたいが、素材の下準備が間に合わないようだ。
「カナデさんは全く悪くありません。カナデさんのせいにしないで下さい」
サクラさんが怒ってくれている。癒やされる。つくも(猫)は、ツバキ姉様のお相手(監視)をしている。
いろいろたまっているのでガス抜きをさせている。頼むぞつくも(猫)。
「カナデさん。こんな分からず屋は相手にしないで、私達は賢魔鳥を探しに行きましょう」
サクラさんが、私の背中を押して、工場の出口に向かうと、
「親方ぁー。ウチもついて行っていいですかぁー。どうせーぇ、今やることないでしょうー」
緊張感のない声でシンティさんがよっこらしょと椅子から立ち上がると、親方は、シッシッと追い払う仕草をしてから、ドカッとその場に座り込んでしまった。
賢魔鳥は、牧場でも飼育されている。しかし、安全な場所で育ってきた賢魔鳥達は、町の中や大樹の森の3層位までなら問題ないが、それ以降の深度になると恐怖で動けなくなってしまうらしい。
なので、私達が探すのは、野生で逞しく育っている賢魔鳥だ。
「カナデちゃん。ごめんねー。親方不機嫌でさぁー。でも、許してあげてねー。本当は、君にはすごーく感謝しているし、期待もしているんだよー」
シンティさんは、ドワーフ族の鍛冶師だ。見た目はやや背丈が低いかわいい女性だ。
鍛冶屋は金属製品専門だが、鍛冶師は、金属加工の他に魔物素材加工ができる特別な技能を持っている。
魔導具師や錬金術師などが自分で加工するよりも数倍の良品に仕上げてくれる。
そして、シンティさんは、自ら仕上げた素材を魔道具や薬剤にできる天才と言われている鍛冶師らしい。
「ええ、分かっています。仕事ができなくて一番残念に思っているのは親方ですからね」
「カナデさんて、時々思うんですが、職人や研究者に理解がありますよね。私の姉と気が合いそうですし……」
サクラさんがギンギツネ号の御者台からちょこんと顔を出して困惑した顔で話しかけてきた。
「いやサクラ、この人あの人達と同類だから」
シンティさんが容赦無く突っ込んでくる。
「えっそうなんですか。姉や親方と一緒にしたらカナデさんがかわいそうですよ」
サクラさんありがとう。でも、すみません。シンティさんの言葉は真実に近いです。心の中で謝っておきました。
それに、親方もサクラ姉様も、コバルトブルーに近い青玉なんだよな。信用も信頼もしていい人達だ。シンティさんには、まだ色がない。
そんなやりとりをしている間に、ギンギツネ号は、大樹の森の1層にたどり着いた。
「さて、ここからはペンテの出番ね。ペンテ、仲間を呼んで」
サクラさんがペンテにそう語りかけると、ペンテは翼を大きく横に広げてから空に向かってピンと伸ばした。そして、くちばしを空に向かって伸ばすと、
「ピロピロピロピロー」
と、超音波のような鳴き声で叫んだ。その鳴き声には、膨大な魔力がこもっていた。そして音波となって大樹の森に広がっていった。
10分ぐらいだろうか、なんと、私達の周りにだんだんと、たくさんの賢魔鳥が集まってきたのだ。
その数は100体は超えているだろう。そして、まだまだ数は増えていきそうだ。
ペンテは、同じ姿勢のまま、ピクリとも動かない。集まってきた賢魔鳥達は足をたたんだ状態で地面に伏せている。
まるで、王に跪く家臣のようだ。30分ほどが過ぎたとき、事態が動いた。
本日3回の投稿予定です。
次は、17時を予定しています。




